第6話

前を歩くゼン爺を見ながら、僕は考えていた。地下の爆破を阻止するとは言ったものの、何から手をつけたらいいのか。ともかく地上に行かなければ話にならないだろうが。


道具部屋から出て坑道を進み暫くすると、朝、副場長に頭を掴まれた場所に出た。


僕が住む地下エリアは、中心にある広い空間と、そこから何本も生えている坑道で構成されている。坑道は、居住スペースだったり仕事場だったりと、坑道の中に入らなければその用途は見分けが付かない。


そして、中心にある広い空間は、とてつもなく巨大な施設を設置するためにあった。それは、地上と地下をつなぐ「モノレール駅」だ。モノレールは、地上から食料を運び、地下からアニマ鉱石を運搬する。上下に行き来するのだから、モノレールは当然地面と垂直に立っている。発車時の音も半端なくうるさい。


モノレール駅の改札口の近くまで来ると、ゼン爺が止まった。


「あれを見てみい、ケイト。査察官たちが乗ってきたモノレールじゃ。」


ゼン爺が指差した先には、白のボディに青いラインが入ったデザインのモノレールがそびえていた。下部は駅の壁で見えないが、大きさはかなりのものであるのは間違いない。モノレールは、年に一回、地上から査察をするときだけ使われている。


「あれに乗れたらなあ。」


僕がぼやくと、ゼン爺は、耳打ちをしてきた。


「乗る方法があるぞ。」


いやいや、そんな馬鹿な。


「いいか、声を立てずに聞くんじゃぞ……。信じられんだろうが、わしは元々地上にいたんじゃ。失態を犯し追放され、ここで暮らすようになったのじゃ。」


思わず大きな声を出してしまった。いきなり何てことを話し始めるんだゼン爺は。心の準備ってものがあるよ。


「大昔に査察をしたこともある。だから、持っておるんじゃ。改札口を通るためのゲートキーを。」


ゼン爺の話が本当なら、モノレールに乗れるかもしれない。改札口に立つ警備員さえなんとかできればいける。


「査察官たちを乗せて、モノレールは明日12時に地上へ出発する。それに乗るんじゃ。」


「わ、分かったよ。でも、この格好じゃまずくない?」


「わしが地上から来たときに持ってきた査察官の衣装がある。幸いデザインは昔から変わっとらん。それを着ろ。上手くいくかは、お前次第だ。」


ゼン爺は、話し終えると持っていたメモ帳に何かを書いてから僕に渡した。


「地下のわしらの命運をお前に託す。なあに、心配しとらん。わしが育てたんじゃからな。じゃあ仕事に戻るかの。」


ニコリと言うと、何事もなかったかのごとくゼン爺は行ってしまった。万が一でも査察官や警備員に気付かれてはいけないから、平静に振る舞うのがベストということか。


僕は、ゼン爺から渡された紙を読む。紙にはこう書かれていた。


「さっきの部屋のロッカーの中に衣装を入れた。ポケットにゲートキーがある。明日11時30分に行け。」






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