眷属の初仕事

第22話クレア・シュバルツ

 それから3日間俺はこのシュバルツ領について勉強した。

 というか今もやっている


 コトッ


「お疲れ様です」

 ハクさんが紅茶を入れてくれた


 ハクさんは今までこの領の経理を任されていた経理の代表だ


「それにしてもクレア様から領主代理を任されるなんて随分信頼されているんですね」


「信頼されてるかは分からないですけど、

 クレア様の眷属として役立ってみせますよ」


「眷属?眷属になったんですか!?

 眷属になるって生殺与奪権を相手に託すってことですよね!?大丈夫なんですか?」


 そういう意味合いがあったのか...

 だが


 俺はクレア様に救われたんだ

 クレア様の為ならどんなことだってやる

 どんなことだって...


「大丈夫です。クレア様に忠誠を誓いましたから」


「そうですか...それにしてもクレア様にやっと心から信頼が出来る人が出来たんですね

 良かった...」


 ハクさんは心の底から喜んでいるらしい

 ...なんだか照れくさいな...


 そういえばクレア様はどうして魔女なのに内気なんだろうか


「クレア様ってどうして魔女なのに大人しいっていうか内気っていうか...」


 自分の語彙力のなさに涙か出てくるな...


「シュン様」


「は、はい!」


 やばい、この屋敷の人はクレア様をとても大切にしている。怒らせしまったのだろうか...


「絶対にクレア様を悲しませないで下さいね」


「もちろんです」


 そうしてハクさんは語り始めた

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 クレア様は昔から少し大人しい子供でした。


 しかし彼女の環境が悪かったのです。


 あまりにも『公爵の跡継ぎ』という地位は強大過ぎました。

 彼女はいろんな人から彼女の地位を目的として言い寄られて来ました。


 まだ小さな子供の時からです。


 子供にとってそれらの行動は恐怖の対象でしか有りませんでした。

 その為にクレア様はどんどん人付き合いを怖がるようになり、なるべく人と接しないようになってしまったんです。


 ですがクレア様はとてもお優しい方なのです。


 我々のような平民にもしっかりと接していただけるし、仕事の相談などもしっかりと受け入れてくださいます


 どうかクレア様を傷つけないで下さいお願いします


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

 ハクさんはそういうと何もなかったかのように業務を再開し始めた


 貴族の負の部分に彼女は傷つけられてきたのだ...

 だったらこれからは俺がその負の部分をから彼女を守らなければなはない

 それが俺に出来る仕事だと信じて


 その為にはまずは領地をよりよくしていこう

 他の貴族に立ち向かえるように


 そして俺は今の領地の経理状況を見て絶句したのだった


「は?え?これ冗談だろ!?」




「ハクさん!!なんですかこの経理報告書は!こんなの無茶苦茶じゃないですか!!」


「すぐにお気づきになられるとは...すごい才能ですね」


「そんなことは今どうでもいいでしょう!

 こんなの今までどうしてたんですか!?」


「こんなことに決まってるじゃないですか。ですからシュン様が気づかれるのを待つか、クレア様に相談しようか悩んでおりました」


「俺がやります。『領主代理』ですから。

 それにしても...こんなの無茶苦茶だ...」


 ハクさんが置いて行った、経理報告書。


 そこには首都からの税収が書き込まれていた


 否


 


「シュバルツ領の貴族が皆、クレア様の『伯公爵』就任に反対だそうです。そして代わりにスターフォルン伯爵と婚約して伯爵家を継がせるように要求しています」


「は?そんな要求を受け入れる必要がどこにあるんですか?公爵って公伯爵よりも偉いんですよね?だったらなんで?」


「貴族の世界ではよくある事です。後ろ盾が強ければ強いほど貴族は力を増していき、集結していきます。そして数が集まれば集まるほど後ろ盾の力は増して行くのです。それは次第に地位の壁を超える。すると伯爵でもどうすることも出来ないんです。」


「そんな...」


「このスターフォルン公爵はシュバルツ領で最も力のある貴族ですから太刀打ち出来ないんです」


 力のある貴族だったらしょうがないのか...

 そんなことってあるのかよ...

『公爵』の地位のためだけに...

 俺にはどうすることも出来ない...



 ...何を馬鹿なことを考えてるんだ

 今さっきクレア様を貴族の負の部分から守るって決めたばかりだろう!!

 ...やってやる

 まずはそのスターフォルン伯爵を潰す

 それが俺の最初の眷属としての仕事だ

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