38回目:獅藤伊鈴<小さき胸に大きな夢を抱いて>
「ぬ、ぐぐ……。俺はトラックに
異世界の地で目を覚ました
「ん? なんだ? なにか、違和感が……、っ!?」
異世界に来て初めて自分の手を見た
「俺の、無骨な手が……、俺の腕が……。……声も、何か変だな。まるで、これは……」
顔を上げて辺りを見回した
「か、かわいい……」
そう、
「これが俺、……いや、わたし、なのか……」
小さく肩を震わせる
「……は、ははは……」
「ははは、はははは……くくっ、……はーっはっはっ!! やった! やったぞ! 俺の長年の妄想が、今、現実に! ……ああ、
……私が心を痛める必要など
「いや、待て、落ち着け、俺……いや、わたし。まさか、美少女と思わせておいて、実は男の娘でした、なんてオチはないよな。……よし、確かめてみなくては。……ん、どれどれ……うん、おお、これは……うん、大丈夫、間違いなく、女の子だ」
自分の身体が女であることを確認し、ほっと胸をなでおろした
「しかし、これからどうすればいいのやら。この姿になれたことは嬉しいが、これで一人で生きていくには
その通りだ。残念ながら
「よし。ちょっと試してみるか」
「……ふんぬぅぅぅ」
魔力が
「……お、お、お、……みなぎるぅぅぅっ!!」
最高潮に達した魔力が
なるほど、魔力が全身に行き渡ると元の姿に戻るのか。
元の姿を取り戻した
「な……なんでだぁぁぁ!? こ、こんなのは、いやだぁぁぁ!!」
水面に映る自身の姿に深い衝撃を受けた
「……お、おお……よかった。……そうか、魔力を張り巡らせると、あの姿になっちまうのか。そういうことなら魔力の使用には気をつけないとな。間違っても全力開放は禁止だ」
「ふむ。ならば、魔王討伐の旅をあきらめよう」
え。まるで私の声が聞こえているかのような発言。いや、それは困る。私の声が聞こえるのであれば、私の願いを聞き届けて欲しい。魔王討伐の旅へ、どうか、お願い!
「これからは、一人の可愛い女の子として生きていくんだ。わたしは、わたしの夢を、この世界で叶えるんだ。それは誰にも邪魔させない。たとえ、それが女神様であろうとも……」
ねえ、絶対、私の声が聞こえているでしょ! お願いします! そろそろ私も一度くらい世界を救った実績が欲しいの! だから頼みます!
「そうと決まれば、まずは近くの街へ行こう。」
……素っ裸で?
「……うおっ!? あぶねっ、俺、……わたし、裸だった。あぶないあぶない。てへっ」
……この者に災いがありますように。
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