28回目:黒百合小夜<平和の訪れ>
十四歳の誕生日、暴走したトラックに
その世界で彼女は三人の仲間に出会い、そこから魔王討伐の旅が始まった。その三人の仲間とは、いずれも私の友人たちから祝福を授かった異世界転生者たちだ。女神同士で協力関係を結び、世界の救済を目指すのである。
そして、世界に平和が訪れた。
「……ええと、どういうことでしょうか」
「俺の聴力が正常であるならば、だ。魔王は倒されて、世界に平和が戻ったということだが」
女神トレーネの祝福を授かって転生したソナート・ワーデルセラムもまた、
「ああ、世界は平和になったんだ! 女神フラウヒュムネ様のご加護を授かった女騎士様が魔王を倒してくれたのさ」
こうして何もすることもなく、
「……わたし、これから、どうしよう」
この世界の十分な知識を持たず、また、当面の目的を失った
「まったく、私たちは何のために異世界に転生したというんだ」
女神カルトに祝福を授かったオラトリオ・マッカローネが愚痴をこぼす。彼の中性的で端正な顔立ちが、苛立ちで僅かに歪んでいた。
「まあ、世界は平和になったんだ。喜ばしいことさ。……そうだな、俺たちも平和を享受すればいいんだ。せっかく二度目の人生をもらったんだ。存分に楽しめばいいさ」
「……楽しめばいい、か」
筋肉のソナートの前向きな発言に、それでも
「サヤ、心配するな。生活費くらい俺が稼ぐさ。世界が平和になったとはいえ、力仕事ならいくらでもあるだろうしな」
「アノサ」
そこへ女神ルフトに祝福を授かったパストラーレ・アリエフが口を挟んできた。彼は顔を隠すかのようにローブを
異世界転生直後、
「キミタチハ イイケドサ、僕ハ ドウシロッテイウノサ」
魔物のような外見では街で暮らしていくのは難しいだろう。だが、それも筋肉のソナートがなんとかしてくれた。
「ハハハ! パストラーレも俺が養ってやるさ。任せとけ!」
「はぁ……、つまり私たちは、まだしばらくは共にいるというわけだ」
ため息をつくオラトリオに対して
少しして、オラトリオを除く三人は顔を見合わせて笑った。そして、
「みなさん、これからもよろしくお願いしますね」
さて、あちらでは話が上手くまとまったようだが、こちらではそうはいかなかった。転生先の世界を決定した私に対して、友人たちから女神ネットワークを通してクレームが次から次へと送られてきたのである。
ああ、誰か私の平和も取り戻して……。
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