12回目:斑坂茂夫<始まりと終わりの大地>

 彼――斑坂むらさか茂夫しげおは天寿を全うし、永久とこしえの眠りについた。彼は数多くの戦いに身を投じた、知る人ぞ知る伝説の傭兵だ。彼の戦闘技術と生存能力に疑いの余地はない。

 この逸材を私は高く評価し、女神の祝福を授けることで異世界転生させたのである。


 茂夫しげおの瞳には青い空と白い雲が映っていた。そよ風が心地よい。どこまでも広がる草原の上に彼は寝転がっていた。

 当然ながら、転生の際に私は彼を若返らせている。そうしなければ、転生直後に老衰による死が彼を襲うことになるからだ。今の彼は若い。とにかく若い。やりすぎたと思うくらいに若いのだ。つまり、今の彼は赤子だった。


 近くに人里はなく、あるとすれば、ゴブリンの巣穴すあなくらいだろうか。

 私は、きっといつの日か、成長した彼が世界を救う英雄になってくれるだろうことを祈った。そして日頃の疲れを癒すため、近場の温泉に行く準備を進めるのであった。



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