11回目:川田琥絽靖<魔を穿つ神の一撃>
猫の鳴き声が聞こえた。だが、この世界に猫という生物は存在しない。それならば、その声の主は何者なのだろうかと問われれば、答えは簡単だ。彼は猫である。ただし、ただの猫ではない。女神の祝福を受けた異世界転生者だ。
彼の名は
「にゃー(ここはどこだ。俺はどうなった)」
王都セリアネイムの王城へと続く大通り、その中心に位置する噴水広場で
「にゃーにゃにゃにゃーにゃ(人がでかい……いや、俺が小さいのか。……って、黒い手足!?……これは、猫か?)」
手足を確認して自分が猫であることを認識した
「にゃー(これ、どうすればいいんだ……)」
どれほどの時間、そうしていただろうか。途方に暮れる
金髪碧眼の少女だ。年の頃は6~8歳くらいだろうか。風に揺れる髪を小さな手で押さえながら少し首を
「かわいい」
少女から見た目通りの可愛らしい声が発せられた。少女はその場に座り込むと、
少女に抱きかかえられ、自宅に持ち帰られた
「ふんふふふーん、ふふーん」
少女は鼻歌を歌いながら
「クロ。お湯かけるよー」
クロと呼ばれた
「にゃ~(ああ、しあわせだなぁ)」
少女の膝の上で日向ぼっこをしながら、
周りにはお付きの侍女のほか、騎士の格好をした男たちがあたりを警戒していた。最近は魔物の目撃情報が多くなっていることもあって、騎士たちからはピリピリとした空気が伝わってくる。これからは、この場所にも来られなくなるかもしれない。
「にゃー(しかし、これだけの護衛が付くくらいだし、かなりのお嬢様なんだなぁ)」
だが、その平和な時間は突如として破られることになる。
騎士たちがざわめき始め、次いで悲鳴と叫び声が聞こえてきた。
そこには巨大な獣がいた。その大きさは騎士たちの倍以上。上半身が
お付きの侍女はその恐ろしい魔獣の姿を見て卒倒してしまう。
騎士たちは勇敢に応戦するが、相手が悪かった。グリフォンの強さは、並の騎士では足元にも及ばない。一人、また一人とグリフォンの巨大な爪に切り裂かれて倒れていく。
少女のもとに一人の騎士が駆け寄ってきた。
「リフィア様!お逃げください!」
騎士の叫び声に、しかし、リフィアと呼ばれた少女は腰を抜かしてしまったようで動くことができない。グリフォンは、そんな少女に狙いを定めたようだ。ゆっくりと少女に近付いていく。
「あ……あ……」
魔獣に
「フーッ!(近寄るんじゃねえ!)」
全身の毛を逆立てながら
「にゃー!!」
黒猫が
――
私は初めて目にする魔術に
そして、放たれた神の
恐るべき魔獣を倒した英雄の姿を前に騎士たちは歓声を上げる。少女は
とんでもない逸材を見つけてしまった。これが猫でさえなければ、どれほど良かっただろうか。あるいは、猫でもいい。世界を救う
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