第九章

第九章

優の部屋。

インターフォンが連続して鳴る。

優「ハイどうぞ。開いてますよ。」

いうより早くドアが開く。

ジャクリーン「ああ、やっと来れた。先生、今日は!もう、次は来れないかなあと心配していたんだけどさあ。幸い、今日は体調がよさそうだったから、来ちゃった。じゃあ、よろしくお願いしますね!」

優「こちらこそよろしくお願いします。ジャクリーンさん。」

ジャクリーン「ジャッキーでいいよ、ジャッキーで。アメリカではそう呼ばれてきたんだし。」

ジャクリーンは、誰に対しても敬語を使わなかった。そのまま靴を脱いで、どんどん部屋の中に入っていき、どんどんテーブルに座ってしまった。

優「今お茶もってきます。」

と、台所の戸棚から茶を出して、急いで冷茶を作った。

優「はいどうぞ。」

と、テーブルにお茶を置く。

ジャクリーン「ねえ先生、先生はお父さんとか、お母さんとか元気なの?」

優「そうですね。家族はとっくに別れてしまいましたよ。どうしているのやら、分かりませんよ。」

ジャクリーン「もう亡くなったの?」

優「いや、亡くなったわけではないんですけどね。」

ジャクリーン「そうかあ。日本人はそういう人多いよね。私、おばあちゃん、ああ、私にとっては主人のお母さんだから、お母さんなんだけど、家ではみんなおばあちゃんと呼んでいるから、おばあちゃんと言っちゃった、まあいいや、そのおばあちゃん見るとさ、家族って何かなあって、真剣に考えちゃうわ。」

優「まあ、言いまわしはいいのですが、どうしたんですか?」

ジャクリーン「そのおばあちゃんがね、私、認知症かなあと思って、やっとの思いで検査させたんだけど、認知症ではなかったの。本当によく似た病気があるものね。」

優「一体何だったんですか?」

ジャクリーン「うつ病だったのよ。」

優「そうですか、ある意味もっと大変になるでしょうね。」

ジャクリーン「そうなのよ。よくわかってくれるじゃない、先生。だから、ご飯を食べることでさえも大変なんだ。アメリカでは、日本と違って、介護の情報もあまり入ってこないから、うつと認知症の違いもあまりわからなかったのよ。それも私の責任だなあと思うけれど、何よりおばあちゃんが鬱になってから、周りの人たちの態度が大幅に変わってしまったのが、私はつらい。だから私、思うんだけどね、おばあちゃんは、家族がいるって伝えてあげたいんだけどなあ、、、。」

優「わかりました。じゃあ、革で花を作ってみましょうか。」

ジャクリーン「えっ、革で花なんか作れるの?」

優「正確には髪飾りです。お母様に差し上げればいいと思いまして。」

ジャクリーン「なるほど。」

優「きっと、日本では、家族全員でお母様を大切にするという風潮はなかなかないと思いますので、せめてあなただけは、お母様の味方であるということを、伝えてあげたほうがいいと思うんですね。本当に、家族の恩寵って、分かりにくいものだから、介護殺人とか、後を絶たないんですよ。だから、そういう気持ちのある人は、貴重だと思います。それに、お母様は認知症ではないので、そのあたりを感じ取れる能力は欠如していないと思いますので、喜ぶのではないでしょうか。」

ジャクリーン「わかったわ!やってみる!」

優「じゃあ、この革を使いましょう。」

と、朱で染められた牛の革を出してくる。

ジャクリーン「はい。」

優「この型紙で花びらをかたどって切ってください。」

ジャクリーン「こうですね。おばあちゃんも、花が好きでした。前は造花教室までやっていたのですよ。それくらい手先が器用でしたね。」

優「そうですか。じゃあ、葉を作るから、この緑の革に、同じように型紙で作ってください。」

ジャクリーン「はい。わかりました。なんかおばあちゃん思い出すなあ。こういう作業やってると。私は、夫から聞いたことしか知らないけど、もともとは、造花を作って、いろんな生徒さんもって、展示会でもすごくたくさん出していたんですって。それがねえ、、、。」

優「どうしたんですか?」

ジャクリーン「自転車で転んでしまって、、、。足を怪我して直りがすごく悪くてね。そこからだったの。おばあちゃんが一気に転げ落ちるように悪くなったのは。」

優「ああ、そういう人いますよね、特に若いころに、華やかに活動していた人はね。」

ジャクリーン「そうなのよ。それで、治った直後にジョギングでまた転んで今度はてを怪我して、それが良くなったと思ったら今度はトイレで転んで背骨を圧迫骨折して、、、。」

優「歩けるんですか?」

ジャクリーン「ええ。幸い車いすにはならなかった。でも、それのせいで、一日中部屋にいるようになっちゃってさ。どこにも行かないし、口を開けば私はだめになって、いつお迎えが来るのかっていうし、だから、夫も返事をするのに閉口してしまって、、、。でも、私思うのよ、他に家族がいて、その人たちを立派に育て上げて、もう、堂々としていてもいいと思うのになぜ、あんなに小さくなっていくのかしら。」

優「外国人らしい見方ですね。日本では、大昔にはお年寄りを捨てる姥捨て山ってのがあって、平気でそこへ捨てていったそうですよ。まあ、今も、デイケアとか老人ホームという、似たようなところはありますけど。」

ジャクリーン「本当にひどい話ね!私、初めてこっちに来た時、なんでこんなに施設がたくさんあるのか、理由がわからなかったわ。でも、今になってやっとわかるようになってきたかなあ。ほんと、結論から言ってしまえば、この国はお年寄りを粗大ごみにしちゃうのよ。」

優「あと、障害のある人も同じですね。でも、介護で疲れていて休みがほしかったと言っていたのに?」

ジャクリーン「いや、私、おばあちゃんが認知症でないって言われたら、きっと苦しいんだって思うようになったのよ。」

優「そうですか?」

ジャクリーン「そうなのよ。鬱は、自分のことがわかるからなるもんでしょ。それを聞いたとき、私、おばあちゃんがかわいそうだなあって思ったのよ。」

優「なるほど、そういうことですか。」

ジャクリーン「そうなのよ。先生、一応、花と葉はできたけどどうするの?」

優「じゃあ、縫い合わせていきましょうか。」

ジャクリーン「わかりました。」

優「じゃあ、このように縫ってみてください。」

ジャクリーン「うまくできないわ。」

優「ああ、それでいいんですよ。」

ジャクリーン「わかったわ。やってみる。でも、本当に、お年寄りが、これまでにしてくれたことを考えたら、私は粗大ごみにはできないなあ、、、。」

優「本当はそれでいいんですけどね。それを感じられるんですから、ジャクリーンさんも、すごいんだと思いますよ。」

ジャクリーン「ジャッキーでいいのよ、ジャッキーで。頑張って、この花を縫わなきゃ。」

優「そうです。そんな風に。じゃあ、この金具を縫い付けてください。」

ジャクリーン「わかりました。」

と、受け取った金具を縫い付ける。

ジャクリーン「できた。でも、なんか不格好だわ。おばあちゃんに申し訳ないかしら。」

優「いえいえ、不格好のほうがかえって気持ちが伝わることもあります。おばあさんの髪につけてあげてください。」

ジャクリーン「わかった。ありがとう先生!先生もそのねじり鉢巻き、新しいのにしたら?レッスン代はこれね。」

と、封筒を手渡す。

優「ありがとうございます。これはただの飾りですよ。」

ジャクリーン「だって真っ黒なんだもん。お葬式みたいでいやよ。」

優「でも、お葬式に鉢巻をするわけないので、、、。」

ジャクリーン「その時は、取るの?」

優「あ、はい。取りますよ。」

ジャクリーン「そうかあ。じゃあ、うれしいことがあったときも取って。せっかくいい顔しているのに、黒い鉢巻が邪魔をしている気がする。」

優「いい顔じゃありませんよ。こんな顔。」

ジャクリーン「そうかなあ、日本的できれいだと思うけどなあ、、、。」

優「いえいえ、今の日本的はとっくに消滅していますよ。こんな顔で、かっこいいなんて、日本人は誰も言いません。」

ジャクリーン「そう?だって源氏物語の主人公はそういう感じなんじゃないの?」

優「まあ、あれは昔の昔の大昔のお話ですから。今となってはかっこいいなんていう人はだれもいませんよ。」

ジャクリーン「そうは思わないけどなあ。先生はやっぱり、Fragileな人ね。なんでそんなに自信がないんだろう。私はわからないなあ。」

優「まあ、自信がないというか仕方ないことなんですけどね。」

ジャクリーン「仕方ないで片付けないでよ。日本人はなんでもそれで片付けちゃうけど、私はそうしたくないな。」

優「次回のレッスンはどうしますか?」

ジャクリーン「ああ、おばあちゃんの都合にもよるから、また電話をかけるわ。とりあえずこの花をおばあちゃんにわたして、元気になってもらわなきゃ。」

優「はい、そうしてください。」

ジャクリーン「はいはい、先生、また来るから!」

と、ジャクリーンは制作した髪飾りをもって、どんどんドアを開けて出て行ってしまった。そして、近くの有料駐車場へ行って、車に乗り込み、自宅まで車を走らせて行った。自宅は、車で五分もかからなかった。

自宅へ到着すると、異様な雰囲気があった。何足か靴が置かれているのである。

ジャクリーン「ただいま。お客さん?」

夫「ジャッキー、何をやっていたんだ。話し合いがあるから、早く帰って来いと電話を鳴らしたはずだ。」

ジャクリーン「ああ、気が付かなかったわ。ごめんなさい。」

夫「気が付かないで済まないだろうが、こういう深刻な話は。」

ジャクリーン「それなら、迎えに来るとか何とかするでしょ。」

夫の姉「まあまあ、ここで喧嘩はしないで、ジャッキーも来たんだからさ、早く本題に移りましょうよ。入って頂戴、ジャッキー。」

ジャクリーン「私の家なのに入って頂戴といういい方はないわよ。」

姉「郷に入っては郷に従えよ。ここは、アメリカじゃないんだから、ちゃんと従いなさい。とにかく時間がない。会議を始めましょ。」

ジャクリーン「会議ってなんの会議よ。」

姉「いいから座って。」

と姉は、ジャクリーンを居間のテーブルに座らせた。テーブルには夫の長兄と次兄が、深刻な顔をして座っていた。

長兄「よし、始めようか。」

次兄「そうだな。ジャッキーも来たところだし、本題に入ろう。お母さんをどこに預けるかだ。」

ジャクリーン「ちょっと待って、預けるって、どこによ!」

姉「なんだ、そんなことも聞いてないの?」

ジャクリーン「聞いてないわよ。」

夫「いやあ、説明はしたんだけどねえ、絶対に嫌だって、聞かないから、、、。」

ジャクリーン「まあ、そうやって、意見が通らないと上の人を連れてくるのも、日本人の悪いところだわ!」

姉「じゃあ、聞くけど、これからお母さんのことを誰が見るの?」

ジャクリーン「あたしが見るわよ。責任もって。今、そう誓いを立ててきた。」

姉「違うでしょ?本当は、介護に疲れているから習い事を始めたと、言っていたわよ。正治は。」

ジャクリーン「なんてこと言うのよ!私はそんなこと一言も言ったことはないわ!あなたも優柔不断な人ね。あなたが、おばあちゃんのこと見たくないから、こうしてお兄さんたちを連れてきたにすぎないわよ。いいじゃない、私が最期まで見るから!それに認知症ではないのだから、治る可能性だってあるわけでしょ。だったら、それを信じるのも必要なんじゃないの?」

夫「でも、俺たちは迷惑なんだよ、母さんは。一日中死にたいといわれるんじゃたまらないよ。さんざんけがをして、やっとよくなったかと思ったら、今度はもっとひどくなって、もう、俺たちも、面倒は見切れないんだよ。だから、これが一番いい方法なんだ。」

ジャクリーン「あなたが迷惑でも私は迷惑じゃないわ。私が、迷惑じゃないんだから、それでいいじゃない!」

長兄「いや、そうじゃなくて、君が迷惑じゃなくても、他の人に迷惑が掛かるんだ。」

次兄「そうだよ。俺だって、今日は大事な会議があるんだ。でも、兄ちゃんが大事な用事だというから、会議は欠席してここへ来たんだ。これだって、いい迷惑なんだぜ。わからないか、アメリカ人には。」

ジャクリーン「お母さんの気持ちも考えてよ。誰だって、年を取ってから、急に出て行けと言われて、はいそうですかと喜んで出ていく人はいるとは思わないわ!」

長兄「そうだけど、それよりも自分たちが生活していくことを考えないと。お母さんは後数年で終わるが、俺たちはまだ時間があるんだから。それをお母さんに奪われちゃ、俺たちの仕事や時間はどうなるんだ?」

ジャクリーン「待ってよ、それじゃあ、おばあちゃんに死んでくれと言っているようなものじゃないの!」

姉「ジャッキーは、子供を持ったことがないからわからないんでしょ。確かに国が違うっていう理由もあるんでしょうけど。母親の立場から言わせてもらうと、自分の子供ほどかわいいものはないし、子供には愛情を注いでやりたい。そのためには子供にくっついてはなれないくらいかまってやることが必要なの。だから、親が介護に時間を取られていたら、子供が成長できなくなるのよ。子供が、何も言わなくても思春期になってから必ず悪く出るわ。それを阻止するためにも、年寄りは排除すべきなのよ。」

ジャクリーン「私は違うと思うわ。もし、愛情を注ぐなら、介護の現場を見せたほうがいいと思うわよ。そのほうが子供だって成長すると思う。それに、子供にくっついているなんていう生活は、まず不可能だと思うし、、、。」

姉「いいえ、今は時代が違うのよ。親が介護に時間を取られていて子供のほうを向かなかったら、子供は寂しさを感じて、不良みたいになってしまう。昔だったら、近所の人が見t下くれたとか、学校で何とかしてくれたとかできたのかもしれないけれど、今は学校も信用できないし、近所の人だって、みんなそれぞれ問題を抱えていて、他人の子なんて構っている暇はない時代なんだから、親がしっかりしてあげないとだめなのよ。それに、親がきちんと働いて、子供を育てる経済力も持たなきゃいけないのに、それを年寄りに邪魔されて働けなかったら、それすらも得られないわ。今は、経済力で子供の学力も差ができてしまうし、何よりも、そのせいで、子供が幸せになれない時代になったのよ。だから、それはちゃんとしなきゃだめ。」

長兄「それになあ、お年よりはお年寄りで集まったほうが、より愚痴も共感してもらえるだろうし、同じ悩みや苦しみを抱えていたほうが、分かり合えるじゃないか。そのために老人ホームとか、デイケアはあるんだと思うし。誰でも、一番大切なのは、自分とそれを支えるお金だからね。」

次兄「そうだよ。だって、俺はいつまでたっても結婚できないし。正治は、幸いこんなきれいな嫁さんをもらってくることができたが、俺は若いころ仕事をしすぎてしまったせいか、結婚どころか、恋愛すらできなかった。だから自分の食う糧は、自分で稼がないと。今日だって、仕事を欠席したんだから、後になってすごいお咎めが来るだろうし、給金も大幅に減らされる。この責任を年寄りがつくっているんだったら、さっさと消えてしまいたいものだ。なあ正治。そう思わないか。」

夫「そうだなあ。」

ジャクリーン「あなた!」

次兄「末っ子は甘え上手だからな。俺みたいに真ん中は悲しいもんだぜ。それをよく知っておけ。」

ジャクリーン「みんななんてひどいことを平気で言うのよ!みんなおばあちゃんから生まれてきたでしょうが!仕事につけたのだって、子供を持つことだって、みんなお母さんがいたからできるわけじゃない。そのお母さんが、今回弱ったのなら、何かか返してやろうとか思わないの?それじゃあ、まるで粗大ごみみたいに捨てていくみたいで、あんまりよ!」

夫「もう一度言うが、郷に入っては郷に従えだ!」

ジャクリーン「あんまりだわ!」

夫「確かに、君はアメリカ人であり、こことは違う文化のところで育ってきたわけだから、このようなやり方に違和感を持つのかもしれないが、ここはアメリカではないってことをわかってくれ。ここでは、アメリカのような優れた法律があるわけでもないし、福祉制度があるわけでもない。スロープのある店が本当に少ないのが動かぬ証拠さ。だから、親は年を取ったら捨てるしかないんだよ。そうしないと、俺たちは生活することができない。わかってくれ、ジャクリーン。俺だって、さんざん悩んだよ。本当は三人でいつまでも一緒に暮らしたいさ。でもあのように、毎日毎日泣き言を言われたら、俺は仕事もできなくなってしまうし、俺の仕事がなくなったら俺も、ジャクリーンも、何も食べて行かれなくなってしまうんだよ!」

ジャクリーンは、涙が止まらなかった。床に突っ伏していつまでも泣き続けた。

夫「だから、こうすることになったんだ。君が頑固であることはよくわかっていたから、、、。」

ジャクリーン「ごめんなさい、、、。」

ジャクリーンが泣き崩れたのをいいことに、会議は急ピッチで進められてしまった。


義母の部屋。もうすぐ、この部屋の主は、この部屋を去ることになった。

ちょっと躊躇しながらも、彼女はドアをノックした。

声「誰だね。」

酷くしわがれた声だった。

ジャクリーン「入ってもいいですか?」

声「いいよ、、、。」

ジャクリーンはドアを開けた。義母は、机に座って何か書いていた。

ジャクリーン「おばあちゃん、いえ、お母さん。」

義母「もう少しで、この家ともお別れだね。」

ジャクリーン「知っていたんですか?」

義母「ああ、きっとそうなるとおもってたさ。私は、そんな年になってしまったから。」

ジャクリーン「いつ、知ったんですか?」

義母「もう、前々からね。仕方ないよ。私が、この家をめちゃくちゃにしてしまったんだし。」

ジャクリーン「お母さん、私の力不足でもあるんです。私がもう少ししっかりしていれば、まだこのうちで暮らせたかもしれないんです。私、はじめのころ、お母さんの看病を任されて、本当につらいなんて愚痴を漏らしてしまったけど、お母さんは、正治を生んでくれた大事な人です。だから、粗大ごみのように捨ててはいけないんだと思いました。今回のことだって、私は最後まで反対だったんですが、お母さんがどこよりもこの家が好きだという望みをかなえてあげられなくて、本当にごめんなさい。」

義母「いいんだよ、ジャクリーン。私は、国こそ違えど、そういう純真な嫁に出会えて幸せだった。短い間だったけどありがとう。これで、私も心置きなくお父さんのもとへ行けるかな。」

ジャクリーン「せめて、私がいたことを忘れないでいてくれますか?そのしるしにこれをもっていってください。」

と、革の髪飾りを差し出す。

義母「ありがとう、、、。」

静かに受け取る。

ジャクリーン「ちょっと、不格好で申し訳ない花ですけど、」

義母「いいよいいよ、このほうがかえって覚えていられるよ。じゃあ、ジャクリーン、正治を頼んだよ。元気で暮らしてね。」

ジャクリーン「はい。」

目にいっぱい涙を流しながら、ジャクリーンは静かに白髪だらけの義母の頭に髪飾りをつけた。


ジャクリーンのレッスンの日が来た。優はいつもの通り待っていたが、ジャクリーンは来なかった。彼女は二度と彼の前に現れることはなかった。









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