共有装置

「ついにできましたね」

「ああ、できた。これも数々の失敗にも失望せず、私についてきてくれた君のおかげだよ」

「いやいやとんでもない。私は何もしていませんよ。あー、しかしこれでできるんですね感覚や感情の共有が」

「そうだとも。早速試してみるかね?」

「いいですね。…えっと、ベルトを巻いてスイッチを入れればいいんですよね」

「その通り。じゃあ準備はいいかね」

「はい」

「スイッチを入れるぞ」

「なんかドキドキしますね」

パチン

「へぇ」

「ほう」

「あ、今、何で最初にお前となんかやんなくちゃなんないんだよとか思いましたね」

「いやいやそんなことは…ってそうか隠しても無駄だな」

「そうですよ」

「そうだな」

「へえ、なるほどね。そんな理由で作ったんですか、これ」

「君こそそんな不純な動機だったとはな」

「いやいやまあいいじゃないですか。とにかく成功したみたいだし」

「そうだな。しかし考えていることが伝わるのは、やはりよくないな」

「そうですね。やっぱり隠しておきたいこともありますから」

「とりあえず考えてることの方だけ切るぞ」

「はい」

「うーむ。思った以上に実用的ではないな。これはどちらか一方のみに伝わるようにしたほうがいいかもしれんな」

「そうですね。一応警察に売ろうとしてるんですからね。警官の恥ずかしい過去とか犯罪者に知られたらマズいでしょうし」

「そうだな。まあそれはまた後で話すとして、もう一方のテストだ」

「感覚、ですね」

「ああ。早速だが、君を殴ってもいいかね」

「え? ああ、ああそうか。いいですよ。あんまし強くは殴らないでくださいよ。体弱いんですから」

「ああ分かっているとも。いくぞ」

バシっ

「ほう」

「どうですか?」

「いや、これは面白いぞ。君も私を殴ってみたまえ」

「いいんですか?」

「構わないとも」

「じゃあいきますよ」

バシっ

「へぇ…違うもんですね」

「そうなんだよ。同じ痛いでも君の感じる痛いは私のものとはどうやら違うようだ」

「不思議なもんですね」

「不思議なものだ」

「面白いなぁ。じゃあやっぱりアレですか?今は混乱するからって聴覚とか視覚とかは共有しないようになってますけど、これ共有するとまた違う世界とか違う音とか聞こえるんですかね」

「そうかもしれんな。でもそれはやはり危険だよ。触覚とかそういった感覚だけにとどめておかないとな」

「そうですねぇ。でも面白いなぁ」

「そうだな。…さて、それじゃ、もう一つだけテストさせてくれ」

「え?まだ何かありましたっけ?」

「いや別に大したことではないんだよ」

「え?ちょっと待ってください、それは…」

「ずっと知りたかったんだよ。死ぬときっていうのは、どんな感覚なのかっていうことをね…まあ、君の感覚と私の感覚が違うとはいえ、参考にはなるだろう…」

ズドン

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