第145話 春の日

あんなに凍えた日々を

寒さに震えた日々を

すっかり忘れたような顔して


広がるピンクと

ほんのり霞んだ水色

甘い風に身をゆだねて


決して裏切ることはないなんて

どうして信じていられるのか

その死体の上に咲く

花の魔性に侵されて


ただ人は静かに願う

この穏やかさが続くことを

その願いの愚かさに

気づく者は誰一人いない


ただ私は春に浮かぶ

ゆるやかな時に流され

ぬくもりに絶望しながら

ただそこに在る春に浮かぶ

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