第141話 春に。

風に漂う梅の香を胸いっぱいに吸い込んで

体中に春が満ちたらきっと歩き出せるんだ

今日の続きのような全く違う明日へと

新しい道のりをいつものスニーカー履いて


ほんの少し怖いけどほんの少し楽しくて

震える手でそれでも強く扉を開く


置き去りにする昨日に胸は痛むけど

その傷はきっと絆創膏で大丈夫

僕らの自然治癒力はたぶん

生まれたての赤ちゃん並みだ


みるみる生まれ変わる細胞が

新しい自分を造り出してくれる


それでも心だけは昨日の自分を覚えてる

涙を流した日も歯を食いしばった日も

そんな日々の全てが今の僕を造った

その事実は本能に刻み込まれている


これまでの自分もこれからの自分も

全てひっくるめて自分自身だから


この体を全て春に明け渡して

去りゆく季節を抱きしめよう

そしてこの春のにおいに包まれて

来るだろう新しい季節に向き合うんだ



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