第88話 遠い記憶、過去、未来

車の窓についた水滴が

流れ星に見えたこととか

夜の病院にスリッパの音が

やたら響いたこととか

どうでもいいはずの

記憶の断片達がどうやら

私自身を作り上げてきた

重要なパーツみたいで

もう今さらどうだっていいはずの

くだらない思い出たちが

夜の道を走っているときに

不意に思い出されたりして

ああ、いつだって私は

どうにもならない過去に縛られ

未来の可能性を信じたいはずなのに

結局過去から抜け出せていないんだ、と

否応なしに見せつけられて

やっぱり、なんて諦めたりしながら

それでもそんな自分のこれまでが

ほんの少しいとおしく感じたりもして

なんだかよく分からないままに

ひたすら今この時を生きている

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