第3話 ハンガーとアルミ缶があれば?
休み時間。
俺はスマホを取り出し、自作アンテナについて調べてみる。
するとヤギの言葉通り、意外と簡単に作れることがわかった。
「必要なものはハンガーとアルミ缶だけ?」
そんなもので作れてしまうとは!?
しかし、作り方を調べていくうちに、ある重要な情報をヤギに教えてもらっていないことに気が付いた。
とても、とても、重要な情報を。
だから俺は、放課後になると即座に質問する。
「おい、ヤギ。一体どの局を見たいんだよ」
これはかなり大事なことだった。
だって、放送局によって電波の周波数が違うから。
それによってアンテナの大きさが異なってくるのだ。
「テレビ神玉よ」
——テレビ神玉。
俺たちが住んでいる地域のローカル放送局だ。
子供の頃から見ている馴染み深い放送局とも言える。
「テレビ神玉? そんなのいつでも見れるだろ?」
「それがね、いつの間にか見れなくなっちゃってるの」
ま、まさか!?
倒産しちゃった……とか?
一流企業だと思っていたシャアプや車芝が危なくなる時代だ。
時代の波に飲まれれば、テレビ神玉なんてひとたまりもない。
それに、テレビ神玉は想い出の放送局だったりする。
だから潰れてしまっては困るのだ。
確か小学校の時、学芸会の様子が放送されるということで、ヤギの一家と俺の一家で一緒に見たことがあった。
天女を演じるヤギが羽衣を掛けた松の枝。それが俺の役だったことは、今のクラスメートには内緒だけど。
俺は慌てて、スマホで『テレビ神玉』を検索する。
すると、ちゃんとホームページが出てきた。
「良かった、健在で……」
ほっとしながら、俺は怒りを込めてヤギを見る。
「おいおい、焦らせるなよ。倒産してねえじゃねえかよ」
「誰も倒産なんて言ってないよ。見れなくなっちゃったって言っただけだよ」
「そんなことあるわけないだろ? 昔から見てるんだから。ちゃんと確かめたのか?」
「やったわよ、昨日、何度も何度も。でも全然映らないの」
そんなことって……。
もしかしたら、テレビを買い換えたとか、設定を変えたとか、そんなことなんじゃないのか? まあ、これはヤギの家の事情だから、実際に行ってみないとわからないが。
「それでね、困ってスマホに『テレビ神玉が見れない!』って叫んでみたら、興味深いページが表示されたのよ」
ヤギがスマホを操作して、そのページを表示する。
そこには、次のようなタイトルが書かれていた。
『地デジ開始で地方局が映らなくなったので、アンテナを作ってみた』
地デジ開始?
そんなことに関係あるのか?
それって……いつだったっけ?
その時に地方局が映らなくなる理由って……一体何だ?
俺はヤギからスマホを受け取り、表示されているページの記事を読み始めた。
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