第2話 タイムリミットは今夜

「こ、今夜だって!?」

 

 そりゃ、無理だ。

 作り方も分からないし、材料だってすぐに手に入るとは思えない。

 渋い顔をする俺をよそに、ヤギはキョロキョロと辺りを見回し始めた。


「ちょ、ちょっとデンキ、声が大きいよ」


 どうやら、俺の心のからの叫びは教室中に響き渡ってしまったようだ。

 クラスメートの視線に晒され、俺たちはヒソヒソ声になる。

 

「おいおい、今夜までなんて無茶だよ」

「でもね、デンキ。ネットで調べてみたら、意外と簡単に作れそうな感じで書いてあるのよ」

 簡単に作れそうな感じって、自分で作る気ないだろ?

 ネットで調べた意気込みだけは評価してやるが。

 でも、本当に簡単に作れるのなら、タイムリミットに間に合うかもしれない。


「簡単って、本当か?」

「デンキも試しに『自作地デジアンテナ』で検索してみてよ。たくさん出てくるから」

 ほお、それは心強い。

 作成例がネットにたくさん載っているというのは、それだけ作る人が多いってことだ。つまり手軽ってこと。

 俺がヤギの言葉に希望の光を見出した時、ホームルーム開始のチャイムが鳴った。


「じゃあ、次は放課後ね。デンキも調べておいてよ、作り方」

「ああ、分かったよ……」


 こうして俺は、ヤギのため地デジアンテナの作り方について調べることになった。

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