第六話 なんで二分の一なの?
「私ね、県立大学の日本文化学科を目指してるの。でも最近になって、センター試験も受けなきゃいけないことが判明してパニクってんのよ。それには数学があるの。三角比とか勉強しなくちゃいけないの。ヤバいの」
ていうか、県立大学受けるならセンター試験は必至じゃないか。
それが今頃判明しただなんて、そっちの方がヤバい。
「サイン三十度って何なの、あれ? 全く理解できないんだけど」
「えっ、サイン三十度って、二分の一だろ?」
「キミも先生と同じこと言うのね。あっちの人間ね。だから日本はダメになっちゃったのね」
いやいや、日本はまだまだ捨てたもんじゃないと思うけど。
というか、僕の答えと日本の未来を一緒にしないでくれ。
「誰も教えてくれないから恥を忍んで聞こうと思うんだけど、ちゃんと教えてくれる? バカにしない?」
「あ、ああ……」
一体どんな質問をされるのか、恐怖しながら僕は返事をした。
彼女の中に隠されたサイン三十度の秘密が今、明かされる。
「ねえ、なんで……二分の一なの? 〇・五じゃダメなの?」
ええっ、そこ?
疑問点ってそこなの?
僕はぷっと笑いたくなるのをこらえるのに必死だった。
「あー、今笑ったでしょ? 絶対、笑ったよね」
プクッと頬を膨らませた彼女は可愛らしい。
二重の瞳、ぷっくりとした涙袋。
白状すると、最初に動画を見た時から気になっていた。が、目の前の彼女は、動画なんかよりもはるかに魅力的だった。
「そう、〇・五でいいんだよ。先生達が間違っている。それを僕が証明してあげるよ」
いつの間にか僕は、自分の立場を先生側ではなく彼女側に置きたいと考えていた。
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