第四話 見つけてやる!
次の日。
早速僕は、一晩考えた作戦を実行する。
これはかなり勇気のいる作戦だ。なぜなら、席を離れる時にスマホをテーブルの上に置いていくのだから。
もちろんそのままでは盗まれてしまうので、教科書と参考書の下に隠しておく。そしてカメラの部分だけを覗かせ、録画機能を作動させたままにしておくのだ。
午前中は何も起こらなかった。が、午後三時過ぎになって動きがあった。
トイレで席を離れた時の録画に、僕の参考書を覗き込む見知らぬ顔が写っていた。
「こいつか、犯人は……」
女の子だった。
キョロキョロと辺りを見回しながら参考書に近づき、内容をさっと確認して立ち去っていく。
落書きはされなかったので、犯人である確証は得られなかったが。
「ふん、お生憎様だな」
この時の参考書は英語だった。
もしかしたら、どの教科をやってるのか確認しただけだったのかもしれない。
「それにしても、ゴツい男じゃなくて良かった……」
僕はほっと溜息をつく。
もしこれが目つきの鋭いガチムチ男だったら最悪だ。このフードコートから即刻撤退していたことだろう。
まあ、丸っこい字から判断して、女の子らしいことは予想してたけど。
「割と可愛いらしい女の子じゃないか……」
見かけない顔だから、同じ高校の生徒ではないだろう。
フードコートで見掛けたらすぐ分かるよう、僕は何度も何度もその子の映像を眺めていた。
次の日から僕は、フードコートにその女の子を探し始めた。
が、どこにも見つけることはできない。
しかし僕が席を離れると、不思議なことに一日に二、三回は参考書を覗き込みにやってくるのだ。スマホの動画がそれを物語っていた。
そして僕は、あることに気がついた。
数学、理科、英語、社会、国語。
広げている参考書が変わると、女の子の表情があからさまに変化する。
数学や理科では険しい表情になり、英語では眉間にシワを寄せる。そして社会や国語では口元を緩ませ、可愛らしい笑顔を見せる時もあった。
その姿を見て僕は確信した。
落書きの犯人は、間違いなくこの女の子――だと。
もし、広げているページが三角比であれば、鬼の形相でマジックを握りしめることだろう。
それならば先制攻撃と、僕は復習の意を込めて、あるイタズラを実行することにした。
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