おじさんの小話

タウタ

おじさんの小話

おじさんが立っている。

ハゲのおじさんだ。

すごいおなか。

赤ちゃん入ってそう。

ああいう人のズボンとベルトってどうなってるんだろう。

別におじさんがデブでもいいんだけど、道の真ん中にいるのは困る。

ぶつからずに通る自信がない。

でも、どいてって言ってキレられたらやだな。


「あの、すみません。少し寄ってもらえませんか?」


私は自転車を降りて、できる限り丁寧に話しかけた。

おじさんはびっくりした顔で私を見る。

え? 何? ダメ? このあと怒鳴られる感じ?


「お嬢さんは僕が見えるんですか? いやあ、参ったなあ。いやね、僕が見える人たちは大抵僕を避けていくんです。僕が見えない人たちは、僕を突っ切っていく。寄ってくれなんて言われたの、死んでこの方初めてです。いいなあ。すごく新鮮だ。あ、明日もこのくらいの時間にここ通んなさい。いいもの置いておくから。ねっ」


おじさんはそう言って消えた。

次の日、道の真ん中に宝くじが置いてあった。

風で飛ばされないためなのか、私への目印なのか、三角の石がのっていた。

当然のように当たった。


Fin.

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おじさんの小話 タウタ @tauta_y

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