第5話 私と先輩と短パンの隙間からはみ出てる・・・やっぱ15センチのアレ
片付け終わって体育館に行くともう試合が始まる寸前だった。
選手は各自でウォームアップを終え、整列する寸前だ。
「お、やっときたか、どこに行ってたんだ須木間。」
「すいません、片付けに手間取ってしまって。」
この人は私たちのチームの監督、貝雪(かいせつ)先生だ。
学生時代にバレーボールで全国まで行ったことがあるらしい。
さすが全国に行っただけのことはある、指導も的確で生徒とのコミュニケーションも上手に取れているすごい先生だ。
「さぁ、始めるぞ。」
選手たちがコートの端に整列する。
みんな少し緊張しているのか表情が固い。
そんな中、先輩はとても晴れやかな表情をしている。
そしてアレもあのままだ。
もう何も言うまい、アレを含めて私の好きな先輩なのだから。
ピーッ!
そして試合開始の笛が鳴った。
『よろしくお願いシャーッス!!』
コートにならんだ選手がいっせいに叫ぶ。
これから始まるのだ、全国行きを決めるための激闘が。
相手の選手と握手を交わし、全員が監督の下へ集まる。
「よし、いいかここが正念場だぞ。うちと向こうの実力の差は全く無い。お前らが全力を出せば十分に勝てる。しっかり両サイドのストレートを閉めろよ。」
監督がアドバイスと激励をした後、先輩が口を開いた。
「みんな、さっきの試合じゃゴメン。でも、もう気持ち切り替えたから大丈夫だ。俺にボールを持ってきてくれ!」
良かった、本当に切り替えられたんだ。
そんな先輩の思いに引っ張られるように他の選手も
「当たり前だろ!お前は俺たちのエースなんだからよ!」
「スパイクは任せたぜ、エース。」
「またネットタッチするんじゃねぇぞ~。」
先ほどまでガチガチだった選手たちの表情も心なしか柔らかくなっている。
これなら大丈夫だ、きっと勝てる。
6人の選手たちはコートへと向かっていく。
「先輩!」
私は先輩を呼びとめ、拳を突き出した。
先輩もニッと笑い、拳を突き返してきた。
先輩がコートの中に入ると会場にどよめきが走った。
「ねぇ・・・アレって・・・」
「うわっ・・・あいつマジかよ・・・」
「クソうけるんですけど~。」
相手チームや観客から小さい声で先輩に対して非難や嘲笑の声が向けられているのがわかる。
でも、当の本人はまるで気にしていないようだ。
いつもと変わらない表情でコートにいる。
そして、こちらのサーブで試合が始まった。
実力は互角、一進一退の攻防が繰り広げられるかと思われた・・・
が、現実は違った。
相手チームの様子がおかしいのだ。
こちらのスパイク攻撃に対する反応がワンテンポ遅れている。
ブロックが遅れてジャンプし、空いたコースにこちらのスパイクがポンポン決まる。
明らかに集中できていない。
一体どういうことだろうか?
「はっ!そういうことか!」
監督が何かに気づいたようだ。
「監督、何か分かったんですか!?」
「ああ、まさかあんなことをやってのけるとは・・・なんてやつだ・・・照・・・」
「え?先輩が何かしてるんですか!?とてもそんな風には見えないですけど・・・」
先輩は普段どおりプレーしているだけだ。
そう、プレーはいつも通りだが普段と違う箇所が一箇所だけある。
「も、もしかして!」
「そう、あいつは・・・
ビンビンになったアレを適度にはみ出させることによって注目を集め、相手のボールに対する集中力を削いでいるんだ!!」
「な、なんだってー!!」
バレーボールは瞬間の勝負、一瞬でも判断が遅れればそれはプレー全体に影響する。
そんな判断力が問われる勝負の場でもし、向かい合う相手の選手のアレがはみ出ていたりしたら、はたして集中できるだろうか。
いや、できない。
そう、先輩はあえてアレをはみ立たせることによって相手の目を奪っているのだ。
監督は真剣な表情で言う。
「言うなればあれは・・・最強の囮!」
「監督、なんかどっかの人気漫画で聞いたフレーズなんですけど・・・」
「だがあのちんp・・・間違えた、戦法には弱点がある。」
「えっ!そうなんですか!?」
弱点・・・?そんなものどこに・・・
そう思ったとき、ちょうど先輩にサーブが回り後衛へと向かった。
「後衛・・・そうか!」
「気づいたようだな、そうあの戦法は前衛でブロックにつきつつ、相手に近距離でポロリを見せ付けることによって始めて効果を発揮する・・・つまり後衛に行ってしまった今では効果は半減してしまうのだ!」
「じゃ・・・じゃあこのままじゃ!」
そう、このままでは相手の集中力を削ぐことができないのだ。
「とりあえず照が前衛に回ってくるまで耐えなければ・・・」
監督が苦虫を噛み潰したような顔をしている。
そう、ここから私たちのチームは耐える時間に入る・・・かと思われたその時、それは起きた。
「な、何をしてるんだ!照!!」
監督が叫ぶ。
それもそのはずだ、なんと先輩は相手のスパイクが来る直前、相手のスパイクが来るコースで、
スパイクレシーブの構えを取らず、無防備に股間を突き出しているのだ。
それはまさしく無謀、後から聞いた話では、会場にいた男は全員恐怖で顔が引きつっていたという。
バレーボールのスパイクは、プロで時速150キロ出ると言われている。
高校生ではそこまでの速度は出ないであろうが、それでもとんでもない衝撃には変わりない。
そんな速度のボールを、男の人体で一番無防備な股間で受けるというのだ。
正気の沙汰ではない。
そして、次の瞬間
ボールが先輩の股間にぶち当たった。
『うわああああああああああああああああああああああああああ!』
会場にいた男全員が股間を抑えて絶叫した。
ボールを股間で受けた先輩もそうなっているに違いない・・・はずなのだが、
先輩はピンピンしていた。
痛みで叫ぶこともなく、うずくまってもいない。
何よりも不可解なのは、股間で受けたボールがしっかりとセッターの下へ返っているということだ。
基本的にバレーボールでは、レシーバーは相手コートから返ってきたボールを、セッターと呼ばれる役割の選手へパスしなければいけない。
そして上げられたボールを、セッターがスパイカーへとトスをすることでようやくスパイクができる。
相手から帰ってきたボールを受けるレシーバーというのは、このスパイクをする上で一番重要と言っても過言ではない。
しかも、相手のスパイクをセッターへと正しく上げるのはとてつもなく難しいはずなのだが、なんと先輩はそれを股間でやってみせたのだ。
さらにその後相手チームからスパイクが何本も打たれたが、すべて先輩の股間へと吸い込まれ、綺麗にセッターの下へ上げられた。
一体どういうことなのだろうか。
困惑していると監督がポツリと呟いた。
「まさか・・・!?」
「何かわかったんですか!?監督!」
「ああ、あいつは・・・照は・・・
レシーブの瞬間アレを硬くし、あれが持ち上がった勢いを利用してスパイクの衝撃を相殺させているんだ!!」
「なん・・・だと・・・!?」
普通の人間ならば到底不可能な芸当だが、アレがアレな先輩なら可能なのかもしれない。
だが、それだけでは説明できない部分が存在する。
「で、でもそれなら何で相手のスパイクは先輩の股間に集まってくるんですか?」
「照はスパイクを打たれる瞬間、アレをわざとはみ出すことによってスパイカーの目線を奪っているからだ・・・」
「えっ?それってどういうことですか?」
「上手いスパイカーというのは打つ瞬間でも相手のコートが見えているもんだ。それもこんな全国を決める決勝戦という大舞台であればそれが可能な選手も多い。あいつはそういう選手たちの視界の広さを利用しているんだ。」
「・・・そうか!ブロックのときと同じように先輩は打たれる瞬間にはみ出すことで相手の目線を自分の股間に集中させているんですね!」
「そうだ・・・どんなに優秀な選手でも、スパイクの瞬間にアレが見えれば無意識にそっちに目線が向かってしまう。それをあいつは利用して自分にボールを集めているんだ。」
「そうんな高度なことをこのぶっつけ本番で・・・」
「ああ・・・全く大した玉・・・いや竿だよ・・・フッ。」
監督はなんだか上手いこと言ったみたいな雰囲気を出しているが、言っていることは最低だ。
「そう、あいつのこの技に名前をつけるなら・・・『はみ出しゾーン』だな。」
「だから人気漫画の必殺技みたいに言うの怒られるからやめてくださいって・・・」
ともかく、前衛では『最強の囮』、後衛では『はみ出しゾーン』この二つの技を使えば攻守ともにこちらが有利なまま進めることができた。
1セット目は相手に少し粘られはしたものの、先輩のはみ出し戦法によって取ることができた。
しかし、異変は2セット目で起きた。
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