第15話『オープンワールド・ワールドアー その2』

「レイジ落ち着け! トシマは生きてるはずだ、気を落とすな!」



「ああ、ぐ、すまない……協力だッ協力してあの男を倒そう、あの死体が誰なのか聞き出してやる……! アリシアは下がっててくれ、チャンスを見てこの食堂から逃げるんだ」



「わ、わかった!」



「ノドカ! 私も戦うよ! この鉄の大鎌で、私の能力は金属を体から生み出し形作る能力!」



「ああウツリ! いくぞ!」



アリシアは食堂に居る一般人を誘導し、脱出させ食堂から抜け出した、ソニアだけテーブルに突っ伏して放置されてるけど。

残るは三名、レイジとノドカ、ウツリは男を睨みつけ、戦闘態勢に入る!



「やる気か~、無敗だぜ~、オーパーツ使いは無敗なんだぜ最強すぎてな~俺の名はパドラル・ワルドルウォー、オーパーツはタイプXだぜ~、その能力は、えっとなんだっけな~長くて忘れちゃったぜ」



「お前の能力などどうでもいい、トシマの無念、今晴らす!!」



「レイジの超能力ほど強くはないだろうが、俺も容赦するつもりはない、パドラルとやら」



「私もその、容赦しないぞ、ソニアさんを傷付けたのも許せない!」



レイジの怒り、それがぶつかる! 三人の息は今ぴったり合った、倒すべきは目の前の敵パドラル。

その能力は未知だが、ノドカ、ウツリ、レイジ三人いればなんとかなるはずだ!



「無念がどうのこうのほざきおって~……ま~いいぜ~、俺の能力は一番最強だからな」



パドラルと名乗る男、髪の色は前髪が紫、と後ろ髪は黒色で、目元の濃いクマも特徴的だ。

衣装は王国の剣士とかその辺の西洋的なものだが、背中にどでかいなにかを背負っている、壁か板か。

しかし行動は突然、にたにたと誰も得しない笑顔を振りまき、背中にしょったどでかい何かを地面に置く。



「これがおれのオーパーツ、俺の能力を超スーパーグレードアップしてくれるワンダフルな兵器なのよさァ」



「レイジ見ろ、あいつは壁か板を背負ってるとおもったが違うようだ、アレは巨大な扉!」



「なるほどぉノドカ、あいつはあの扉を振り回して戦う感じのキャラなのかな? ドアを操る能力かな?」



レイジもノドカもウツリも彼の力の本質は分からないままだった。

背中にドアをしょっているだけで奇妙だが、次に起こることはさらに奇妙なことだった!



「俺のオーパーツはタイプX! 名をゼノバイオティカと言う! その能力、驚くぜお前らきっと驚くぜ~たしかメガネのお前、ノドカとか言ったな!」



「ああ、そうだけど」



ウツリがパドラルの扉を指差しノドカに声をかける。



「見てノドカ、奴の扉が開い……ファッ!?」



奇妙それは奇妙、奇妙が訪れたッ!

扉が開き、そこから人物が出てきたのだ、ドアの周りには誰も居なかったというのに……奇術か?

いや、それ以上に奇妙なのは、現れたのはノドカなのだ!

超能力者といえどこれにはレイジも驚く。



「なんだ!? ノドカがもう1人? ここにしっかりノドカは居るのに……服装がちょいと違うだけで他は全く一緒だ!」



レイジの横に居る、トシマとソニアの無念を晴らそうとする勇敢なノドカとは別に"もうひとりのノドカ"が現れたのだ、ご丁寧に、ウツリまで連れてきた! このウツリももう1人だ!



「な、信じられん、ドッペルゲンガーか? 俺がもうひとり? しかもウツリまで。いやだがウツリは俺の隣に……あれもまたもうひとりのウツリ、か!」



「うわああぁあぁ、なに、私とノドカがもう1人、うわぁ怖いぃいぃ!」



「いいねー、驚き驚愕、肝っ玉ツブれたか~!? 俺はこことはちがう"もうひとつの世界"を行き来できて、"もうひとつの世界から人物を連れてくることができるんだよ"そういう能力なのさぁこのドアを通じてなぁ!」



「なるほど世界を飛び越える能力者が居ようとは……初めて聞いたし初めて見たな、そんな能力者が居ようとは。だが俺たち自身を連れて来てどうする? 戦闘能力が互角なのでは、なかなか勝負がつかないハメになるぞ?」



「だア~わかってねえ~、世界が違うけりゃ、地位や生活環境、苗字や性格、引いては能力も違うこともあるんだよ説明させんな、世界クラスの説明させんな」



パドラルの話を聞くうち、レイジはうすうす理解した。

先ほど自分が殺した人物は"トシマではないことに"気づいた……あの死体は……。



「そっちで黒焦げになってる哀れな死体は、トシマではないということか。恐らく、俺だな、俺はエクストラビームで俺を殺した、気察知でモヤを感じたのは自分自身の気という特殊すぎるケース故かぁなるほどね」



「理解力あるなぁ~、さすが最強の能力者レイジ。俺はもうひとつの世界からレイジを連れてきたんだがな、まさか瞬殺されるとはな~ま、同キャラだからって強さが一緒とは限らんわなァ」



パドラルはもうひとつの世界でレイジを見つけ、味方にしていたのだ、アナザーワールドのレイジということで、アナザーレイジとしておく。

ちなみにだが、パドラルはもうひとつの世界の人間を問答無用で味方にできるわけではない、言葉巧みに味方につけなければならないのだ。



「あっちの世界のレイジは、妖精と出会う前だったようでな、会っていきなりサイン入り色紙くれたりしたな(即捨てたけど)こっちの世界きたらアリシアっていう可愛い妖精を自分のものにできるよっつったら飛びついてきてチョロかったんだがな~」



「あっちの世界のレイジって変人のようだな」



ノドカは目を細めレジェに言う、違う自分とはいえ複雑な心境にたまらず後ろ髪を掻くレジェ。



「と、いうわけで次はノドカ! お前を呼び寄せたというわけだ~!」



パドラルの甲高い叫びと共に、こちらの世界にやってきたノドカとウツリ。

こちらもアナザーノドカとアナザーウツリとしておく。

彼らはあたりをキョロキョロと見回し、場所を把握したのか、口を開いた。



「ウツ……体に異常はないかい? 大丈夫ならそれにこしたことはないけれど」



「ノドカ……私はウツではない、ウツリだ、ちゃんと名前を呼んでくれよな」



「ああ、わかってるごめん、ウツリのツッコミを期待した」



「へえ、殺すよ? 取り憑いて殺すよ?」



なかなかにバイオレンスな関係のようだ。

アナザーノドカはオリジナルよりおちゃらけた性格で、ウツリを見る視線が怪しい。

アナザーウツリはオリジナルより性格がツンケンしており、鎌も持ち手が木製で全てが金属じゃない、能力も違うのか、やはり微妙に違う。



「気味が悪いな、自分が敵とは……それに俺はあんな絡みをウツリにしない……」



「ノドカ、ノドカ私は殺したいとか思ったことないぞ、誤解しないでよ、アレは私の偽物だ!」



「わかってる、落ち着くんだ、あいつらは俺たちであって俺たちでない。別の世界とやらでどういう人生を歩んだかは分からないが、俺とウツリの邪魔をするなら倒すまでだ」



オリジナルの言葉に反応し、アナザー達も口を開いた。



「パドラルという男に、俺たちの姿を真似た偽物が暴れてると聞いたが、まさか本当にいるとはな。さてウツリどうする? 俺としては気に食わないし倒したいがね、ぁあ倒したい」



「そうだな、私の事をアレだの偽物だの言ってるし殺すよ? 無闇に殺してやる、虚仮脅し(こけおどし)じゃぁない、私は、私を侮辱する愚者を殺すのさ」



「だそうなので、人殺しはいけないことだけどさぁ、偽物なら殺しても問題あるまいって奴だよ。ウツリが殺したいなら好きにやらせよう、ウツリ以外の意思には興味がないからね俺は、へへ」



今ここに、ノドカ対アナザーノドカ、ウツリ対アナザーウツリが開戦された!

一方で火花を散らすのはレイジとパドラル。



「よっしゃ~、かかってこいや~レイジ、オーパーツ使いの偉大さを思い知らせてやる」



「ちょっといいかパドラルとやら、オーパーツ使いは無敗みたいなことを言ってたな、本当か」



「そうだぜ~、俺たちはオーパーツにより能力強化を受けているワケだからな。お前らみたいなしょーもないシラフの能力者はビフォー、俺たちオーパーツ使いはアフターってわけだ、あれ自分でもよくわかんねぇ、でもそういうことだぜ」



「そうか、ならそれはさっき破ったな、オーパーツ使いは倒したぞ1人。アビス・エンプティロードという"オーパーツ使い"は俺がさっき倒した、雑魚だった」



「え、マジか? いやウソだぜ、聞いてないからな~(そもそもあの重力バリアを突破なんて聞いたことないぞ)」



「さっきと言ったろう、今さっきだから情報が渡ってないだろお前らが言う組織に戻ったら分かるんじゃないのか、多分大騒ぎだろう、オーパーツ使いとやらが潰されたのだから、お前の力が俺にどの程度通用するかは分からないが、それでも戦うか?」



「ぐぬぬ……それが本当だとしたら、アビスより戦闘能力の低いおれでは勝てんだろうよォ! だがお前のそのセリフが全てウソなら、演技なら、お前が半演技派の男ならばあるいは!」



「アリシアがこの場に居れば証言してくれたろうな、俺の言葉の真実を。だが気持ち的にそんなことはどうでもいい、俺とアリシアの邪魔をするなら倒す、それまでだ」



「ぐ、ただでやられる俺じゃあないぜ! 俺はこのドアから刺客を送り込む、いくぜ! やれぇソニア!」



レイジの余裕溢れる態度と威圧感にたじろぎ続けていたパドラルだが、口角をあげニヤリと笑う。

紫色の前髪をたくし上げ、オーパーツタイプXの扉を今開く!



扉から現れたのは、ソニア……らしいが、様子が全く違う。

テーブルに突っ伏して瀕死のソニアとは違う、その眼光と敵意、それは恐ろしいものだ、明らかな敵対意識をもっている!



「次はお前か、私の修行に付き合ってくれる者は……先ほどは私自身との戦い、こしゃくな抵抗をされ腕を負傷したが、次はそうはいかない……」



そのソニアは拳銃を構え、レイジに狙い撃つ。



「別世界のソニアさんか! しかし手に持つ拳銃、そして腰に携えた長剣、分かりやすく恐ろしい! だが銃弾程度は俺の念動力による身体の強化で弾くことができる!」



しかし! 弾丸は弾かれることはなかった。レイジの念動力に影響を受けないのか?

いやよく見るとめちゃくちゃ回転してるではないか弾が!

なんだこの回転は、全く軌道がぶれない! ついにレイジの念動力を打ち破り、2発の弾丸が肩と腕を貫いた!



「うぐぁぁ!? ば、ばかな!」



「来い……ここでは狭い、表に出ろ……フゥー……殺してやる」



異なる世界からやって来たソニアはレイジを誘いながら、食堂の出口からゆっくりと出て行く。

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