第9話『鬼神色と魔術でバトル色 その3』
「ぐ、そうだった……そういえばこいつは最初、突然俺たちの近くに現れやがったんだ……普通に考えりゃア…こいつがテレポートを使えると踏まえるべきだったッ! くそが! うらァァアッ!!」
だが深くは刺さっていない! 重傷ではない! 軽傷でもないので、中傷とでも言おう!
すかさず回し蹴り! ゼットの頭部を狙う!
「ぐおっ!」
クリーンヒット、吹き飛ばされるゼット。
しかし風の魔法を発動し受け身を取った!
「うわあぁジャントっ! しまった!」
プロトスの声。
いつものようにジャントの手元からではない、なんとゼットの腕に握られてるのだ! 銃になったプロトスが!
「てめぇ! くそ! 殴られた瞬間、腕の力が緩んだ、あの一瞬の隙に取られたってのか!(解説してる場合じゃないけど)」
「回収完了だ、オーパーツ・プロトス」
「返せやおらああ!」
相棒を取られるわけにはいかない! ジャントの全力ダッシュからの飛び蹴りが襲いかかる!
一方のゼットは抵抗するプロトスに振り回され、ジャントをあしらう魔術を発動できないでいる。絶好のチャンスだ、今なら取り返せる!
「ゼットを蹴ったないまー!」
意外ッ! ジャントの前に飛び出したのはヒナタ! ジャントの全力の飛び蹴りが、女の子にぶつからんとしている! 女を蹴り飛ばすのが物語の主人公と言えようかどうなのか!
「なっ……ヒナタよせ! やめろ!」
ヒナタが身代わりになることに傷心してか、ゼットの焦りを感じられる声が漏れる。
だがヒナタはジャントの蹴りを両腕で受け止めた! ジャントは驚く!
「こ、この女! なんてこった、俺の蹴りを受け止めた! だが怪力だから、というわけじゃぁねぇ、俺の蹴りが当たったその瞬間、この女の腕は、指が折れ、血が出てたぜ! 恐ろしいのは、怪我をしたそばからすぐにその骨折も出血も止まったことだッ! とんでもない再生能力を持ってやがるんだッ!」
ここで判明、ヒナタの能力は再生能力、肉体を超スピードで再生させるのだ。
呆気にとられているジャントの足を掴んだまま、ヒナタはジャントを地面に叩きつける。
「ゼットを傷付けるのは許さないんですからね! しね!」
「ぐほあ!」
そのまま踏みつける、あいにくだがジャントに蹴られたい願望などの性癖はない。(ていうか普通はない)ので、これはダメージ!
「ジャントッ! これを使って!」
ジャントのピンチに、プロトスが自分自身の黄緑色の体液をジャントに向かって飛ばす。
それは空中で小さな剣と変化し、ジャントの手元に転がってきた。
このような芸当もできるのかよとか思うかもしれないが、先ほどプロトスは銃に変形して弾丸を打ち出した、これはプロトス自身の体の一部を弾丸にして打ち出しているのだ。(よって弾数がとても限られる)
「サンキュープロトス! だらァ!」
「ぎゃんっ!」
ジャントは咄嗟に剣を取り、ヒナタの足を切りつけバランスを崩させる。
ヒナタはそのダメージで尻餅をついた、が、足の傷は一瞬のうちに完治する。
「女の子を傷付けるのはいい気持ちがしねぇ! 狙うはゼットだ、プロトス返せやおらぁ!」
ジャントはすぐさま起き上がり剣をゼットに向け、走る!
「ヌッはやいッ!」
ゼットのその言葉が漏れた次の瞬間。
ジャントがもつ剣がゼットの腹部を貫いていた!
「はァ……はぁ……なんでだ……! 刺したのに"全く手ごたえが無ぇ"……! こいつ、腹に風穴が空いてんのかッ!」
「ジャント、残念だったな」
剣をつきたてながら呆気にとられるジャントの目の前に、右腕の宝石をかざすゼット。
至近距離なら嫌でも見えるその色は、またも赤! これは炎の色! 皮肉にもジャントと同じく色によって力の質を組み替える!
「ぐわあぁあぁ!」
ジャントの身体を炎がむしばむ! 簡単には消えない魔術の炎!
苦しみにもがくことしか、ジャントにできることはないのだ!
「そんな! ジャントが、死んでしまう! くそぉ離せェ!」
「暴れるなプロトス、じきにお前のきもちもおちつく……」
「なんだって!? 落ち着いてられるか、僕の相棒はいま、火だるまなんだぞ!」
「ふむ、そうかそうか、では妙だな。なぜ俺の腕から逃げ出そうとしないのだ? お前の能力ならば、そうだな、身体中からトゲを生やしたりして、俺に攻撃ができるはずだが? 悠長に口だけを達者に働かせているばあいではないと思うが、な」
「なっ……!」
プロトスは何故だか抵抗できずにいた、口では嫌がっていても体は……。
なぜだ、ゼットの体に触れているいま、抵抗しようとする気が薄れてくる。
「ぐ、見えた、ぜ、お前の宝石……一色じゃア無ぇな……!」
ジャントは立ち上がっていた、火は消えていたが、全身火傷状態だろう、だがその顔はまだ勇ましいままであった、辛そうであるのがプロトスの気持ちを締め付ける。
「ゼットぉ! この男の人どうしますー?」
「ヒナタ落ち着け! 戦うな、お前は戦うな、俺の後ろに回っておけ」
「はぁーい」
ゼットは先ほどから、ヒナタが戦闘に加わることを過度に危惧しているようだ。
そのためかヒナタをジャントから遠ざけ、自分の背後へと回らせる。
「ところでジャント、俺の宝石が一色じゃないと言ったか」
「そうさ、目の前に突きつけられたとき見えた。緑色に光ってるときも赤色に光ってるときも、中心に桃色の輝きが灯っていたッ! お前の魔術を使う際の気質が! その宝石に色を灯しているならば、その桃色の輝きもまた魔術のはず! お前は俺たちの目には見えてないもう一つの、桃色の気質の魔術を使っているな!」
「なるほどするどいなその通り、桃色はメンタル、心の沈静化の魔術だ」
ジャントの読みは当たっていた、プロトスが反抗意識を失っているのは彼の魔術が原因だったのだ。
「だがわからねぇな、今思い返せばお前は……最初に姿をあらわしたその瞬間から、その宝石は桃色に光っていた気がするぜ、プロトス以外にもその魔術が必要ってことかい」
「ふむ、やはり鋭い……が、お前らに話すべき事ではないな。ところでジャントよ、お前の戦いぶりを見て分かった、お前はこのオーパーツ、プロトスの力を"まったくひきだせていない"」
「なんだと?」
「俺が教えてやる、使い方を、オーパーツの使い方をな!」
ゼットはそう言うと、プロトスに宝石を押し付ける、色は桃色!
プロトスをマインドコントロールし、使役しようとしている!
「うわあああああッ!! やめろぉ! 僕はジャント以外には使われないィ! ぎいいいいっ」
必死に抵抗するプロトスなどそっちのけで、ニヤリと笑みを浮かべながら、ゼットはまた口を動かす。
「このオーパーツ・タイプPはプロトス、その意味は原初!! "この世界において最初に誕生したとされるオーパーツ"なのだ! そして変形能力に加え、あらゆるものの某体になる役割をもつアップグレーダー的役割よ!」
「うるせーぞ、プロトスが嫌がってんだろ離せッ!」
一目散にゼットに向かって走るジャント。
だが火傷のダメージが、ヒナタに蹴られた痛みが、ジャントの身体にこれでもかと蓄積して、足元をおぼつかせないのだ!
だが腕! その剣だけは、手の皮が擦りむけるほどの力強さで握りしめているのだ! 相棒、プロトスを救うために!
「私の、人間の肉体では耐え切れないほどのパワーの魔術も、このプロトスを使えば可能! 黒色の魔術……悪の魔術とでも言わせてもらおうか!」
「うわあああ! 体が、勝手に! 僕の意思など関係なくッ! うわあああ!」
プロトスはずっと叫んでいる、だが、その体は長い剣に変化し、刀身は黒く染まっていた!
ゼットが発現した、悪の魔術のちからだ!
「この野郎、無理やりプロトスを! それに、こいつはオーパーツ使い! あの宝石がソレじゃねーのかッ! 能力を増大させるドウグをひとりで何個も重ねて使えるんじゃ、無限に強くなれるってことじゃアねぇかー!」
「いいや違う、オーパーツは1人につきひとつまで! どんな屈強な戦士でも体が持たんからな! 俺はオーパーツを託された幹部であることは間違いない……! が、この宝石は名づけるならば「賢者の岩」……魔道書に沿って創り上げた独自のアイテムよ! 俺はお前との戦いで一度もオーパーツは使っていない! いや、今タイプP・プロトスを使っているがな!」
なんということか、ゼットはオーパーツを持っていなかった!
はじめからプロトスを我が物とするために、ジャントを狙ってやってきたというのか!?
「ジャントよ! オーパーツとは気質、私の魔術もまた気質、いやこれだけに留まらん! 能力、錬金術、言ってしまえば格闘術、これも気合いで強み、凄みが大いに変わる! 何事も気だ、気こそ戦うパワー、そして力を使役するカギたりえるものなのだッ!」
「なッ、いきなりなんだてめぇ、気だと! いや、妙だぞお前! さっきまでの敵意に満ちた、高慢や野望による言葉じゃない、まるで、俺へ語りかける……"助言"そうだ、助言! そう聞こえるぜ!」
「そんな、善意、悪意の話などどうでもいいのだッ! ジャントよ、お前の鬼神色の能力の才能は、とんでもないものであるのは確かだ! その力を完全なものにしたいがため俺はお前に近づいた」
ゼットはプロトス剣を突き出し、構える。そんな漆黒に臆することなくジャントは全力で走りゼットへ近づく。
「そして悪の魔術……悪とは憎しみ、恨み、ふつふつと湧き上がる敵意の具現化! 例えるならマグマよ! だがひんやりとした残酷性が同棲している! その矛盾と言える二面性をもつ悪がもたらす攻撃的な作用、それは破壊! この悪の魔術剣に触れたものは崩壊を起こすのだ!」
黒く濁っている波動をもくもくと放つ剣を、走り寄るジャントに振り抜く!
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