第8話 鬼神色と魔術でバトル色 その2


「察しがいいな、その通り、私はお前を貰いに来た。生きているオーパーツ、プロトスをな!」



そう言うとゼットはくっつくヒナタをどかして、右腕を手前にかかげる。

右手の甲には巨大な宝石がついており、それが赤く光る!

その瞬間、宝石に発火現象が起こった! そして不思議にも空中を炎が伝い燃え、ジャントとプロトス目掛けてつっこんでくるのだ!



「こいつ能力者か! しかしわかんねえ、プロトスがオーパーツだとか言ってやがる!」



ジャントはベルトのプロトスを取り外し、プロトスはすかさず鞭のような形状に変形する。

その長いリーチで近くにあった木に巻きつき、ジャントを引っ張り寄せる。



「フンなるほど、プロトスの変形能力を利用し大きく移動することで俺の炎をかわしたか……」



「ゼットぉ、喧嘩はダメですよぉ私たちの任務は抹殺とかじゃなくて、あのオーパーツちゃんの奪取じゃないですかぁ、我らがボス、チロさんに怒られちゃいますよぉ?」



「ヒナタ……安心しろ、少し知りたくてな、あのジャントという男……オーパーツに"使われてる"のか"使っている"のか……」



「そうですくぁ……」



「ちィ……プロトス助かったぜ……! (しかしあいつら、任務だとか言ってたな、つまりは何かしらの組織に属してるってことか? いやそれより、プロトスの変形の能力も知ってるようだった、オーパーツ呼ばわりしてるのもワケわかんねぇよな……てかオーパーツってなんだ! それにあの子が言ってたエッチってヒナタって名前のイニシャルかよ、くっそ紛らわしいッ!)」



「オーパーツとはなんなんだという顔をしているな、ジャント」



プロトを大剣に変え、戦闘態勢に入るジャントに声をかけるゼット。考えていた事を突かれ、思わずジャントはゼットに目を合わせる。



「説明してやろう、オーパーツとは世界各地に26個はあるとされる能力強化装置……と言ったところだ、オーパーツを装備したものは強大な力を得る、そしてお前の持ち物、そのプロトスもまた生きているオーパーツなのだ。我々組織はオーパーツを集めている、オーパーツ使いが集まる組織"OPT"がな」



「オーパーツ使い……なるほどな、その強大な能力を持った人間がウヨウヨ居るってワケか。で、プロトスもまたお前らが探してるオーパーツってやつ……そんでプロトスを求めて組織とやらの能力者が二人もやってきて俺に喧嘩売ってるってことかい」



「まあ、そういうことになるな。タイプGのアビス、タイプWのレイター、タイプAのマドウは敗れたが」



「ジャント気をつけて、あのゼットっていう男はあの腕から火を出す力を持ってるのが分かった、けれどあの女の子の力は全く分からないんだ! さっきのオーパーツの話が本当なら、強大な力のはず……油断しないで!」



ジャントは心底驚いていた! 敵の未知数についてではない、プロトスに。自分自身が未知の物質オーパーツだのなんだの言われている。

しかし動揺も垣間見せず、極めて冷静を保っていた。まさかプロトスは自身の正体がオーパーツだってことを知っていたのか?

だが今は長考の時間は無いッ! 今目の前に居るのは相棒を狙う敵なのだから!



「お、おうよ、うっしプロトス、相手は二人だがこっちも二人だッ! いくぜ!」



「ゼットぉ、私は何をすればぁ?」



「今まで通りだヒナタ、援護に回って、願わくば"何もするな"俺がカタを付ける。戦いはお前の本能を、いや、俺の桃色の魔術が、いやなんでもない。ゆくぞジャント! オーパーツ・タイプP"プロトス"貰い受けるッ!」



「プロトス! 赤色、炎の鬼神色でいくぜ! あいつに対抗するんだ!」



「うん! ゼットは遠距離にも対応できる、ヒナタとかいう女の子の能力が分からない。ので、警戒しつつ距離を詰めよう!」



ジャントが持つ大剣、つまりは剣に変化したプロトスに炎が灯る。



「鬼神の力で火を灯したか、そして俺への対抗……! だがジャント、お前は勘違いをしている、私が操る能力は……!」



「その宝石からぶっ壊してやるぜ! 火炎斬りィィイイ!!」



次の瞬間、ゼットの赤かったはずの宝石は青く光り、冷凍ビームを出した! その寒さたるや、さながら氷原地帯! 猛烈な吹雪が吹きすさぶようで、ゼットに走り寄るジャントの足が止まる!



「寒ぅ! な、こいつ氷も使ってやがる! だがプロトスは銃にも変形できるぜ、変形させてこの距離から狙い撃つ!」



「氷、だけにあらずッ!」



次の瞬間、ジャントの体に無数の針が突き刺さる! これは氷で形成された針! つまりつらら!

ゼットは氷のビームと同時に水も出しており、その水が瞬時に凍り吹雪の流れに乗ってジャントの体に矢の如く突き刺さったのだ!



「ぐあァア! 氷と水を同時にッ痛ええぇ!」



「俺が操る力は魔術! 突然発現したような能力などという才能に甘えた力ではないッ! 無数の魔道書を読み漁り、独自の研究により手に入れたのがこの魔術ッ! 俺は属性を操る! 短絡思考の能力者では勝ち目無しだッ!!」



「きゃあ、ゼットやっぱり強いですねぇっ♪」



ジャントふっとばされたー!

が、とっさに大剣を地面に突き刺しブレーキをして持ちこたえる。



「ジャント! 平気!?」



「ッちぃ、急所には当たってねぇぜ。苦し紛れだが大剣で防御ができた……が、プロトスを銃に変えた後だったらヤバかったな、もしあの水による時間差攻撃が少しでも遅かったら、な……」



「やはりあの超能力者"レイジ"の仲間……その戦闘センスも納得できるな」



「なに? レイジ……? 聞いたことあるぜその名……! 共にどでかい魔獣を封印する戦いのときに居た妖精を連れた奴だ」



ジャントは思い出していた、過去に壮大な戦いに巻き込まれた事を。魔物の始祖と言えるべきか、この世界の魔物の大多数を操るという巨獣との戦い……。

その際運命なのか、複数の冒険者が偶然にもその場に居合わせた。



「何故ここでレイジの名前が出てくる? 仲間とは言っても俺たちはあの戦いがおわってから解散し、それっきりなんだぞ?」



「ふむなるほど、お前たちは知らないのか、お前ら冒険者達が我々OPTの敵とされているのが」



「まさか僕たち以外の人間も彼らのような能力者に狙われてるってこと!?」



「そういうことだ、なに、雑談なら体を動かしながらでもできる……次の魔法は、土だ!」



そう言い放つとゼットは右腕の宝石を茶色に光らせ、その拳で地面を殴りつける!

次の瞬間、辺りに轟音と振動が響き渡り大地が震撼し、辺りの平地が歪み始めた! 地面を揺るがす、これが土の魔法なのである!



「なっ……まずい! 足場が安定しねぇ! 腕の力がいくらあっても、踏み込めないのではそのパワーはたかがしれてやがる!」



「それが狙いよ! 一方私の魔術は手に持つ武器で攻撃するわけではないッ! "気"を集中すれば発動できるのだからな!」



「気だとぉ! くっそプロトス、とにかく今の状況じゃぁ大剣は使えねぇ! 今の状況を打開するには、軽い武器で頼むぜ!」



「わかった! 今度こそ銃で行こう!」



その言葉通り、銃に変形するプロトス。

しかしながら剣士気取りのジャントは銃の扱いが長けているわけではないし、諸事情で弾数も期待できない。



「って、くそっ! 地面が揺れてるんじゃあ銃も狙い撃てねぇ!」



「ジャント! 落ち着いて、地面に揺られずに銃を撃てる瞬間があるはずだよ!」



「あっ、そうかッ!」



武器を銃に切り替えたジャントとプロトスの様子を表情崩さず見つめるゼット。

彼らが言う瞬間、それは地に足がついてない一瞬! つまりはジャンプ!



「バックジャンプ射撃ィイィイ!!」



その掛け声通り、後ろ方向にジャンプしながらの射撃ッ……掛け声でバラす必要は無いと思うが。



「んっ!?」



ジャントは銃を撃つ瞬間見えたものがあった。

ゼットの右腕の宝石が茶色から"緑色"に光変わっている!



「ぐぁあアッ!!」



銃はたしかにゼットのいる場所に飛んでいた! なのに、そこにゼットはおらず!

鋭い反射神経で飛んで避けただとか、そういうことではない、ゼットは今、ジャントの背後に居るのだから!



「緑色は風の魔法だ……! 覚えておけ……」



そう風! 強靭な風の威力は、ゼットの体を超高速で吹き飛ばし、ジャントの背後まで運ぶ役割を担ったのだ!

そう、言うならばテレポート、ゼットは風の魔法でテレポートを使えるのだ。

それだけではない、ゼットのその右腕がジャントの背中に突き刺さっている。

腕の周りにかまいたちを起こし、彼の拳は切れ味抜群のコークスクリューパンチと化したのだ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る