第3話 アクアフェイト その1
「うわ~、なんか師匠にお使い頼まれちゃったなぁ~」
などと愚痴りながらトコトコ歩いてる少年、髪が青い。名はトシマという。
彼には師匠がいる、その師匠という人物からおつかいを頼まれ、おつかいクエストのごとくとっとこ目的地を目指しているようだ。
「この草原地帯を越えれば、頼まれたものが買える市場にたどり着くなぁ。でもこの道は魔物が出ることがあるから……一応師匠から”携帯式簡易型音爆弾”をいくつか貰っておいたし、これを使えば魔物はびびって逃げてくれるはずっ」
トシマは好戦的じゃなかった、どちらかというと好戦的ではないし、どちらかといわなくても好戦的ではない。
だからこそ、魔物を逃がす音爆弾的な道具を持ち歩いているのだ。
魔物ですらあんまり殺したくはない、平和主義者的な穏やかさみたいな感じを持ったそうゆうかんじの人種なのだった。
「頼む魔物出て来ないでくれェ……」
……言いすぎた、ただ単にトシマ自身大して強くないから闘って怪我するの嫌なだけである。
「ったくぅ、一緒にきたガレンは立ちションするっつってどっか消えたし……なにやってんだか」
ガレンとは、トシマのパートナーのような存在である。しかし離脱中。
「アッ!?」
ふと気付くと目の前に謎の物体が見えた。ぷるぷるとした体質……透けた水色……。
これは、スライム!? RPGとかでしか出ないと思ったら、現実に存在するなんて!
「うわーすごいなーほんとにいたんだスライムって、持って帰ろうかなぁ~、害はなさそうだし!」
ツンツンとスライムらしきものをつつきまくるトシマ。質感が気に入ったようだ、お持ち帰りを試みる。
「あらごめんなさい、それは私の落し物ですから」
「はいィ?」
気づくと目の前に女性が居た。スライムの所有者? RPG的に言うならモンスターを扱う、マスターか?
「えっと、どちらさまでしょうか…」
「その特徴の無い容姿…あなたがトシマでありますか?」
「え? なんで俺の名前を……?」
ふとここでトシマは気づく、今話してる女性…左手になんか…機械のような、なんとも説明しがたい、大砲のような機械を装着している。
更に左腕全体がタコの足のようなモノに絡まれているという、個性溢れる左腕をしているのだ。
「そう…あなたがトシマ…レイジのお仲間、承知しました……あとこれはスライムじゃないです、私が生み出した圧縮された水、あなたを誘き寄せ、引きつける為に置いておきました。いえ、そこは重要事項ではないですね、トシマ、あなたは危険なので生命活動の停止をお願いします」
案の定普通ではない、特殊すぎる言葉の言い回しで認識に時間がかかったが、こいつは俺に”死ね”と言っている。
逃げよう! そうしよう、お使い頼まれてるけど、命って大事だし、逃げよう! トシマはそう思考した。
「おとばくだんだァ~!!」
すかさず、携帯していた音爆弾を使用する! ピカッと眩しく光り、轟音が鳴る!
その隙に逃げ出そうとしたトシマだったが、あまりにも大きい音が鳴るものだから、びっくりして足がもつれすっ転んだ。
一方の女性は、そんなトシマの姿を見るなり溜息をつく。
「最強の能力者の同業者と言うので、淡い期待と不安を身に秘めてみたのですが……どうやら凡人と見てよさそうですね。一応、殺される凡夫の名は記憶に埋葬したいでしょうし、名乗っておきますね、私はレイター・ドゥルーフミッグ」
「うるっせぇぇぇ! 音爆弾うるせぇぇぇ! 耳がーくそぉやられる誰かたすけてー! ガレンー!」
「……この分だと”オーパーツ”を使うまでも無いですね」
「へ? オーパーツ? 何語?」
「英語です」
トシマは素早く起き上がり、女性と目を見合わせる。
オーパーツとはなんぞや、という疑問があるが、まずは相手の殺意をどうにかしなければなるまい。
「と、というか! なんで俺の命なんか狙うんですか!? なんか悪いことしたっていうなら謝るよ?」
レイターは、きょとんとした表情でトシマを見つめながら答える。
「いえ、あなたは特に悪くはないですよ? あなたの知り合いに最強の能力者が居るでしょう? 彼が私たち組織の幹部を再起不能にしたのです。その彼が危険分子と判断されたので、その仲間であるあなたも巻き添えを食らって私に殺される、理解に及ばせるには率直に安易かと」
「って理解できるわけないだろ! 最強の能力者なんて知らないし、俺用事あるから!」
流れでスルーしようとするトシマ、もちろん逃がしてくれるわけも無い。
背を向けて歩き出すトシマを狙って銃かなにかを乱射してくる。
「ちょっ…!?」
たまらず走り出し、背後からの銃弾をかわしつつ岩場に避難する。
「……背後からの銃弾をかわした……?」
レイターは、トシマの意外な身体能力に驚きを見せたが、別段慌てる様子もなかった。
「くっそ、なんでいきなりこんな目に!」
一方トシマは岩の影、相手が銃弾なら物の影、映画でもよく見る常識だ。
「よォ」
と突然トシマは話しかけられた、たまたま隠れた岩場に先客が。
「はァイィ!? ってガレン!? なんでお前ここに!?」
なんと、トシマの相棒ガレン。相棒と言ってしまえばそうなんだが、ひとつ疑問点を挙げるならばこのガレン……どう見ても「犬」である。犬がシャベッテル。犬だから岩に隠れててもトシマがすぐ気づかなかった。
「ヒャハハ、結構前から追いついてたんだがな、なんとなく隠れながらついてきたんだわ。で、お前が女とよろしくやってるから見てたらいきなり撃たれてやがんのな、怒らせたのか?」
このガレン、ちとお調子者な性格のようだ、無邪気というか。トシマをからかうのが生き甲斐のような。
「知らないよ、なんか命狙われてるんだ! どうしたらいい!?」
「知るかバカ、てかあの女、近づいてきてんぞ」
ガレンの言うとおり、レイターという女はトシマを狙って岩場に近づいてきた。
「岩場に隠れましたか、賢明ですね。どうせこれから殺生にも殺す相手にしても意味ないですが、私の能力は水原子の生成と操作。私の方はネタバレしましたよ、トシマ、私はあなたが持つ力が知りたい。背後からの銃弾をかわす、ただの身体能力では説明もつかなきよう、そういう風の事を思います」
「な、なにか言ってる……ガレン、どうするガレン」
「うるせぇくっつくなって、とりあえず逃げるのが先決だろ。この岩、目くらましに使うには丁度いいんじゃあねぇのか? 知らんけど」
ガレンは前足で岩をツンツンとつつき、トシマにアドバイスをする。
岩で目くらまし? 一体何が何やらと思うだろうが、トシマはハッとした表情をし、右手に力を込める。
「では、皮肉にも返答が無いようなので、そろそろ消えてもらいますね」
一方のレイターは謎の機械を装着している左手を、トシマの隠れている岩に狙いを定める。
照準は定まった、後は射出するのみ……かと思いきや、突如爆発が起きる。
「なんですか!?」
岩は砕け土煙があがる、レイターの視界が妨害されている最中、トシマとガレンは逃走する。
何をどうしたか分からないが、トシマは岩を爆発させたのだ、それも木っ端微塵に!
「よし! 上手くいった! 俺の力で岩を炸裂させて壊した! そして煙が上がる! 俺達逃げる! これでFA!」
「テンションおかしくなってんぞ、相当怖かったんだなお前ヒャハハ」
「うるせーガレン! よし、あの森に入り込めばもう安全だ! 銃弾なんてまず当たらない! あの森から逃げればもう安全だ! 銃弾なんてまず当たらない!」
「なぜ2回言ったし」
「大事なことだからァ!」
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