第2話 超能力者レイジ・その戦い 2

「あぁっ……! アリシア!」



急いで駆け寄るとアリシアは額を強く打って少し血が出ていたが、命はあった。しかし気絶してしまっている。



「とある人から聞いたぞ? お前が戦っている理由ってのはその妖精を守るためなんだろ? お前みたいな最強が、そんな小物守って戦ってる~なんて知れ渡ったら恰好のマトでしかないんだよ。ま、戦いを放棄するって事はその妖精がいらないって事でいいんだろ?」



「黙れ」



「しかしアッサリ降参だなんて、お前の株もガタ落ちだな。最強は今日から俺ってワケだ」



「黙れ! さっきのは取り消しだ、お前は殺す」



「あぁ? やってみろよお前の技は出し尽くしてんだろうが……」


アビスが言葉を言い切る前にレイジは目の前から消えた、テレポーテーションだ。

そして出現したのは……アビスの真上!



「なッ、俺の真上に……!?」



そう、重力ならばモノを落下させる力しか持っていない!

つまり上からの攻撃ならば重力が利かないのだ。(むしろ落下速度が上がって威力が増す)

レイジは足先に念動力をかけ威力を高めアビスを蹴り砕こうと試みる。



「フフ、馬鹿め!」



しかしアビスはレイジに向かって何かを腕から放った。

その謎の攻撃により、レイジは吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。ヨロヨロと立ち上がるレイジに、アビスは余裕の表情で言い放つ。



「なぁお前”万有引力”って知ってるか? 月と太陽とか、太陽と地球の間にも万有引力ってあんだよ、その力はずぅっと途切れねぇだろ? 一方俺が今放った技も万有引力みたいに、速攻で発動し相手を吹き飛ばせるって話だ、まぁ重力バリアや重力波ほどの威力はないけどな」



「万有引力……だとォ……!」



「つまりは、俺が操れるのは重力波、重力バリアだけじゃなく、万有引力っていう”範囲の広い念動力”も操れるって訳だ。上から攻めるなんていう、漫画みたいな攻略法は立派だったが知識が浅すぎたな。さっきお前や妖精を吹き飛ばすとき使ったんだがちゃんと見とくんだったなァ」



「ぐッ……自重するべきなのはお前の能力だろ……」



「俺はな、最強の力を手にいれたぜ。お前みたいなシラフの能力者なんざ雑魚でしかねぇ、俺は無敵だ。まぁこれでお前もネタ切れって所だなぁ」



アビスがレイジに迫ろうと一歩迫ったそのとき。足が沼にはまったように動かなくなった。



「ん、なんだ?」



レイジが吹き飛ばされつつ密かに仕掛けていた罠ウィルトラップだ。

念力的な力を一時的にその場にとどめておくことで、罠の役目をする仕組みである。



「かかったな!」



「ハッ、次から次へと新技を……これが漫画で俺が読者なら萎えるぜこんな後出しジャンケン野郎」



超能力、気のエネルギーのさらなる応用編! レイジは肉弾戦で奇襲をかけるように走り出す。重力バリアには、念動力を纏ったぶつりこうげきで対抗できる!



「だがなァ、この程度のワナで俺を倒せるとでも!?」



再び分銅を光らせ両腕から恐ろしい前方範囲を持つ重力波を打ちはなった。罠にかかった瞬間に攻撃体勢に入っていたのだ。



「ぐあぁぁぁぁ……ッ!」



レイジは一歩も動けず、圧死しないように念動力で自身を守るのでいっぱいいっぱいだった。

そして万有引力を受け吹き飛ばされる。



「おお、まだ生きてるとは、タフだな」



ウィルトラップの効果は既に消えていた、アビスを抑え付けるものはもうないのだ。



「レイ……ジ……」



アリシアは目を覚ましていた。そして意識が朦朧とする中、レイジに話しかける。



「アリシア……もうちょっとだけ待っていてくれ」



「無理だよ……レイジ……まだ体力が残っている内に、逃げようよ……」



そのアリシアの言葉を聞かず、レイジはまっすぐアビスを見た。



「そろそろ終わりにしようか……アリシアがお腹空かせてるんだ、町に入れば食堂もある」



「妖精の心配か? それより命の心配をするんだな」



「エクストラ……ビーム!!」



レイジは最後の力を振り絞り、最大出力の超能力光線、必殺のエクストラビームを放った。だが体力の限界からか、その瞬間体勢を崩し、エクストラビームはアビスに当たることなく、レイジの足元の草原に放たれただけであった。



「く、ウハハハ! どうした!? なんだそれは! 笑わせるな!」



アビスが高笑いをあげていると急に足元が光りだす。



「……え?」


巨大な爆発音と共にアビスは足元から出てきた光線にブチ当たる。レイジのエクストラビームだ。外したと見せかけて地面の中で軌道を操り命中させたのだ。その一撃で決着は付いた。



レイジの勝利である。



「……ウィルトラップに引っ掛けたのは接近戦に持ち込む為じゃない。足に念動力がかかるかどうかを見させて貰っただけさ。あの時お前がかかった時点で確信が持てたよ、お前の足元に重力バリアは行き届いてないってな。第一、足元さえ覆う重力のバリアだとしたら、今自分が立ってる地面さえ重圧で崩れるであろうから分かってたけどな、念のためだ」



「グゥゥ……レイジイィィイ……ごばぁ」



「お前はただの能力者、俺は”超能力者”……格が違うんだよ」



アビスに打ち勝ったレイジに駆け寄ってくるアリシア。



「レイジ……すごいっ……やっぱりいちばん最強なんだねレイジが!」



「いや、コイツが勝手に言ってるだけだよ」



アリシアはアビスの方を見た。全身焼け焦げて地面に倒れ、意識は無いようだが生きてはいるようだ。



「手加減したんだね、レイジ」



「してない、地面を掘り堀りしたから威力が落ちたんだよ」



「まあこれで町に入れるな、よーしなんでも奢るぞ!」



「……ほんと!? わーいじゃあたらふく食べようよ!」



レイジの旅は続く。そしてレイジは心の中でふと考えた、ふと嫌な予感がした。



「こいつ……誰か他の人物から俺とアリシアの事を聞いたらしいな。こいつを倒して終わりとは思えない、大きな戦いが待ってる気がするが……気のせいか?」



「レイジ、なにか半年前のことを思い出さない? あの時も大きな戦いがあった、私たち以外にも冒険者が集まったあの日を」



「あぁ。とりあえず今日はこの町の宿屋に泊まろう、町に入らないと魔物が湧いてしょうがないからな」



そしてゆっくりと歩き出し、町の門へと向かう2人。冒険者は彼らだけではない。この世界で……引力が起こりつつあった、能力者というものたちが集まりつつある引力が。


・能力者リスト

レイジ

能力名「超能力」でテレパス、テレポート、念動力、光線を放ち操る


アリシア・アルテイア

能力名「ザ・トゥルースファイヤー」

火を放出し、火球を放つ能力


アビス・エンプティロード

能力名「テールズ・G・アビス」

重力を操る能力

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