26つのオーパーツと異能戦争

真鍋棒

第1話 超能力者レイジ・その戦い 1

半年前。この世界には大きな戦いがあった。らしい。



とある草原を歩く青年が一人。

その後ろを付いてくる、背中に羽根の生えた、妖精のような少女が一匹。

彼らは特に目的も無く、世界横断の旅的な感じで歩いている。



「あっ! レイジ! あれ街じゃない?」



妖精が指をさす方向には、街への入り口である大きな門があった。

長らく遠くからはるばる歩いてきたようである彼ら。そしてレイジと呼ばれた青年は、やっと一息つけると一安心。



「アリシア良かったな、なんか食べたい物とかあるか?」



レイジはどこから稼いできたか分からない小銭と札が入った財布を開き、妖精をアリシアと呼び尋ねる。



「うん! おなかペコペコだよ! 何食べようかな~迷うなぁ」



「ハハ、嬉しそうだな。俺もゆっくりしようかな」



レイジは鞄からちょっと厚めの本を取り出し、表紙を眺めた。



「ん? レイジ、その本なに?」



「あ、いやさっき森で拾ったんだ、街に着いたら読もうと思いまして」



「ん~? 落し物かな?」



……と二人が談笑していると、めのまえからまものがとびだしてきた!

昆虫でいう”蝉”に似ている気がしないでもない魔物である。



「ミーンミーンミーンミンミンミーン!!!」



「うるさ! こいつはここいらの草原に出現するというシケーダミーヤとかいう魔物だったか……」



魔物はここぞとばかりに耳に優しくない騒音を撒き散らしまくる。



「邪魔だよーっ」


そう言うとアリシアは、手のひらから火炎弾を撃ち放つ。炎属性の攻撃、虫系の魔物にはこうかはばつぐんだ!

真っ直ぐ魔物に飛んでいくが、さすがアリシア、魔物であっても無闇に殺さない、わざと急所を外している……いのちだいじにってやつである。



「ファッ!?」



一方火炎弾は魔物の肩にかすっただけであったが、魔物はマジビビリして逃げ出した。



「暑くなってきたからかしらんが魔物がまた湧き出してきたなぁ……あ」


レイジの視線には先ほどの火炎弾が街の門の前で座ってる謎のオトコにぶち当たりそうになっているのが見えた。同様、アリシアにもそれは見える。やっちまった。



「……!」



「あああ!ごめんなさいぃ!」



慌てるアリシアの声などよそに、その男はその場に佇むだけで、よける事などしていなかった。が、しかし火炎弾はナゾのオトコに当たる直前にフッと消え去ってしまった。



「消えた……?」



「え!?」



驚愕するレイジとアリシア。すると謎のオトコは黙って立ち上がり、レイジとアリシアの所へツカツカと歩いてきた。


レイジはさっきの本をカバンにしまいながら謎のオトコに話しかける。



「お前、能力者か? なんにせよ怪我は無いようで良かった、一応謝っとく」



「ごめんね!」



「……妖精を連れている男……お前まさか、レイジか」



「えっ、なんで俺の名を?」



「当然だ、お前の名は知れ渡っている、最強の能力者としてな」



「最強の能力者? 俺がか?」



すると謎の男は何をしたのか、ねっとりと手を動かし、そうするとレイジとアリシアは吹き飛ばされた。



「ぐッ……念力か!?」



レイジは正直”能力者”ということで警戒はしていたので、飛ばされながらも即座にアリシアを抱きかかえ守ることができた。

そして岩にぶつかるレイジ、自身に超能力のひとつ、念動力をかけることによりダメージを抑えた。



「ぐはっ!……なんのまねだ!」



「最強であるお前を倒せば俺が最強だ。俺の名は”アビス・エンプティロード”お前を倒す能力者の名前だ、忘れるな」



「つまり、俺を倒すと?」



「なに、ただ自重してもらうだけだ、死をもってな、ゆえに死ね」



「能力者は皆敵か……なら俺も容赦はしないぞ」



レイジは超能力のひとつ、光線”サイコビーム”を放つ。

相手の能力がなんであるか分からない以上うかつな接近戦は死ぬからだ、遠距離で様子見がてらに攻撃させてもらう。



が、アビスは何も動いてないのに関わらず、光線を消滅させた。



「なにっ!?」



「ほう、噂には聞いていた。能力はひとりひとつまで、しかしお前は念動力で自身を守り、お次は光線。まるで複数の能力を併せ持っているかのような。だが! お前の光線の元素は恐らくは火……光線は熱をもって相手にダメージを与える代物だからな……俺の重力バリアに当たり、元素の存在が優先され、気化を起こし消滅したのだ”土”の元素なら下に”火”の元素なら上に、それが俺の重力操作能力のひとつだ」



「……何を言っている?」



「理解する必要は無い、お前が何を思おうが事実、ここに起こっている現実だからな。では反撃だ、こちらも自重はしない!」



アビスは体に付いている複数の分銅型の装飾品を光らせたかと思うと、右手をゆっくりとレイジに向けた。



「むっ……!」



レイジは即座に、何かが来る! と感づき横に素早く飛び退いた。

……予想は的中、さっきまでレイジの居た背後にあった岩が音を立てて崩れ落ちた。



「俺の重力を操る能力のひとつ、視覚認識不能の”重力波”を避けるとはなかなかやるな」



「く……本気ってわけか、アリシア! 離れていてくれ!」



「あっ……うん!」


アリシアが安全な場所(岩場の影)に非難したのを確認したレイジは、本格的に戦闘体勢に入る。そうして、アビスもまたレイジを見つめ、若干の笑みを浮かべた。



「さあかかってこい、最強を名乗るものよ」



「悪いが名乗った覚えはない、俺はただの超能力者だ!」



レイジは超能力のひとつ、瞬間移動でアビスの視界から消えた。

そして即座に背後に出現し、アビスに狙いを定める。



「次は瞬間移動ときたか……能力の多様性充分! 俺の相手に相応しい!」



レイジの超能力の大元となるエネルギーは、気と呼ばれる、全ての人間生物の内に宿る生命エネルギーである。レイジのように超能力として多面に応用できるほど操れるものはおらず、レイジが唯一と言っていいだろう。


気の強さを熱エネルギーとして放つサイコビーム!

自身を別の場所に転移させるテレポート能力!

相手を浮遊させたり、自分に耐久強化を及ぼす念動力!

相手の気のようすを察知し、善良なこころか悪のこころかを見分けるテレパス能力!



「(今ので分かった、こいつの技は確かに強力だが、発動までのスピードに欠けている。ならば背後から一瞬でカタを付ける!)」



レイジがサイコビームを放つ。だが、死角からの攻撃にも関わらずまたしてもその技は掻き消されてしまった。



「な……!?」



「だぁがぁ! 死角から攻めるなんてだらしねえな!」



驚愕したレイジの隙を突き、アビスは詰め寄り、渾身の蹴りをかます。

直撃し、飛ばされはしたが咄嗟の念動力で威力は最小に保った。



「どうした? 今のが懸命な策か? 残念だが俺の半径1m以内には自動で重力バリアが放たれててなぁ。まあ分かりやすく言えばビームバリアって訳だ、あらゆる光線や属性魔法を分解できる。まあ物理攻撃なら鎧か念力かなにかで防御してないと、重力に体をめちゃくちゃに分解されて死ぬけどな、岩や土さえ砕くぜ」



「……もうお前が最強でいいよ」



「ん? 認めるのか、敗北を」



「はい、お前の勝ちだ良かったな、アリシア行こうか」



すると物陰に隠れていたアリシアが出てきた。

とてもやってやれない戦いだと悟ったのか、レイジはアビスを無視する気満々のようだ。



「クク、そうか、なら、いらないよな”それ”」



突然アビスは自分の横を通り過ぎようとするアリシアに何か能力を使い……。



「うわぁっ!?」



アビスの力でふわりと上空に打ち上げられるアリシア。



「堕ちろ、奈落までな」



更に重力波をかけアリシアを急降下させた。このままでは激突死は免れない速度だ!



「なッ……やめろ!」



咄嗟に念動力をアリシアにかけ、落下速度を低下させたレイジ。

が、アリシアはまあまあの速度で地面に激突した。



「無駄な事を……お前はその妖精を失い、カラッポな道を進んでろ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る