四話 〖真実〗
(お前には、関係ねぇだろ。)
放課後、中庭で寝そべっている柴原の頭に、斎賀の言葉が浮かんだ。頭のいい人と友達になれば、学校生活がより充実出来る……柴原はそう考えていた。けれど、斎賀に断られてしまった。
(何でだろう。僕は、成績悪くは無い。むしろ、いい方だと思うのだけど。自分より頭の悪い人間は、友達じゃない?でもそれじゃあ……。)
――学校で、友達なんて作れないじゃないか。
「おい、柴原!」
「うわぁ!」
考え事をしていた柴原の目の前に、いきなり中澤が顔を出した。柴原は驚いて、体を浮かせた。
「びっくりするなぁ!突然出てこないでよ!」
「ボーッとしてたのお前だろ?ポカリ飲む?」
ケラケラ笑う中澤をジト目で見ながら、柴原はポカリスエットをひったくった。
「何考えてんだよ。」
突然の中澤の重いトーンに、柴原の心臓が跳ねた。斎賀君のことが気になる…と言いたいが、なかなか喉の奥から出てこない。
「……聞きたい?斎賀のこと。」
「ふぇ!?」
心の中を見られたのか?と心配になった柴原だが、これは聞くチャンスだと思い、こくこくと何度も頷いた。中澤が呆れた様に笑った。
「思ってることがバレバレなんだよ、お前は。」
中澤の話を、柴原は真剣に聞くのだった。衝撃的な話だと言うことを知らずに。
背中に重い石を担がされた気分の柴原は、周りに誰かいる気配のしない道を、ゆっくり歩いていた。中澤の言っていたことが、柴原の頭の中をループする。
―――赤西から聞いたんだけどよ。アイツの親さ、その……なんだ、そういうビデオ出る仕事してるんだってさ。なかなか親も帰って来てないみたいだぜ。だからみんな、アイツと距離置いてるって。そりゃあ距離置くよ。だって、そんな仕事してる親を持ってる奴と、一緒に居たくないだろ?
(そういう仕事って、そんなに穢らわしいものなの?)
柴原は、頭を悩ませた。そんな仕事を穢らわしいと、考えたことも無かったからだ。同じことが、頭の中をぐるぐる泳ぐ。
周りを見ずに歩いていた柴原は、濤々誰かにぶつかった。
慌ててぶつかった相手を見た柴原は、青ざめた。相手は、いかにも不良だ。
「おい、お前……どこ見て歩いてんだ?」
「す、すみません。」
「すみませんじゃねぇよ!」
殴られると思った柴原は、思い切り目を瞑った。変な冷や汗が流れてくる。
「やめなさい。」
暗い空間の中で、鈴の音の様な声が聞こえた。柴原は、ゆっくり目を開ける。
そこには、凛とした姿の女性がいた。
「……またあなた達?」
彼女が彼らを睨みつけると、彼らは舌打ちをして逃げていった。柴原は、思わずへたり込む。
「た……助かった。」
「あなた、怪我は無い?」
彼女はそう言って、柴原に手を差し出した。彼女の美しさに、柴原は硬直した。
「は、はい。ありがとうございます。」
柴原が立ち上がったのを見て、彼女はまじまじと見始めた。なんだ?と思った柴原は、首をかしげた。
「ごめんなさい。あなた、聖灑高校の生徒?」
柴原は、自分の制服を見た。
「はい。聖灑高校の一年です。」
「聖灑高校の一年生……。」
彼女は少し考えて、真っ直ぐ柴原を見た。
「少し、時間いいかしら?」
「はい、喜んで!」
柴原は内心、ラッキーだと思った。綺麗な女性に誘われるのは、男にとって悪いことじゃない。
「私は、赤瀬雫よ。」
「僕は、柴原春馬といいます。」
柴原は、ウキウキしながら赤瀬について行った。
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