3月の帰り道

一人で帰る帰り道

当たり前のように暗くなって

それでも日は長くなって

夕暮れに哀愁を感じていて


車たちは無言で帰っていく

光の列は何処までも続く

ワンセグでお気に入りの番組でも見ているのだろうか

いつも通う道には不釣合いなカーナビたち


深い深い群青の空

まだ生まれない物語を妄想して

まだ道は半分残っている

灯りたちが自己主張を始める


田舎道を走ろう

信号のない道を

くねくね曲がった細い道

自前のライトだけが道を照らすよ


すうっとすうっと細い風が

僕の体にまとわりついてきて

ただ意味もなく空を見上げてみたくなる

小さい星たちが懸命に輝いている


こんな時間に元気なのは

コンビニと

電信柱と

自動販売機と

どこかに潜むねこたちと


いつもいつもいつもの道を

朝と晩に行ったり来たり

耳にはお気に入りの音楽を遊ばせて

目には季節の風景を運ばせて


道中色々考えているよ

考えてはいるけれど

思いつくのは割とどうでもいい事ばかり

つまりそれは家にたどり着くまでの暇つぶし


天と地は繋がって

ここから先は夜行性の領分です

ようやく家の灯りが近付きました

振り返るとやさしい月が笑っていました

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