海を目指して

とうとうと流れる川の流れに

心の笹舟を流してみよう

自然はゆっくりと上流から下流へ

なだらかに景色を泳がせて


深い深い山の奥

産まれたばかりの湧き水が

やがてはひとつの流れとなって

遥か彼方を目指します


深い木々と大きな石たちに囲まれて

旅立ちはまるでひとつの儀式のように

ひとつの純粋な流れは自然の法則にしたがって

低い方へ 低い方へ 少しずつその場を削りながら


小さな流れたちは集まっていく

少しずつ流れもゆるくなってくる

小魚たちが僕の中で遊ぶよ

蝶々が僕の上でひらひらり


大きくなった僕らは不意に落とされる

水しぶきを上げて更に下がっていく

いつの間にか周りをコンクリートで固められていた

やさしい大地に触れられなくなって淋しい


ぷかぷか ぷかぷか

ああ なんてやわらかい一日だろう

ひざしが世界をまあるく抱きしめている

風はこの流れと共にある


空から降りてきた僕らの旅も

後もう少しでクライマックスを迎えるよ

大きな大きなあの母なる海へ

大いなるひとつと繋がるために


仲間が次々と集まってくる

やあ みんなお互いに初めましてだね

工場や家々からの排水も集まってくる

ご苦労様、お役目とは言え大変でしたね


土手沿いに咲く沢山の花々

まるで僕らの帰還を歓迎してくれているみたい

有難う また僕らは戻ってきたよ

花たちは風に揺られて手を振ってくれている


流れはますますゆるくなる

川幅は広がってやがて潮風も届いてく

いつの間にか蝶々たちから海鳥に変わってる

川の長い旅はもうすぐ終わりを告げる


そうして次は大海原の旅が始まるのだ

さあ今度は七つの海を制覇しようじゃないか

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