幻を探して

毎日なだらかに過ぎるように

ナメクジの歩みの中で一人

どこか遠い所を見ていた

幻のように遠い風景は

やはりどこか現実感に乏しかった


もう人はどこにでも住んでいるから

あの景色の向こう側にも普通に

当たり前の生活をしている人々が居る

当たり前のドラマを日々繰り返している

遠い存在も近い存在も同じように


海の向こうでは知らない言葉が話されている

文化も風習も気候風土も違う

バベルの頃の昔はそれでも同じ言葉が話されていたのか

同じ言葉と言う事は同じ文明だったのか

しかしDNA的には人はどの人もそれほど差異はなく

だから基本的に人は誰とも交わる事が出来る


遠い遠い昔

まだ世界がひとつだった頃

それぞれの文明がまだ純粋だった頃

きっと些細な争いはあっただろうけれど

今よりずっと世界は楽園だっただろうね

あの空や海や山と同じくらいに

美しい社会が築かれていたんだろうね


遠い遠い景色に幻想を想う

理想の楽園がどこかに在るんじゃないかって

けれどもどこまで行ってもそこにあるのは

地に足のついた当たり前の現実

自分に足りないまま探しても

結局足りない事実がそこで分かるだけ


舟をこいで新天地を求めたり

山を越えて新天地を求めたり

いつの間にか地球の隅々にまで人は広がった

それで足りないものは見つかったのかな

今でも人はただ求め続けてばかり

山を削り海を汚してもまだ


遠い遠い幻の景色

見ているのは本当はここじゃないどこか

もしかしてそれは産まれる前の原風景

もしかしてそれは心の中にのみ存在する心象風景

手の届かないものに人は理想を重ねてしまうから


どの景色にも共通するもの

それは

青い空と

白い雲と

青い海と

緑の山と

ゆっくり漂う静寂の時間

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