つつつつつつ指先でなぞる

木の質感を味わってみる

優しい優しい息吹を感じます

もうとっくに命を失った

大黒柱となった大きな木

家の中心にしっかりと鎮まり

雨風をしのぎ

長い年月に耐え

未だその衰えを知らず

戦災を乗り越え

震災を乗り切り

台風をやり過ごして

幾年月を穏やかに過ごしてきた

百年以上前からここに在る

産まれる前からここに在る

一族の歴史が刻まれている

これからもまだまだ現役で

毎朝この玄関から出て

毎晩この玄関へと帰る

ずっとずっと繰り返す風景

ただ季節だけが律儀に移り変わり行く

この家が僕は大好きだ

風格を感じさせるこの家が

百年前は地域で一番大きな家だった

住所を説明するのにあそこで一番大きな家で通じてた

今は他に立派な家が増えてあんまり目立たないけれど

立派な立派な大黒柱

これからもこの家を支えておくれ

そしてこの頼りない僕も支えておくれ

この家にいる限りいつか僕も立派になれると思うから

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