第78話:前回の反省など
前回は何やら悲観的なことを書いてしまったが、急にもらう現金百万円と、急にもらう商品百万円分を比較すれば、前者の方が自由度が高いのでそれは良いに決まっている。
つまり、食べ物でも洋服でも車でも「いきなり現物」で百万円相当の商品ならそりゃ迷惑だわな、というだけの話であった。小説をそこに当てはめて悪者扱いしたら、そりゃちょっと無理があるよな、と公開した後で気づいたのだが、今さら消すわけにもいかないのでそのままにしておく。
極論ではあるが、思考実験として「現物で百万円分の書籍(小説)」を貰ってもさほど嬉しくない、という図は頭に置いておきたいという気もするので。
ただ、後半の「本と読者のマッチングが上手くいっていない」という点はどうなのだろうか。これもまた長らく考えているのだが、難しい問題である。本来は信頼すべき定番的なガイド本があったり、有名なガイド役が大勢いたりしてもおかしくない筈なのに、なぜかそこのポジションは不在で、需要があるはずなのに空席になっている。
たとえば図書館が各市町村に普及していない国から見れば、日本は天国のようなもので、あちらこちらに図書館がある。それが普通である。どの図書館にも「日本文学全集」「世界文学全集」ほか、個人全集やテーマ別の選集が当たり前のようにある。しかし、まーったく読まれていないし、読ませようという工夫すらない。
私が思うに、文学全集数十巻をただ置いておけば誰かが読むだろう、という態度は「読まなくてもいいです。これはただ、文句が来ないように置いておくだけのものですから」というメッセージを発しているのとほぼ同じである。何しろ全集どころか、一冊の本すら読み通せないという人がかなり多くいるほどなので、もはやその存在すら知られていないと言っても過言ではない。しかし、歴代の多くの作家のうち、ごくごく一握りの優れた作家がいて、そのまた多くの著作の中から選りすぐった、ベストの中のベスト作品集なのだから実にもったいない話である。
本当に読者と本との間の橋渡しを意識して「読ませたい」と考えた場合、何ができるのだろうか。それを本格的に考え始めると「創作論のメモ」とは離れてくるので、そのうち読書をテーマにしたエッセーなどの枠を作って、あらためて考えてみたい。
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