第65話:「と言う」と「という」の使い分け

 カクヨムの中でいろいろな小説を読んでいて「と言う」と「という」の使い分けがちょっとおかしい、と感じるような文章が目についたので、調べてみた。

 あるブログの記事から一部のみ引用する(注)。


 ↓



 *「言う」=思ったことを言葉で表わしたり、述べたりする場合に使う(実際に誰かがしゃべっている)。


 例)Aさんは「~」と言う/彼が言うには/言いたいことを言う/はっきり言って etc.



 *「いう」=「言う」の実質的な意味が薄れた場合に使う(誰かがしゃべっているのではなく、伝聞や比喩的な言い回し)。


 例)Aさんという人/あっという間に/そういうことだ/いざというとき/そういえば/~というわけだ/どちらかといえば etc.



 ↑


 前者の最初の三つの例は、ほぼ誰も間違えないのではないかと思う。ただし、最後の「言って」を「いって」にしているケースは結構ある。


「はっきりいって◎◎◎なのです」


 のように。これはこれで誤用とまでは感じられない。


「はっきり言ってこれは天災ではなく、人災なのです」

「はっきりいってこれは天災ではなく、人災なのです」


 このように例文を考えて比べてみると、どちらも一長一短である。迷うようであれば「はっきり言って」「はっきりいって」のどちらも避けつつ、二つの文に分けてもよいのではと思う。


「はっきり申しあげます。これは天災ではなく、人災なのです」

「責任者として断言いたしますが、今回の損害は天災によるものではありません。人災なのです」


 この辺りの書き分けは小説そのものの性質(シリアスなSFか、笑いの要素の大きいショートショートかなど)にもよるので、一概には決められない。



 次に、後者の「という」の例を片っ端から「と言う」にしているケースは、読み手としてはほとんどのケースで違和感を持つ。

 実際に「と言う」に書き直してみる。


「Aさんと言う人」

「あっと言う間に」

「そう言うことだ」

「いざと言うとき」

「そう言えば」

「~と言うわけだ」

「どちらかと言えば」


 おそらく自動的に変換されているので、書いている方も気づかずに流しているのだろう。


 ただし「あっと言う間に」は、ややグレーゾーンではないかという気もする。実際に「あっ!」と言っている訳ではないが、一種の誇張的な表現なので。


 また最後の「どちらかと言えば」は、このように書いても他の例よりは違和感が少ない。


「A方式かB方式か、どちらかと言えばB方式が望ましい」


 といった具体的な例文を考えてみても、誤用とまでは思えないので、これは自分でも書くか、既に書いているかもしれない。


 とりあえず、おおむね上記の例には賛成である。気になる人は、「言う(=何かを発言している)」ことが明白な最初の三つの例の他は、ほとんど常に「という」を選んでおくのが無難な選択かと思う。



(注)『記者ハンドブック 第12版 新聞用字用語集』からの引用ということで、解説してある記事の引用部分をそのまま引用しました。

 http://jaggyboss.jugem.cc/?eid=2727

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