第4話 G対策課とノリ

ハサギ「とりあえずここは何処なんだ?」


 ハサギはキョロキョロと部屋を見回す。

 だが明かりがついてないせいで真っ暗だ。

 床に何があるのかも分からない。

 唯一、ペンシの白いスーツがぼんやり見えるだけだ。


ペンシ「実は君に話しがあってな。それで任意同行させて貰ったのだが」

ハサギ「あれのどこが任意同行なんだ?

俺は無理矢理引っ張られて」


バキィ!


ハサギ「指!指が全部変な方向にイイイイ!!」

ペンシ「任意同行させて貰ったのだ!

分かったな?」


 最後の台詞は女性の声とは思えない程凄みがあった。 ハサギは苛々半分諦め半分でペコペコと頭を下げる。


「…そろそろ俺も話しに加わって良いか?」


 二人しかいないと思われた部屋に、第三者の声が響く。 二人が振り返ると、そこにはサングラスをかけたの男性が立っていた。


「俺の名前はケシゴ。G対策課のケシゴだ。

君はハサギだな?」

ハサギ「あ、ああ・・G対策課?

 なんだそれ」

ケシゴ「G対策課とは、

能力者の犯罪者を取り締まる為に新しく作られた課だ。

今の所、メンバーは俺とペンシの二人だけだ」

ハサギ「まるで特殊部隊のような、ゲリラのような小数精鋭の課だな、そんなエリートが俺に何の話しを?」


 ハサギはジロッとケシゴを睨みつける。

ケシゴはまるで仮面のように無表情のまま、


ケシゴ「君が昨夜逃したゴブリンズの事だがな」

ケシゴ「あいつらが盗んだデータの中に、Gチップの設計図に関わるデータがあったんだ」

ハサギ「Gチップの設計図?」


 ハサギの目の色が変わる。

 Gチップは世界中の人の体内に存在するが、その設計図を知る事は最大級のタブーとされている。もし悪人の手に渡れば、どんな悪用をされるか分からないからだ。


ケシゴ「ゴブリンズは現在に生きる義賊だ。

派手なパフォーマンスで民衆の興味を沸かし、不正企業から金を盗み、しかもその金をあらゆる福祉施設に寄付している。

まるでルパンのような奴らだ」

ハサギ「一つ抜けてるぜ。

奴らは何故か不正を働いた人物の枕を盗む」


 ハサギの指摘にケシゴは表情を変えず話を続ける。


ケシゴ「彼等が設計図に関わるデータを盗んだ以上、能力者を取り締まる我々も動かなくてはいけない。

だが我々はゴブリンズの事を良く分からない。

そこで相談なんだが…」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「は、ハサギさん!?

それ本気ッスか!?」

ハサギ「ノリ。声がデカイぞ」

ノリ「あ、す、すいませんッス……」


 ノリはハッと気付き辺りを見渡す。

 昼食時間の食堂の中は雑談や仕事の話しが入り混じり、誰もノリの大声を気にはしていなかった。

 だが背の低い童顔のノリは声を潜めて

 テーブルの向こうに座っている顔が晴れ上がった男性ハサギに話しかける。


ノリ「ハサギさん、本当にその胡散臭いG対策課に移っちゃうんスか?

そのゴブリンズを捕まえる為に」

ハサギ「本当だよ。さっきの話の続きだがな・・」



ケシゴ「そこで相談なんだが、君、G対策課に来ないか?」

ハサギ「俺が、G対策課に?」

ケシゴ「ああ、君はゴブリンズに対しての経験、知識が豊富だ。

そして俺達は能力者を取り締まるエキスパート。

君の力と俺達の力が合わされば、ゴブリンズをあっという間に捕まえる事が出来る。」

ハサギ「…そうだな。

お前の実力は知らないが、あいつらを捕まえる為ならワラだって使わないと」

ケシゴ「俺達はワラか…」

ハサギ「乗った!

俺をG対策課に行かせてくれ!」


バッキャア!


ハサギはペンシに殴られた。 良い音がするなーと思いながらハサギは痛みに耐える。


ペンシ「敬語を使えこの馬鹿者!!」

ハサギ「が、がは、顔面…」

ケシゴ「言い忘れてたが、

ペンシのパンチには気を付けろ。

そいつのパンチで課を辞めた人間は多いからな。」

ハサギ「ひでぇな…」

ケシゴ「こちらの仕事は危険が常につきまとうからな、これくらいの緊張が無ければつとまらん」




ハサギ「そんな感じでな」

ノリ「だからそんなに顔がふくれてるんスね。

アンパンマンみたいッス」

ハサギ「他の奴らには言うなよ」


ハサギはスープを飲みながら答えた。


ノリ「そんな危ない課に入るんスか?」

ハサギ「…ゴブリンズは犯罪者とはいえ人だ。普通の人間だ。

 アレがGチップの設計図なんて危険なブツに手を出すようになったのは俺が捕まえられなかったからだ」


ハサギのスプーンも皿も持ってない左手を強く握りしめる。


ハサギ「だからあいつらは俺がこの手で捕まえたいんだよ…それが俺なりのけじめなんだ」

ノリ「ハサギさん…」


しばらく二人は黙り、食堂の喧騒が二人を包んだ。スープが無くなりかけた所でハサギが切り出す。


ハサギ「ノリ、俺と一緒に来てくれないか?」

ノリ「え?」

ハサギ「あいつらはどうも信用出来ない。

その点お前がいると色々とありがたいんだが……大丈夫か?」


ノリ「全然大丈夫ッス!

喜んでついていくッスよ!」


 ノリはニコッと笑みを見せる。

 ハサギもつられて笑顔を見せた。

 こうして、ハサギとノリはG対策課に所属する事となった。

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