第3話 ゴブリンズ
アイ「カンパ〜イ!」
シティ&スス&ルトー&ダンク「「「「イエ〜〜〜イ!!」」」」
ここはゴブリンズ・アジトの食堂。
100人近くが収納出来る大きな食堂で、たった五人の小グループが乾杯をしていた。
彼等は現在に生きる義賊、ゴブリンズ。
そのリーダー格である『氷鬼』アイが乾杯しながら皆を労る。
その姿は背の高い日本人の男性で特有の黒髪に黒い瞳で、両腕は銀色の義腕だがその手でジョッキを持っている。
アイ「みんなお疲れさん!
今回も金をせしめたし、不正企業を摘発したぜ〜!
そしてまた、悪人の枕を盗んだ!!」
全員「ヒューヒュー!」
ルトー「それはこの僕、ルトーのおかげだぞー!皆僕を褒めろー!」
全員「ヤンヤヤンヤ!」
小さな体を精一杯のけ反らせて威張っているのは、『隠れ鬼』のルトーだ。
背の低い少年で、オレンジのニット帽をかぶり、青いジーンズには工具が幾つも入っている。
ちなみに飲んでいるのはオレンジジュースなのだが、何故か顔が真っ赤だ。
スス「私の斬撃も凄いわよ〜!」
そういって前に出たのは褐色肌の女性、『ごっこ鬼』のススだ。
髪は短い黒髪で瞳の色は綺麗な水色だが、右手に持っている銀のナイフを格好よく振り回しポーズをとる様は男の子のように見えなくもない。
全員「お〜!!ニンジャ〜!!」
スス「ニンニ〜ン!」
負けてはいられないと飛び出したのは中身が無い包帯で出来た人間、『色鬼』のダンクだ。
ダンク「ビルにイカしたペイントしたのは俺だ〜!!」
アイ「よっ!芸術家!」
シティ「私は皆をここまで優しくエスコートしたわ!」
全員「・・・」
一瞬で重たい沈黙が部屋を支配する。
キョロキョロと驚きながら辺りを伺う灰色の服を着た二十代前半の女性は、『高鬼』シティ。
シティ「あ、あれ?皆、どうしたの?」
ルトー「いや、確かにエスコートしてくれたけど」
スス「あの速度は優しくなかったわ」
ダンク「あれはどちらかというと安全ベルト無しのジェットコースターだな。」
三人がぶるると震えながら話す。
何故なら電柱にはシートベルトもシートもないため、皆落ちないよう必死にしがみついていたのだ。
シティ「えー。あのスピードが良いのに」
アイ「ま、それはともかく皆良くやったよ」
全員「「「「そういうアイは一体何をしたんだ?」」」」
シティの話をアイが遮ると、全員がつっこみを入れる。
先程の件ではアイは何もしてない。
ススと一緒に逃げただけだ。
そのススは一緒に行く必要がないのにと小さく呟いている。しかしアイの表情はニコニコと笑みを崩さない。
アイ「フッフッフ。
これを見よ!」
そういってアイは皆に小さな物体を見せる。
それは小さなUSBだった。 銀色の掌に収まるそれは新品のように綺麗だ。
スス「何これ?」
アイ「今から六十年前、2009年の安物USBだ。
俺はこれが欲しかったんだよ」
アイはニヤニヤと笑っている。
対して皆はキョトンとしている。
ルトー「それには何が入っているの?」
シティ「あの会社の悪事?社長の恥ずかしい写真?」
アイ「ノンノン。これはあの会社の秘密でもあり世界の秘密でもある。
・・Gチップの秘密さ」
ダンク「Gチップ!?」
ダンクが思わず立ち上がる。
Gチップは世界に革命をもたらしたチップである。
そしてこのチップを応用すれば人の能力を自由にコントロール出来る可能性はある。
その為にそれを世界中の組織が欲しがっているのだが、 政府はこのGチップの研究を然るべき機関以外が所持するのを固く禁止し、
今ではそのチップの設計図のありかを知っているのは世界でもトップクラスの存在だけなのだ。
ルトー「そのGチップの秘密がその安物USBに入ってるの?
それ、信頼できる筋からの情報?」
アイ「ああ。
あの社長の隠しブログに書かれていた。
この情報をGチップの機関に高値で売るつもりだったらしいが、この俺様の目に入っちまったらどうしようもないわけだ」
アイは嬉しそうに掌のUSBを見つめる。
アイ「これさえあれば」
スス「Gチップの秘密が分かるのね?」
アイ「いや、違う。
これがあればGチップの秘密を見つける為の手掛かりを得る為の手掛かりが分かる訳だ」
シティ「手掛かりを見つける為の手掛かり?
何て面倒臭い・・」
シティが呆れた声を出すが、 アイの表情はイキイキとしている。
アイ「それでもこれは大収穫なんだ。
ここからGチップの秘密にたどり着くヒントのヒントを得られる・・。
これは正に、秘密の駅に辿り着くための切符なんだよ」
スス「リーダー、例えがよく分からないわよ」
そう言いながらアイは立ち上がり、扉に向かう。 しかしそれにルトーがついてきた。
アイ「俺はこれからこいつを解析してくる。
わかり次第、また来るぜ」
ルトー「手伝おうか?」
アイ「おっ、嬉しいねぇ」
二人は嬉しそうに話ながら食堂を離れ、扉を閉めていった。
時を同じくして、警察署内、某所。
ハサギが扉を開くと真っ暗な部屋の中には二人の人間がいた。
一人は白いスーツを着こなした黒い服の女性で、もう一人は古いコートにボサボサの黒髪の男性だ。
「ハサギ、聞こえるか」
ハサギ「ペンシさん、こんな近くにいりゃ聞こえるに決まって痛ァ!」
バキィィ!
ハサギは思い切り顔面を殴られた。
いきなり女性に顔面を殴られて、目を白黒させながらペンシに顔を向ける。
ハサギ「いてぇっ!何するんだ!」
ペンシ「馬鹿者!
貴様は『はいペンシ様』の一言も言えないのか!!
さっさと言え馬鹿者!」
突然殴り付け、突然怒りのままに暴言を吐く女性にハサギは殴られた顔をさすりながら静かに言われた通りにする。
ハサギ「…はいペンシ様」
ペンシ「よおし覚えたな!?
覚えたら二度と言うな馬鹿者!!」
ハサギ「はいペンシ様」(何なんだこいつは…)
ハサギは殴られた頬に触り傷を確認する。
よほど強く殴られたようで腫れ上がっているのが分かる。
彼は心の中で溜息をつき、再度女性に目を向ける。
女性は両手を腰に当て、いかにも『偉そうな人』の態度でこちらを睨み付けていた。
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