第55話 洋刀
イオリ達が、左の廊下を進んで行くと廊下に引戸があった。
「なんだ廊下に引戸があるなんて何かの検知的な役目をしているのかな」
もはや大騒ぎをしているイオリ達にとっては今更見付かろうが関係ないのだ。
イオリは、勢い良く戸を開け放った。ガラリ
「なっ⁉︎」
イオリは驚いた、そこにはまた引戸があったのだ。
「おいっ、なんだ」
そう言いながらまた引戸を開けた。
「はあ?」
また、引戸だ。
「うおおおおおおおおおーーーーーっ」
イオリが引戸を開けるとまた引戸がある、この繰り返しが、既に20回程続いている。
イオリは、戸を開けまくった、もはや敵の事など考えてはいない。40回程この作業は続きようやく最後の戸を開け放つと何とも言えない充実感に満ち溢れた。
「や、やったぞユリネ!」
「いえ、まだ何もやってませんよ、ポンコ……イオリ様」
「ユリネ、お前今何て言おうとした⁉︎」
「イオリ様、見て下さい。何やら前から破廉恥極まりないのがやって来ますよ」
零度は、元々『長姫』と言う名の姫君だ、下品なものには嫌悪感を示すのは当然だ。しかし前からやって来たものは、イオリ達の予想をも超えていたのだ。
「あら、曲者が女の子だけなんてつまらないわね」
そう口を開いた敵の姿は、ハイレグのボンテージ姿に身を包みハイヒールブーツを履いた男だった、男だったのだ。
イオリは、なぜか身の危険を感じ背中に嫌な汗が流れるのを感じた。
「今までで一番の強敵かも知れない……」
イオリがぼそりと呟いた。
「おふたりは、引っ込んでてもらえますか」
ユリネは、使い物にならないふたりを見て後ろに下がらせた。
「「よ、よろしくお願いします。ユリネさん」」
「ふふふっ、あなたがあたしの相手をしてくれるのかしら、あまり強そうに見えないけれど」
ボンテージ男は、へらへら笑った。
" 霧風 "
ユリネは、答えもせず秘剣を放った。
カマイタチの様な斬撃がボンテージ男のロン毛を切り裂いた。オカッパの様になった髪型がさらに気持ち悪さを引き立てた。
その事に怯えるイオリと零度
「次は、髪の毛だけではすみませんから」
ユリネの言葉は、ボンテージ男の怒りを煽った。
「随分生意気な子ね。殺しちゃおうかしら」
ボンテージ男の剣は、フェンシングのフルーレの形状をしておりどうやらユリネと同じ高速の剣を得意とするタイプの様だ。決して相性は、良くないのだが、それは相手にとっても言える事なのだ。
" スピード勝負 "
ボンテージ男は、剣を真っ直ぐに突き出した。
残像が残る速さでそれを繰り返す、見た目とは、裏腹にかなりの使い手である事がわかった。
ユリネも同じくその剣の軌跡を見切り弾いて行く。
「なあ零度っ、あの剣は妖刀なのか?」
「イオリ様、あの剣は洋刀の妖刀みたいですね」
「そうなのかー」
「あら、今日はツッコミ無しなんですね」
「ああ、気力が出ないし女装も解除出来ないし、ユリネに任せるしかないな」
「あの下品な方は、かなりの使い手の様ですけど心配ではないんですか?」
「ああ、ユリネは凄く強いんだよ、あいつは本当に天才なんだよ」
「随分と信頼なさっているのですね。本当に嫉妬してしまいそうですわ。でもあの下品な方がロイド化してしまったらいくらユリネさんでも危険ではないでしょうか」
零度の言葉にイオリはニヤリと笑った。
「実は、それが見たいんだよね」
イオリは迷っていたのだ、果たしてこの戦いにユリネを巻き込んで良いものかどうか、もしここでその可否が明確になるのであれば、いやユリネが戦力としての立ち位置を示してくれるのであればこんなに心強い事は、ないのだ。
ユリネは、イオリの言葉が聞こえたのかどうか定かではないのだがこんな事を言い出した。
「イオリ様、例の秘剣お見せしましょう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます