第20話 混迷

 剣技と魔力それらを織り交ぜることで生まれる力は、新しいシナジーを生み出す。

 妖刀は、まさにその力を生み出すための最も優れた媒体なのだ。


 しかしたいていの人間は、魔の力に呑まれ破滅へと収束に向かう。

 まれに超越せし人間が妖刀を持ったならばそれは聖剣となるであろう。


 と、おじいちゃんが酔っ払って言ってた事があるんだよとミツキは、なにげなく言った。

 結構重要そうな話に思えるが、まったく台無しだ。


 討伐の作戦が開始され今は待機中の俺とミツキだったが時間を持て余したミツキがふとそんな事を言い出したのだ。


「つまり、あると思うんだあたしは……」

「何がだ?」

「かくされた力があると思うんだ、妖刀には」

「俺がさらに鬼らしくなるって事か」

「違うよ。あたしが言っているのは、敵の話だよ。もし覚醒した妖刀使いが現れたら……その……心配だから……」

「ふっ、心配するなよミツキ。俺は、まだまだ強くなる予定だからさ」


 クダンから発煙筒での合図があった。妖魔つきを見つけたようだ。

 そう遠くはない!


 俺とミツキは急いで山を駆け上った。


 もう少しだ、俺が思った瞬間だった。

 "ザガガッ"

 斬撃が俺たちの行く手を阻んだ。

 地面が一直線に切り裂かれたのだ。


 驚いて斬撃の飛んで来た方向を見ると一人の男が立っていた。

 その男は、隻眼の剣士だった。


「ハルマか!」

「こんな所で会うとは奇遇だな」

 ハルマは、ニヤリと笑った。


「どうしてお前がここにいるのかわからないが今は、お前に構っている時間はないんだよ」


「そいつは、奇遇だな。俺もさるお方のご命令で仕事をしに来てるもんでね」


「仕事だって⁉︎」


「ああ、ヨシツネ殿。いやイオリ殿だったかな、この山にいる者を全て切れと言うのが俺の仕事なんだよ」ハルマは、剣を構えた。


 俺は、背中の長剣を抜いて言った。

「ジイさんの剣使わせてもらうぞ」ミツキは頷いた。


「ハルマ、悪いが一瞬だ!」

「貴様がな!」

 俺とハルマは、お互いに駆け寄った。剣が交わり火花を散らした瞬間、ハルマの脇腹から血が噴き出した。

「バ、バカな一体何が……」

「秘剣 "霧風"」ユリネの技だ。


 そのまま、ハルマは地面に横たわって動かなくなった。


 俺は剣をサヤに収めるとミツキとともにクダンの元に急いだ。


 ようやくユリネとクダンの所にたどり着いた時には、すでに妖魔つきは、姿を現しており、白い巨大な熊の姿がそこにあった。


 クダンは、結界を張り巨熊を閉じ込めようとしていた。

「このまま結界を閉じて消滅させます」とクダンが言った時だった。


 またも斬撃が襲った。


「あれは、ハルマか⁉︎」

 倒したはずのハルマがいた。

 いや、正確にはハルマではなく鬼がいたのだった。


「妖刀使いか、こりゃあ意外としんどいな」俺の言葉にミツキは黙って頷いた。

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