第19話 潜伏
「イオリっ、何であたしたちはこんなにコソコソ行かないといけないの」ミツキが文句を言った。
「ヒーローは、突然登場するからカッコ良いんだろ。」
コソコソしている時点でカッコ悪いだろうとミツキは思った。
俺とミツキは結界を張る予定である山の中腹辺りより少し上を目指して進んでいた。
もちろん佐々木の屋敷の人間を避けるためだ。
そして、なるべく暗くなる前に移動したいのだ。夕方になれば妖魔つきに合わないという保証も無いからだ。
屋敷ではユリネが皆に指示を出していた。師範代の桜井が前回の討伐で大怪我をしたからだ。
クダンの要請もあり今回の指揮は、ユリネが任されたのだった。
「霊符の貼り付けは、3人1組でおこなうこと。合図は、発光弾でおこなうものとする。万が一妖魔つきに出会った場合は、呼び笛で合図し退避する事、以上」
屋敷の猛者たちは、緊張しながらも「おおーっ」と叫び声を上げた。
その頃、目標としていた地点まで登りつめたイオリとミツキは、お弁当を食べていた。
「山で食べる、お弁当はおいしいね。」
「ミツキ、遠足じゃないんだぞ」
「だけど今ピリピリしてたら疲れるだけだよ、イオリは、もしもの時は倒す自信あるんでしょっ」
「妖刀を使えばな。でも今回は、できれば使いたくないんだ」
「ユリネさんがいるからかぁ、それもそうだよね」
ミツキは、こういう事によく気が付く奴なのだ
俺は、全く別の話をした。
「ミツキはいつもそのペンダントをしているな」
「ああ、これねっ」
ミツキは懐からペンダントを取り出した。表面に何か陣の様な模様が描いてあった。
「これは母さんの形見なんだよ。
昔、宮中で巫女をしていたらしいんだ。その時、誰かからもらったものらしいよ。」
「そうか俺もお袋の形見があるんだ」そう言ってイオリは小さい皮袋を出した。中には水晶の様な玉が入っていた。中には何か文字が描いてあった。
「えっ、イオリもお母さんいないの?」ミツキにはその事の方が気になったようだ。
「ああ、ルリを産んですぐにな」
ミツキは何か考えていたが
「だからユリネさんがお母さんに……」おいっ!さすがにそれは殺されるぞ
「小娘!誰がお母さんだってっ!」ユリネが現れた。
「ええーっと」ミツキは、恐ろしいほど挙動が怪しくなった。
「心配で先に来てみれば、まったく放っておくとあなた方は、ロクな話をしないですね。」
「「す、すいませんでした」」
俺とミツキは、声を揃えた。
ユリネと共にクダンも現れた
俺は、今回の段取りを整えてくれたクダンに礼を言った。
「イオリ殿には、ヨシツネの件でお世話になりましたご恩があります。少しでもお返し出来るようなら幸いです」
「ユリネ殿、そろそろ時間でしょうか」クダンが言った。
「はい、なにぶん宜しく御願いします」
そう言ってユリネは、発光弾を打ち上げた。
それは妖魔つき討伐開始の合図だった。
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