第18話 故郷


 ルリとユリネは佐々木家の屋敷の門に立っていた。もちろん霊界師のクダンも一緒だ。


「ユリネです、ただいま戻りました」門が開き3人は、屋敷の中に入った。

 奥の座敷で佐々木ソウゲンが待っていた。

「ルリ、ユリネこの度は、ご苦労だったな。無事に戻り嬉しく思うぞ。」

「はい、宮中より小村丸先生をご紹介頂き門下の方にお力添えを頂ける事になりました。こちらのクダン様がそのお方でございます。」


「霊界師のクダンでございます。我師小村丸よりこの度の件、全力で務めるよう申しつかっております。」


「クダン殿、今回のご支援誠に感謝致します。妖魔つきにはすでに多くの犠牲が出ております。何度も討伐を試みたのですが、我々の剣では傷つける事も叶いませんでした。郷の平穏を取り戻す為、どうぞお力をお貸し下さい。」


 ユリネは、ソウゲンの気弱な発言に驚いていた。イオリを叱責していた頃の自信はどこに言ってしまったのだろうか。


 さっそく屋敷では、討伐の為の作戦を立てる事になった。クダンの提案だ。


「ねえ、イオリの家はどういう家なの?」

 昼ご飯を食べながらミツキが言った。

「う~んとそうだなぁ、剣術指南役がオヤジの仕事かな。道場みたいなもんだと思ってくれればいいよ。」道場ではないがミツキへの説明なら十分だと思う。俺も小さい頃からずっと剣ばかりを振って育ったのだから


「だからイオリも剣術修行に出たんだね。」

「いや、俺は悪ガキだったから家に居づらかっただけだよ。」

「ふ~ん、何だかイオリらしいね。でもそのおかげであたしはイオリに逢えたんだから良かったと思うよ。」

 そう言うと、ミツキは微笑んだ。


「ああ、俺もミツキに逢えて良かったと思ってる。お前ほど本音で話せるかわいい奴は他にいないからな」


「な、な、ななな、何を言ってるんだ。か、かわいいは関係無いだろう。」ミツキは、顔を赤くして慌ててご飯をほおばり始めるのだった。


 ユリネは、作戦を立てる前にクダンに対して今までの経緯や状況、この郷の地形について説明をしていた。


 そして状況を聞いたクダンが言った。

「まず妖魔つきのすみかである山の周りにグルリと結界を張り一旦

 妖魔つきを山に閉じ込めます。

 その後、結界を徐々に狭め最終的に封印致します。」


「なるほど、その方法であれば郷に被害を出さずに済みそうですな。しかしそんな広い範囲に結界を張り巡らせることができるものなのでしょうか。」

 ソウゲンは、実際のところ霊界師の力量を知らないのだ。以前ソウゲンが出会った霊界師は、家一軒に結界を張れる程度だったと記憶している。

 確かに山全体に結界を張るなど小村丸の右腕であるクダンだからこそ成せる業なのだ。


「霊符を用意致します。皆さんには、これを貼って頂きたいのです。その後の封印には人はいりません。ただユリネ様を案内に同行願います。」

 クダンが自信に満ちた口調で言った為、ソウゲンはこれを了承したのだった。


 作戦準備が進む中、ユリネは屋敷を抜け出して来ていた。

 イオリに内容を伝える為だった。


 待ち合わせの場所にユリネがやって来るのを見たイオリが言った。


「そろそろ、行くとしますか。ミツキ先生!」

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