第6話Bimota 500V due
そのまま横になってると全てを剥ぎ取られて居た。
今夜は普段より酒が過ぎている自覚がある。
【勃つのかな?ウチのご子息は。】
そんな心配をよそに、真由さんと玲子は二手から挟みこむように舌と唇を使い丁寧に扱き始めた。
こんな美しい女性達にこんな事して貰えるなんて。例えどんな状況に置かれてたとしても立ち上がれない腑抜けに育てた覚えはない。
初期の心配をよそにあっけなく硬直のピークに導かれてしまった。
玲子『黒澤。すげーな(笑)こっちだけはまだまだ若いよな(笑)』
真由『男性の価値はここだけじゃないのよ。黒澤さんのプニっとした贅肉の下の鋼の筋肉も、薄くなって来た額の上も、細かい作業の時はメガネの下から覗き込む仕草も、全てが魅力的。』
玲子『それは同感。やっぱりずーっと一緒に居たから気が合うねぇ真由♪』
真由『暴力的なこの棒もいとおしくて堪らない。』
玲子『私はこの指も好き。毛深いけど基本的に整ってるし、力強さもあるし。』
と自分の下腹部へと連れ去った。
真由『私も大好き。』
反対の手も誘拐された。
黒澤『…。』
二人ともやっぱりすでに太腿まで垂れている。
真由が口に含んでいる時は、玲子は陰嚢に舌を這わす。玲子が含んでいる時には真由は臍から下を舐め回す。
その間導かれるままに二人のスリットをゆっくり撫でる。奥の蜜壺にはオールドタイプの短い腕では侵入するに至らない距離だ。諦めて手前の肉芽にちょっかい出す。
玲子『あっ…』
真由『いや…』
同時に背中が痙攣した。それでも二人とも私の陰茎から離れようとしない。
真由『黒澤さんの先っぽからヌルヌルしたの出て来ました♪』
玲子『それアタシにもちょーだい♪』
我先に鈴口に吸い付き舌を絡ませる。
たまらず降参を申し入れる。
黒澤『そろそろ解放してあげないと敵前で戦死しそうです。』
玲子『今日は真由が先でいいよ♪』
真由『それじゃぁ遠慮無く頂きまぁ~す♪』
二人とも楽しそう。
真由が腰を跨ぐと同時に私も玲子の腰を掴み引き寄せ潜り込んだ。太腿まで垂れてる厭らしい汁を全て舌で掬いながら目標地点を目指す。
玲子『気持ちいぃ…。あぁ~…!』
目標地点に到着し吸い付いた。
真由も腰を下ろす。挿入するや否や最初から激しくロデオよろしく暴れている。
真由『もぉ…もぉ…イク…!』
玲子より真由の方が感度がいい。真由は果てると同時にそのまま横に倒れた。正確には玲子に避けられた。玲子をそのまま腰の位置に移動させ自ら導き一気に深く腰を下ろした。
玲子『奥にゴリゴリ当たる~!』
先程の真由に負けず劣らず激しくあばれる。
玲子『が…我慢しないで…出していいからね!はぁ…はあぁ!』
黒澤『真由さんと競おうとしなくても、二人ともホントに素敵だよ。』
玲子『嫌なのぉ~…私の中に…欲しいのぉ…はぁ…いぃ!』
真由『らめぇ~…私も欲しい!』
真由は這い上がって私の唇に舌をこじ入れて、すべての唾液を吸い取ろうと強く吸う。
真由を抱き締め大好物の尻を荒っぽく揉む。それすらも快感と感じて、時折唇を離して呼吸を荒げた。
玲子『ダメ!やっぱり…アタシ…ぃ…イクぅ~!』
玲子の動きが止まり体が跳ね前方に倒れ込んだ。ちゅぽっと音を立てて抜けた。
玲子を仰向けに直し、その上に真由を抱き付く姿勢で乗せる。
世の男達が夢にまで見る絶景がここにあります。柔らかくそびえる丸い丘の下には、美しく光る泉が溢れる谷間。逆さ富士の如く上の谷間から糸を引いておちる露が、まるで細い滝のようにも見え、その落ちた前にも同じような泉がある。
最初は後背位の姿勢で待つ真由に狙いを定める。先が触れたらだけで吐息が漏れる。
真由『はぁ…。』
興奮が増したせいかさっきよりもきつく感じた。根元まで収めるまでにゴム同士が擦れ合い反発するような振動を感じる。実際にはじゅうぶん潤滑油が機能してるのでそんなはずはないのだが。
真由『大きいよぉ~…。そんなので突いたら壊れちゃう!』
黒澤『壊れたら大変。』
意地悪して抜き、下の泉を散策に向かう。
玲子『何で?ホントに大きい!すごくイイ~!すごい~!イヤァ~!』
黒澤『嫌なの?』
また抜いて上の洞窟へ登る。
真由『ぐァァ~!イイ~はぁ…はぁ…もっとぉ…もっと突いてぇ~!』
黒澤『まだイッちゃダメです。』
また玲子に戻す。それを繰り返す内に気が付いたら真由と玲子は唇を奪い合って居た。その光景が余りにも淫靡で艶かしく私を絶頂へと導き発射の導火線に火を点けた。
黒澤『ぐ…出ます!』
玲子『私にちょうだい!』
真由『いやぁ~!私に下さい!』
ケツフェチの私は真由のお尻を掴み、真由の中に欲望の弾丸を撃ち込んだ。
真由『あぁぁぁぁ~!!』
玲子『アタシにもぉ~!』
真由の中で三回跳ねた後すぐに抜き、玲子の中へと入り直した。何度か跳ねたが白い欲望の塊は、ほとんど真由の物となっていた。
体を離すと再び二人揃って、3人のが絡み合ったカクテルが付着してる陰茎を、当然のように綺麗にしようとまた二人で舐め合い始めた。
黒澤『突然変な事言うけど怒らないでね。私達の初めても3人でして、今もこうして3人だけど、2人とも元々女の子が好きだったりする?』
真由『ひがいまふよ。』
玲子『口に物入れたまんま喋らない。』
真由『海外で長期滞在してた時、怖い目にあっちゃって。結局無事だったんだけど、当時の私は危険に対しての免疫が薄くてずっと泣いてたんです。』
玲子『それ見てたら居ても立っても居られ無いというか、何とか慰めないとって…そしたらアタシが襲ってた(笑)』
真由『それが初めての女性だったけど、元々の玲子の立ち位置が私のナイトだったんで、すんなり受け入れちゃって(笑)』
玲子『いつの間にか沈んだ時はたまぁに慰め合う関係に(笑)』
真由『勿論普通に殿方の方がいいですよ。でも玲子だけは特別なんです。』
玲子『アタシも男が好きだ。でも真由だけはどこにも行って欲しく無い。』
真由『玲子…。』
二人は見つめ合い軽くキスをした。
黒澤『そうなんだ?どうりで色んな行為に抵抗薄いなぁって。脳内の違和感解決した♪さぁ寝ましょう。シャワーして来ます。』
二人は名残惜しそうに握り締め、特に真由の唇はベッドの縁まで付いてきた。
シャワーを終え寝室に戻ると私が使う予定だったベッドに裸のまま二人で眠ってしまっていた。上にシーツとブランケットをかけ、自分は荷物のある場所に。ケブラーカーボンで編まれた肌着のような衣類がセットアップで置かれて居た。ありがたく着させて貰う。その上にいつも通りのジーンズといつも通りの布帛シャツ。無線機つけてインカムもセット。そのままソファーに向かい仮眠した。
…[……イン…オキテマサカ…。]
黒澤[…!]
坂下[指導員。起きました?]
黒澤[あぁ。ごめん。うとうとしてた。]
前川[そろそろ約束した時間なんで下に降りて来て下さい。]
黒澤[了解した。]
リュックを背負い静かにドアを開ける。音もなく外に出て静かに閉めた。しかし玲子は片目を開け一部始終を見ていた。
それに気付かぬまま執事ーズと合流しガレージに案内される。
前川『とりあえずその装備品は無駄が多そうです。最低限の物をこちらに移して下さい。』と、タンクバックを渡された。
移し替えるべくリュックの中身から選んでいるが、選んだものはことごとく坂下に取り上げられ、坂下自身が用意した物に交換されていく。
坂下『今回は相手もセミプロです。ちゃんとプロ仕様の道具使って下さい。こんなナイフじゃ一発で折れますよ。』
キャンプ用品コーナーで買ったナイフを手刀で叩き折ってみせた。
黒澤『いや。普通の人はそんな事出来ないから(笑)それにナイフを人に向けるだなんて野蛮な。』まぁ文句言いながらも安物が高級品に変わるのは少々気分がいいので任せて置く。
前川『万が一指導員が敵に捕まったとしても、生きて逃げるにはきちんとした装備があるに越した事は無いです。なので着替えて下さい。』と、今度はレザー風のセパレートタイプのライディングスーツ。
坂下『無地だと逆に目立つからって、御前のデザインで背中に絵が書かれてますけど…』
前川『とりあえず収納力も強度も機能性バッチリなんで我慢して下さい(笑)』
ジャケットの背中を見る。
黒澤『ば…ばにーがーる!?』
バニーズリボンレーシングチームと書かれ、どう考えてもお尻が好きで選んだ構図の可愛い女性が描かれていた。
黒澤『まぁ嫌いじゃない♪』
坂下&前川『…。』
前川『御前の言うとおりだったな…』
坂下『あぁ…だからお屋敷まですんなり来れた…』
黒澤『二人でボソボソ何言ってんだ?』
坂下『いや。御前達の朝食の仕込みの段取りを。』
黒澤『南さんは御前って呼ばれてるけど、何なの?』
坂下『そこは申し訳ありません。察して下さい。』
前川『すみません。』
黒澤『いや。別に謝られるようなことでも無い。ただ個人的な興味を満たしたかっただけで、南さんが何であろうと好きな事に変わりはない。ただ余計に金持ってる陽気な楽しい爺さんだな(笑)』
坂下『ありがとうございます。自分等もあの爺様が好きで仕方ありません。』
前川『皆の為にも少しでも長くあのくそ爺ぃの時間を楽しく生きさせてあげたいです。』
黒澤『そうだな…本当に南さんにもお前達にも感謝してる。ありがとう。』
前川『ここで礼を言うと変なフラグ立たないっすか?(笑)』
坂下『そうですよ(笑)』
前川『さぁ着替えて。装備の確認もありますから。』
前川『一応防弾能力はありますけど、衝撃は吸収しきれません。なんで弾が当たるとめちゃくちゃ痛いです。ナイフも刺さりませんが、点で突かれるのはめちゃめちゃ痛いです。刀でも切られる事はありませんが、棒っキレでおもいっきり叩かれたら痛いに決まってます。繰り返しますが、関節部や骨で受けると砕けます。肉で受ければ打ち身で済みます。なんで防弾効果は試さない事をお奨めします。』
坂下『大口径で射たれたら避けて下さい。戦車の大砲も爆弾や地雷の類いも避けて下さい(笑)』
黒澤『二人の口振りだと役に立ってるのか解らなくなるよ(汗)』
前川『その代わり収納力はなかなかです。フル装備にすると日本では逮捕されますから、表側は使えませんけど(笑)』
坂下『とりあえずブーツナイフ。ソードブレーカー風サバイバルナイフ。他にも適当に見繕ってます。』
黒澤『どのみちアウトドアナイフには見えない物ぶらさげてちゃ逮捕でしょ?(汗)』
前川『荷物もパッキング完了です。ヘンテコな爆弾は危ないので代わりの入れておきました。』
坂下『それからこれ。ゴム弾だけでは無く実弾も用意してあります。青いテープを貼ってある方がゴム弾です。下っ端はこれでじゅうぶん戦闘意欲を削ぎとれます。』説明しながら渡されたのはシグ・ザウエルP320。これはドイツ製。近々これをベースに改良型が出るらしいが、まだまだ戦える新しい拳銃の部類。こいつのすごいのは好みにカスタマイズしやすい。グリップの形状から銃身の長さまで簡単に分解交換出来る。持ってみると手には馴染むが、バレルが短いのは好みではない。注文可能ならフルサイズでお願いしたいとこだが言葉を飲み込んだ。
前川『ホルスターはジャケットに付けられます。マガジンもこちらに刺せるようになってます。』一通り機能説明をうける。
前川『それと御前が大事にしてるバイクなんで、壊したら相当ネチネチしつこく言い続けますから覚悟して下さい(笑)』
案内された先にあったのはビモータ500V due!しかも南カスタム。スイングアームが延長され片持ちになっている。その他にもチャンバーやカウルの素材やライトの形状とか変更点はあちらこちらに伺える。
黒澤『おのぉ言い出しといて何だけと、ホントにこれ借りていいの?(汗)』
坂下『御前には2輪を卒業させたいんで、何なら返さないで逃げちゃっていいです(笑)』
前川『逃げ切れたらっすけど(笑)』
坂下『メーカーのミスは全て改善済みって事らしいんで、安心して乗ってって下さい。』
黒澤『では遠慮無く(笑)』
前川『ナンバーは当たり前に偽造です。このグローブ嵌めて無いとエンジンかかりません。しかもETCはポケットに入れたまんまでOKなんすよ。さらにグリップから両手を離すとエンジン止まる。すごく無いっすか?♪』
黒澤『すごいけどそろそろ作戦説明を(汗)』
坂下『自分は玲子さん連れて時間差で出ます。堂々と見付けて貰いやすいように菅野組に向かいます。』
前川『自分は単独で真由さんのお父上の金の動きを。それが掴めれば蜥蜴の尻尾どころか、お腹辺りまで到達出来るでしょ。もっともすぐにバレると思いますので、そっから先は囮になって掻き回します。』
黒澤『必ず守って欲しい。作戦コマンドは:いのちだいじに:だ。』
前川『自分はドラクエよりFF派っす。』
黒澤『それと真由さん起きたら、私は気分転換にバイク借りて峠攻めに行ってるとかテキトーに誤魔化しといてくれ。』
前川『そんな嘘通じる女性とは思えないっすよ。…それと、連絡用にスマホわたしておきます。インカムのヘッドセットがそのまま使えます。』
黒澤『いいんだよ。そういう嘘を汲み取れる女性だから。それじゃぁ後は頼んだよ。』
坂下『気を付けて。』
前川『了解です。』
握り拳を差し出すと、二人も拳を差し出す。ゴツンと音がなるほどのフィストバンプ。
黒澤『痛いから。加減して(笑)』
ビモータを押してゲートを出る。しばらく下り坂が続くのでエンジンはかけない。音が聞こえない程度まで離れてからエンジンをかけた。細く甲高い音が響く。暖気が済むまではおとなしく下る。ヘルメットに付けられたインカムからノイズが入る。屋敷からまだそんなに遠く無いので拾ったのであろう。
前川[ザザザ…真由さんザザ…GT-Rでザザザ………。]
聞こえなくなった。
気にはなったが暖気も済んだのでアクセルを開ける事にしよう。…!
聞き覚えのあるRB26DETTのサウンド。しかもきっちりヒール&トゥで回転合わせてシフトダウンしてる。ミラーを除くと見覚えのある色の33が追ってくる。逃げるつもりは無かったがアクセルを開ける。
自分の車に追われ、しかも怒りによる威圧感に似たオーラすら感じて取れる。近付いて来た。下りは2輪には分が悪い。転んだら轢かれる。殺される?死ぬ?否!ここじゃないだろ?ビモータのリアタイヤが大きく流れる。カウンター当てるがセンターラインを踏みフロントタイヤもアウトに飛ばされる。筋肉と重心移動だけでフロントのグリップを取り戻すが、すでにガードレールが近い。諦めてアクセル戻すと突然リアタイヤもグリップ取り戻し、アウト側に体を放り出す力が働く。その力をガードレールを蹴って受け止め停車した。GT-Rもすぐ後ろに急停止。
蹴った足の痺れに悶絶しているとGT-Rから真由が降りてきた。
真由『GT-Rすごく乗りやすくなってますね。』にっこりと感想を述べ歩みよってきた。
黒澤『真由さん…。』
バチーン!
いきなり殴られた。それもグーで。
黒澤『…ごめん。』
真由『殴ったのは私なのになぜ黒澤さんが謝るんですか?』
黒澤『顔は笑ってても目が怒ってるから。』
真由『怒らせた記憶はあるの?』
黒澤『あぁ…嘘を吐いて一人で出発したからだろ?』
真由『解ってるならもういいわ。』
黒澤『でもここまでだ。戻るんだ。君の考えは解ってる。会長の所に行きたいんだろ?』
真由『解ってるならなぜ帰れと言うの?』
黒澤『ここまでの経緯からするとあくまでも想像の域は越えないが、君のお祖父さんは真由さんに経営権等の財産を譲りたがっている。その事に反対する君の父親が妨害してる。ただ妨害するだけならまだしも、会長に対して明らかな脅しをかけてきた。』
真由は黙って聞いている。
黒澤『このまま君を会長の元に連れて行くと、待ち構えて居た社長派の連中に捕まるかも知れない。君が人質になれば会長の敗北が決まる訳だ。会長の周りではすでに二人殺されている。会長が譲渡や相続の書類に捺印したら恐らく会長も君も殺される。君が隠れて居るうちは会長もとりあえず寿命までは生き長らえる。』
真由『でその為に貴方が命懸けで一人でお祖父様の所へ行くのは本末転倒。守ってくれる貴方が居なくなったら、結局私は一人でお父様の所へ行くしかなくなるわ。』
黒澤『一人じゃない。玲子さんも居るし、今は南さんや明に賢一も居る。』
真由『貴方が引き受けた仕事を途中で他人に投げ出すの?それに二人で行った方が、貴方も私も明日以降生きていられる確率高いと思います。それだけじゃなく私も戦えると多少の証明は出来たと思いますよ。貴方をガードレールに張り付けさせた訳ですから。』
黒澤『やっぱり口では女性に敵いませんね(笑)』抱き寄せて口付けをする。赤く変色した頬に真由が手を伸ばす。
真由『ごめんなさい。痛かった?』
黒澤『Mじゃないけど気持ち良かったよ。愛されてると感じた。真由さん…』
真由『待って。ピロートークじゃないから嘘吐いたら詐欺で訴える事になるわよ。続きは後にしましょ(笑)』
黒澤『ははは。OK。』
真由『こうなるの解ってたんでしょうね。出て来る時に坂下さんに、色々使えそうなの見繕って積んでおきましたって伝言頂きました。』
真由に促されトランクを開けると一人で一個小隊位は相手に出来そうな程の火器が積まれて居た。
真由『私用にほとんどゴム弾だそうで、顔には向けないで使えと言われました。これだけはドア破ったり車破壊するのに実弾必要だからと。』ショットガンまである。
助手席に有った楽器用のケースにはヘッケラー&コック社のHK416にクリスヴェクターが置いてある。
黒澤『なるほど。使い方や使う場所は教えます。私に着いてくるなら使わずに辿り着くのは不可能なはずです。試し撃ちや練習はさせてあげる余裕無いので現場で覚えましょ。』
真由『スパルタな先生なんですね。それともさっき殴った仕返し?(笑)』
黒澤『さっきも言いましたが向こうは殺す事を何とも思いませんが、私達は殺さずに戦意を奪う必要があります。その為には圧倒的な力を見せ付ける。明が真由さんに持たせたのはそういう意味でしょう。』
真由『解りました。今の私なら危険な事には普通の人達より免疫ついてると思います。遠慮無く指示して下さい。』
黒澤『OK♪行きますか。』
真由『はい。…そのジャケット似合いますね(笑)』
黒澤『いいでしょう♪あげませんよ(笑)』
真由『何かの罰ゲームですか?』
黒澤『…。』
ビモータのエンジンをかける。
真由もGT-Rに乗り込みフルハーネスのシートベルトを締め上げる。
黒澤『ただの可愛いだけのお嬢様じゃなかったって訳か…とんだお嬢様だ(笑)』
真由[聞こえてますよ]
慌てて振り返ると真由も無線のインカムのヘッドセットをつけている。
黒澤[あちゃぁ~…]
真由[スタートしないと轢きますよ]
ギアを蹴飛ばしアクセルを開ける。前輪持ち上がるが気にせず加速。楽しいツーリングデートへの幕開けです。ウイリー位して、おどけて見せてもいいでしょう。
きっちりアクセル開けたはずなのに、しっかり真由のGT-Rも付いてくる。
テールスライドなど派手な運転はしない物の、しっかり減速して過重移動してから踏み込む。それもきちんとアウトインアウト。基本に忠実に安全に爆走してくる。
市街地を抜け少しばかり郊外のファミレスの駐車場に乗り入れる。
黒澤[軽く朝飯済ませておこう]
真由[了解]
駐車場の段差でGT-Rのノーズが僅かに地面をかする。
エンジンを停めヘルメットを脱ぎGT-Rの運転席を開ける。
黒澤『車高低いから段差は斜めに進入しないと擦るよ。デフューザーでカバーされてるから勢い良く行くと火花出るからね。しかもNOS積んでるから爆発するよ(笑)』
軽く脅しておく。調子に乗らないように心にブレーキかけさせアドレナリン落ち着かせないと。本当は亜酸化窒素は爆発なんかしない。爆発するのはニトロメタン等の競技用で使われた燃料だ。
真由『NOS?』
黒澤『加速装置みたいなもん。』
真由『気を付けるわ。こんなに低いと思ってなかったし。』
黒澤『とりあえずメシ食いながら今後のルート決めましょう。それと助手席には何かでカバーかけておいた方がいいですね。』
真由『んじゃこれで。』
スプリングコートを脱いで渡された。裏地にはケブラーカーボンが縫い込まれて居た。
真由『それも坂下さんから着てろって渡されました。』
黒澤『昼間はこれ暑いですね(笑)』
助手席の荷物にかけて車を施錠。
店内は早朝にも関わらず結構な人が居た。
店員に案内され席につく。
黒澤『ブリオッシュのフレンチトーストとコーヒー。』
真由『私も同じものを。』
店員は復唱し退く。
黒澤『普段この時間に物を食べる事無いんですけどね。』
真由『私もです。』
黒澤『高速道路使えばサービスエリアで食事も休憩も給油も確保されてますが、Nシステムの下を定期的に通過する事になります。それで動きがバレ無いとも限らないので、念には念を入れてシタ道を行きます。さらに同じ理由から主要幹線道路はなるべく使いません。結果給油は豆に行いますが、市街地離れると食事のタイミング逃したりしますので。』
真由『コンビニのおにぎりやパン買って途中休憩しながらでも構いませんよ。』
黒澤『私的には時々腰を伸ばしたいのと、食べる事と排泄は余裕を持ってやっておかないと。万が一作戦失敗で隠れなきゃならない時に外でお尻出したく無いでしょう?(笑)』
真由『私に対しての気遣いでしたら無用です。その時が来たら立ちションでもやってのけます。』
黒澤『立ってする必要は無いんだけどね(笑)とにかく到着して体力残って無かったら身も蓋も無いです?ゆっくり急ぎましょう(笑)』
真由『そうですね(笑)』
黒澤『ところで問題です。どこにどんな人が座っているか記憶してますか?』
真由『はい。だいたいは。』
黒澤『ならば、目を閉じて下さい。店員さん除いて男性何名。女性何名でしたか?』
真由『男性9名。女性12名です。』
黒澤『ネクタイをしてない男性何名?』
真由『7名。』
黒澤『髪の毛が肩の位置より長い女性何名?』
真由『おなじく7名。』
黒澤『全員合わせて1番多かった上着の色と数は?』
真由『紺色6名。』
黒澤『眼鏡してた人は?』
真由『また同じく6名。』
黒澤『最後は難問。胸のポケットにスマホが入ってると予想されるのは何名?』
真由『…解りません。』
黒澤『胸の膨らみ方の違いだけじゃなく、衣類の傾きで懐にある物の大きさや重さがだいたい推測出来ます。その辺まで観察出来ると相手が武器を携帯してるかどうかの判断に繋がります。』
真由『はい。』
黒澤『その他に立ってる相手なら袖の膨らみ方、腰のベルトの位置、ふくらはぎ下の裾幅。左右の違いや不自然さを感じたら常に視界の角にでも置いておく癖をつけておいた方が良いでしょう。今後も海外で活躍する身でしょうから、ある程度は護身に対する意識を養ってみてください。以上、授業を終わります。』
真由『回答がまだです。先生。』
黒澤『答えは一人も居ないが正解でした。鞄に仕舞って無い方はほぼテーブルに置いてました。』
真由『そうなんですね?』
どこからかスマホの鳴る音が聞こえ、二人で視線を送ると胸の内ポケットから取り出し応答始めた。
黒澤『例外として二個以上所持してる方も居ます(汗)』
真由『…』
店員『お待たせ致しました。』
黒澤『さぁ頂きますか(汗)』
真由は届けられたコーヒーを外を見ながら音を立てて啜った。
とりあえず食べ終わるまで会話も無く、お互いに座ってる位置から観察出来る客に気を配った。
私が先に食べ終わり声をかけてからトイレへ。
戻ると真由も立ち上がり
真由『私も済ませておきます。』
真由が立ち上がると店内の男性客の何人か視線が集まる。
一瞥をくれただけで不審な動きをする物は皆無だ。一部とはいえ相手はK察って事もあり、妙に犯罪者心理になってしまう。
スマホが震えた。前川から電話だ。
前川[追い抜いたっす。お先っす。]
黒澤『了解。気を付けてな。』
ついでに坂下にも電話してみる。
坂下『お疲れ様です。』
黒澤『メシ食ってたら賢一に抜かれた。そっちは?』
坂下『玲子さんの支度待ちでまだ出れません。…あっ来ました。これから出発出来ます。』電話の向こうでガチャガチャしてる。
玲子『黒澤ぁ?』
黒澤『あぁ。』
玲子『真由の事頼んだよ。絶対二人で無事に帰って来なきゃダメだからね。』
黒澤『もちろん。玲子さんもそれ以上怪我すると嫁の貰い手に支障来すから気を付けなよ。』
玲子『黒澤が要らないっつったら坂下に責任取って貰うよ(笑)』
坂下『ちょっと返して下さい!』
黒澤『だそうだから、くれぐれも玲子さんの事宜しくお願いする。』
坂下『ちゃんと無傷でお返ししますから!』
玲子『坂下ぁ!どーゆー意味だぁ?』
黒澤『もうかなりコンビとして仕上がってるな(笑)嫁にやるのは諦めたから、無事に真由さんの元に帰してあげてくれ。』
坂下『もちろんです。ちゃんと真由さんと指導員の元へ。』
黒澤『お前も無茶しすぎるなよ。じゃぁな。』
坂下『押忍。失礼します。』
電話を切る。真由はすでに席に戻っていた。
残りのコーヒーを一息に呷る。
黒澤『そろそろ出ますか?』
真由『はい。』
席を立つ。レジに向かう間も無関心を装う気配はあるが、攻撃的な気を送るものは居ない。
支払い済ませる。もちろん外に出る時も建物や車の影など中心は怠らない。
真由もキャップを深くかぶり直し車に向かう。
黒澤『さっき前川が追い越してったよ。坂下と玲子さんも今出発だって。皆、真由さんの身を案じてた。取り越し苦労と笑い飛ばせるように華麗に済ませましょう(笑)』
真由『そうです。当然です(笑)』
ヘルメットとグローブ装着。エンジンスタート。
黒澤[給油のタイミングはこちらで指示しますが、休憩したい時は遠慮無く言ってください]
真由[了解です]
ゆっくり進む。車道に合流。暫くは上のギアで低回転を維持する。
真由も慎重に走り出す。言われた通りに段差は斜めに降りて車道に合流。
初めて運転させた時のギクシャクは既に無い。これも南マジックの恩恵なんだろうと確信した。
国道を避け県道や市道、農道を多様し3度の給油と休憩を挟み目的の街まで辿り着いた。
南さんに頼んでおいた潜窟。
黒澤[そろそろなはずなんだけど…]
真由[ナビもずっとこの辺で目的地だから案内終了するの一点張りです]
黒澤[でも某国の大使館しか無いよ]
真由[…まさかですけど…]
黒澤[…まさか…]
ゲートに向かい守衛に話し掛ける。
黒澤『すみません。ちょっとお訪ねしたい事があるんですが…。』
守衛は顔と車を確認しただけで中へ行くよう指示をした。
黒澤[もしかしたみたい(汗)]
真由[すごいね。南さん(笑)]
奥に行くとガレージのシャッターが開き、中から男が手招きする。
指示通りの場所に停車。シャッターが閉じて灯りが点いた。
…『南様よりお話は伺っております。生憎今はこの近辺に安全な所はございませんでした。お使い難いとは思いますが、こちらに一室ご用意致しましたのでお使い下さい。それと勝手ではありますが、そちらの御車のナンバーも外交官ナンバーに付け替えさせて頂きます。』
黒澤『大変お手間を煩わせてしまったようで申し訳ありませんでした。私は』
…『名乗らなくて結構です。そちらのご婦人も。ここには誰も来ないし誰にも会ってないと言うことです。知らなければ問いただされても答えられませんし。』
黒澤『お気遣いに重ね重ね感謝致します。』
私と真由は深くお辞儀をした。
黒澤『ちょっと出掛けても構いませんか?車は置いてバイクで二人乗りで行きますが。』
…『出入りはご自由にどうぞ。守衛も承知しております。』
黒澤『ありがとうございます。』
GT-Rのトランクから拳銃一丁取り出した。私のと同じシグ・ザウエルP320。ただしマガジンはゴム弾を選ぶ。真由のコートにもホルスターが付けられる。助手席からコートを取り出した。足元にあるヘルメットとグローブも。
黒澤『真由さん。』
黙って受け取り装着。シグはチャンバー内が空なのを確認しセーフティロックし使い方を簡単に説明して渡す。
緊張した面持ちでホルスターに仕舞う。クラムシェルタイプなので抜きやすい。
黒澤『さぁ…行きますか。』
真由『はい!』
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