第13話 兄弟対決

白刃がぶつかり合う音が、間断なく島中に響き渡ります。戦いは、成仁の方が圧されています。

成仁が劣っているのではありません。幼少時から修練を欠かさなかったのでしょう。動きも力も人並み外れています。

ですが、瞬発力において鬼響丸の方が明らかに上を行っていました。人間離れをしていると称してもいいくらいに。

がつんと噛み合った太刀を、鬼響丸は吼えながら押していきました。すさまじい力でした。成仁は踏みとどまれずに、一方的に追い詰められていきます。

「我の勝ちじゃ」

 鬼響丸は、確信の表情を浮かべました。と、その時。

 刹那の隙を衝いて、成仁が鬼響丸の腹を刺したのでした。

鬼響丸はその場に崩れ落ちました。成仁も刀で己を支え、立っているのもやっとです。

「なぜ……我は……負けたのだ……宮中……で……悠々と……暮らして……いた、そな……た……なぞに……」

「“想い”の違いでしょう」

 桃桜は静かに答えました。聖なる戦いを目の前にして、高ぶっていた心は不思議と落ち着いていました。

「鬼響丸さんは確かに強かったです。技術だけ見れば、完全に貴方が勝っていました。朝廷への強い憎しみもまた、強大なパワーを与えていたのでしょう。それよりも東宮さまの“想い”がより勝っていたんです。鬼を倒すという使命、民を守るという責任、そして兄君を憎しみから救いたいという“想い”……」

 鬼響丸は、驚きを帯びた瞳を弟に向けました。同じ顔をした瞳に何かを見つけたのでしょう。

「我の負けだ。……認めよう、勝者は成仁、そなただ」

 鬼は静かに目を閉じました。慌てて駆け寄った東宮はしかし、心の臓が脈々と波打つことに気付き、ほっと頬を緩めます。

「良かったですね、東宮さま」

「……ああ」

 師弟は戻ってきた平和と、兄弟の仲直りの予兆を感じ、微笑み合ったのでした。

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