第5話

「きゃあああああああ!」


 あ、コレ俺の声じゃないから。シャーロットだから。本当に悲鳴上げたいのは俺のほうだよ。だって俺今吹き飛んでるし。マッパで。周りが森林で本当によかった。誰かが見てたら俺、お嫁いけなくなっちゃうよ。まあ行く気はないんだけどね。

 でも、今俺が悲鳴を上げていないのは別の理由がある。俺の固有体質【不死者ゾンビ】は、死霊、アンデットに近い性質をもつそうだ。今日は快晴。もう予想できた人もいるかな? ―日光のせいで体に力が入らん。非常にまずい。このまま失神したら俺のピュアな童貞ボディを、特に男の子の部分を見られてしまう。別に赤ちゃんのときは気にならんが、今の状況で気にしないのは無理だ。せめて服を着たい。なんかないかな?


【この地域一体は森林地帯です。この世界の主な住人の服の素材は木綿、麻のものが多い。現状でも【鑑定】し、【錬成】すれば作成は可能です】


 それだ! さすがは先生、わかってらっしゃる。もう本当に賢人だわ。あれ、もしかして俺より【森羅万象】先生のほうが錬金術師アルケミストなのでは?


【……】


 なんで黙るんだよっ! ま、いいか。今は服を作って着るのが最重要事項だ。俺は吹っ飛ぶ体の近くにある木とか草とかをひたすら引っこ抜く。なんとも、人間じゃなくなったし、ゾンビなので、体への心配が無くなり、俺は筋力を100パーセント以上使えるらしい。結構便利だ。ここまで日光に弱くなければ。っていうか俺いつになったら落ちるのよ。シャーロットと百メートルくらい距離あるぞ。魔法って半端ねー。そこで、俺に世界の声が聞こえてくる。


《ササキリョウジの固有体質【不死者ゾンビ】に、新能力が発生しました。【不死者 肉体限界突破】 【不死者 日光弱体化】 レベルアップです》


 おっ、レベルアップだ。でも、コレどういう基準なの?


【経験値というものが各レベルごとに設けられているそうです。経験値はレベル毎に約50ずつ上がるそうです。その経験値を超えるとレベルは上がるそうです。今、主はレベル3 ランクEです】


 クラスっていうのは何?


【そのもの職業レベルのようなものですかね。冒険者の資格を得た後だと、ダンジョンやモンスターの適正を見極めるためのものです。ランクはレベルが19上がるごとに更新されます。レベル1から19がE、レベル20から39がD、レベル40から59がC、レベル60から79がB、レベル80から99がA、そしてランクS、レベル100と分かれるそうです。今だ現在、クラスS到達者はいないようです】


 なるほどな。それがこの世界での階級差みたいなものか。まあ俺はレベル3だし、普通にEだな。ん? シャーロットは?


【シャーロット様は、特例なのでしょうか。レベルは今は1で固定されていることになっていますが、正確にはMAXとなっています。いえ、申し訳ありません。ご認識だったようです。シャーロット様は、主のレベルアップと同調して表面上だけはレベルアップしています】


 ふ~ん、多分彼女が神姫なことも関係しているな。彼女は自分を永遠の16歳といった。つまり、成長はそこで止まっているということだ。それに、俺とレベルアップを同調させるのは民間人、他の冒険者に怪しまれないためか。彼女のステータスの閲覧は?


【おそらく、【鑑定】でも無理でしょう】


 まあそらそうか。そんなものは見れるわけは無い。コレは保留しておこう。で、俺いつ止まるのかな。あ、もう落ちる。頭が、頭が取れるるるるるるるるる! 血が頭から吹き出てるるるるるるるるるる! 俺は頭を地面にこすりつけながら俺は森の中を転がっていた。さっきから少しずつ手に入れた木綿や麻が溜まったな。あれ、でも俺最後のほう【森羅万象】の話に気を取られていたから力ずくでやったわけじゃないよな? 俺がそう思った途端、また《世界の声》が聞こえてきた。


《ササキリョウジに【抽出】の新スキルが発生しました》


 お、またスキルが増えた。錬金術師アルケミストって習得スキルが多いみたいだな。これだけでも大分すごいのに。あ、先生、保持スキルって限界とかある?


【いえ、そのようなものは公表されていません】


 公表、ね。まあ多分大丈夫だろ。それに、今の言い方だと、先生は公表されたことならなんでも知ってるみたいだ。あっちの世界の知識もそんな感じだろう。まさしくデータベースだ。なんで【森羅万象】を先生って呼ぶかって? 俺なりの尊敬の念とせめてもの感謝だよ。 お、俺の体が止まった。ってあ!、俺の頭皮がとんでもないことになってやがる。シャーロットにはげてるとこと絶対見られたくない! 俺はそこらじゅうにばら撒かれた自分の頭皮と毛の回収に勤しむ。裸の男が自分の頭皮を集めてたら本当にホラーだな。とりあえず適当に自分の頭につけてみる。すると、


「うわ、キモい……。頭がグニョグニョいい始めた」


 あー、とうとう自分でキモいとかいっちまった。そんな凹んだ状態の俺に、またしても世界の声が聞こえてくる。こいつ実は暇なんだろ、世界の声の癖に、仕事しやがれ!


《ササキリョウジの体質に【不死者 高速再生】が発生しました。それと、我々は仕事をしていないわけではありませんし暇でもありません。今後、あなたのスキル発生や体質、魔法の発生を考えなくてはありません》


 俺はこれを聴いてどう思ったかなんて? 当たり前だろ―即土下座だよ。他に人がいたら変態にしか見えなくても、今は仕方ない。畜生! いや、本当に冗談です。本当にすいません。以後慎みます。本当に申し訳ない。ん? 俺にプライドだって? もう捨てたよ。くそ、二回目の人生がそうそうに負け組みになりそうだよ畜生!


《わかればいいのですよ。あなたの存在価値に見合った発言・行動を期待しています。まあできるかどうかは別ですが。(ドヤ)》


 ドヤ、ってなんだよ! こいつ、まさかドヤ顔してやがるのか、しかもいうことが辛口だよ。くそ、顔がわからなくてもドヤ顔してる様がはっきりとイメージできちまうよ。

 ま、まあ今は切り替えよう。さっさと服を着よう。さっきたところからさらに百メートルくらいきた。でも、シャーロットが来るのは時間の問題だろう。今は木陰だから動ける。さっそく俺は【錬成】で服を作った。イメージは江戸時代とかの農民がきてそうな感じの服、ってとこだな。上着もズボンも作り終わった。内側は木綿、外側は麻という二十構造なので、強度もばっちりだ。


「リョウ君~!」


 おっと、お迎えだな。シャーロットが竹箒を巧みに扱って飛んでくる。シャーロットは巫女服と陰陽師服を足して二で割ったみたいな格好をしている。もっと具体的に言うと、上着は陰陽師の服に似ている白い羽織だ。下のほうは赤い巫女さんのスカートだ。いや、あれをスカートと呼ぶかは知らないけどね。頭には陰陽師に黒い帽子が乗っている。全く、いい格好してるよ。本当に羨ましい。

 俺はそれに手を挙げながら向かっていく。さっきは気づかなかったけど、足が痛いな。あとでしっかりとした素材で靴も作ろう。だが、俺は忘れていた。今、頭を高速再生中だということに。


「きゃああああああああああああああ!」


 俺はまたも吹っ飛ばされてしまうのだった。だが、二の舞は踏まない。俺はせっかく作った服を破かないため、吹っ飛びながら服を脱いだ。服脱ぎ世界選手権とかあったら俺一位取れる気がするよ。でも、それが気持ち悪かったんだろね。もっと吹き飛ばされちまったよ。全く、懲り懲りだぜ。


ステータス 名前:ササキリョウジ

        性別:♂

        種族:亜人ハーフエルフ

        職業:錬金術師アルケミスト

        レベル:6

        経験値:230MAX300

        固有体質:【不死者ゾンビ】 【不死者 肉体限界突破】 【不死者                日光弱体化】 【不死者 高速再生】

        スキル:【鑑定】 【錬成】 【重量変化】 【質量変化】 【抽出】

        ユニークスキル:【森羅万象】 【英雄転生リンカネーションヒー                               ロー

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