第4話

俺は重大なことに気づいたんだ。転生って事は赤ちゃんからになるじゃないだろうか。空を急降下する俺こと赤ちゃんはもう限界な感じだ。だって、普通の赤ちゃんがこんな空たかくから放り出されたら死ぬでしょ普通。まあでも生きてるわけなんだが。なにせ俺の体質は【不死者ゾンビ】なので、死ねないのだ。俺はシャーロットのほうを見る。なんとシャーロットは―


「気絶してる!」


 そう気絶してた。若干白目向いている。女の子の白目とか見たくは無かったな。っていうか俺ベイビーなのに喋れるのかよ。あ、そういえばシャーロットが言語修正は入るって言ってたけどその効果かな。

 くそ、こういうときどうすればいいんだ。俺のいた世界、地球知識ならなんとかなるのか?


【いえ、ならないでしょう。ですが、シャーロット様の保持する付加エンチャント済みの竹箒なら、飛行が可能だと思います】


 どわ! ってあなたはだれでしょうか?


【森羅万象と申します。あなたのオリジナル、ユニークスキルと呼ばれる者です】


 ほう、これが地球の知識が欲しいっていったことの結果か。森羅万象、いかにもなんでも知ってそうだな。綺麗な女の人の声だしな。それで、竹箒まで俺たどり着けるかな?


【現在落下中の状況では、シャーロット様が体重、質量と共に先に落ちます。それまでにシャーロット様が気絶から立ち直るか、もしくは―】


 え、もしかして俺がシャーロットのとこについて竹箒を使えって?


【さすがは主。ご明察です】


 いやいや、どうやって?


【錬成で主の質量、重量を一時的に増加するのはどうでしょうか?】


 そんなことできるの? 錬成って割と便利じゃね?


【はい。錬成はとても応用の利くスキルです。空気抵抗を計算しますと、質量変化なら尖った変形が良いかと】


 了解しました先生! よっしゃ、行くぜ


「【錬成】!」


 俺が【錬成】を使うと、俺の体重が一気に重くなり、下に傾く。ちょうどシャーロットの方向に向く。大分離れてるな。急降下開始! クッ、顔に当たる風が痛い、顔の皮が剥がれる!

 そんなある意味さっきよりキツイ状況の俺に、【森羅万象】とは別の声が聞こえてくる。


《ササキリョウジに新スキルが発生されました。【重量変化】・【質量変化】。レベルアップです》


 ほえ? 何今の?


【世界の声、というものです。スキルの発生、レベルアップ、、種族の進化などのときに聞こえてきます。当事者にしか聞こえません】


 なるほどな。割と俺の成長スピード速いんじゃね?


【はい、主のレベルアップやスキル発掘のスピードは常識を脱しています】


 あ~、無難な感じがよかったけど、こういうのもいいかもな。おっと、シャーロットのとこまで落ちて来れたみたいだ。


「おい、シャーロット、起きろ」

「……」


 駄目だ、完全に墜ちてやがる。仕方ない。俺は【質量変化】と【重量変化】を駆使し、竹箒のとこまで落ちる。っていうかさ、俺思うんだけど、なんでこいつと俺で持ってるものが全然違うの? こいつ魔法とかも持ってたよね、何で俺に無いの?


【シャーロット様は神の使徒、そのなかでも神姫という称号を得ています。そこは仕方ないのではないでしょうか? それに、主がシャーロット様を神器の代わりに選んだことで、その分の補正も回ってしまったのではないでしょうか?】


 そう、だな。でも、この優遇され具合はちょっと俺の癪に障るぞ。この竹箒以外にも便利アイテムいっぱい持ちやがって。あれ、他のは?


【主、あちらに散乱しております】


 脳内で【森羅万象】が意識をそっちの方向に向けてくれた。そこには、無数なレアアイテムが散らばっていた。まずいな、本格的に急がないとあれ回収できなくなるぞ。

 俺は竹箒になんとか辿りつき、とりあえず跨いでみる。すると、


「マジかよ、飛んでるぞ俺!」


 ホウキが浮かんだ。それに、俺の考えた方向に飛んでいく。すごいなコレ。俺はシャーロットもホウキの上に跨がせた。ちゃんというと落ちてるシャーロットに無理やり合わせた。


「あっ……!」


 なんか色っぽい声だったけど、シャーロットは気絶から立ち直ったようだ。


「シャーロット、他の神器も回収するぞ」

「は、はい。え、っていうか今はどんな状況ですか?」

「空飛んでるけど?」

「ほえ?」


 シャーロットが自分の下を見た。そして絶句した後また気絶しやがった。こいつ、高所恐怖症なのかよ!

 俺はなんとかシャーロットを落とさないようにしながら神器を回収した。俺赤ちゃんなのにこのホウキ捌きって天才じゃね? まあ評価されるような天才っぷりじゃないけどな。やっぱりフツメンな俺にはそういうのしかないのか。畜生。

 その後、俺は全部を回収して地上に降り立った。だが、ただのベイビーな俺は普通に立ってられない。しばらく寝ていると、シャーロットが意識を取り戻した。


「ここは?」

「ん? 地面だけど」

「リョウ君。よかった……」

「……リョウ君、だと?」

「あ、なんでもないんです、ごめんなさい!」


 俺をリョウ君なんていったのは、この世にも、あの世にも一人しかいない。なぜ、こいつがその名で俺を呼ぶんだ?


【私にも理解、推察はできません】


 すまん、そらそうだよな。この件は一旦保留だ。今は俺の成長スピードをあげなとな。いつまでもこの赤ちゃんの姿でいるわけにもいかない。どうやったらできると思う?


【おそらく、シャーロット様の蘇生魔法を使用すれば精神年齢までは成長を一気に促進できます】


 へ~、魔法って便利だな。そんなこともできるのか。


【魔法とは、できないといわれた事象を改変し、新しい事象を作り出すのが真理といわれています。まさしく、その通りだとこちらは判断します】


 確かにな。その魔法で俺のも改変できたらいいと思うんだけどさ、まあそういうわけにもいかないか。ささっとシャーロットに元の姿に戻してもらおう。


「シャーロット、蘇生魔法で俺を戻してくれ」

「え~、でも今のリョウ君、リョウジさんのほうが可愛いですよ?」

「もうリョウ君でいいよ。でもさ、この姿で、しかもマッパって俺の精神的ダメージが割りとすごいんだわ。頼む」

「マッパ……! あ、あ、確かに今のリョウ君は、裸ですね。も、戻します!」


 そういってシャーロットがなにやら杖を持ち、呪文を唱え始めた。


「我、生を司りし者なり・生命の輝きを持って死の邪を開示せよ。リザレーション」


 シャーロットが杖を振った。俺を黄緑色の輝きが覆った。そして見る見る俺の元の姿に成長していく。っていうか俺、少し耳が尖ってるくらいで他が全く変わらないな。いや、特にリクエストしたつもりもないし、別に気に入ってるからいいんだけどさ、全く変わらないのはどうかと思う。それに、俺を人間じゃなくて亜人ハーフエルフに転生させたのも、俺という一人のがまた存在するのを避けたのだろう。俺は死んだ。そして転生し、また新たな命を得て、二回目の人生を始めた。でも、名前を変えるつもりはない。こいつは、俺が地球で生きた最大の理由だから。名前っていうのは、俺を知るものが全員いなくなっても確実に残る。そういうものだ。いいだろう、ロキ。お前の言うを見せてやる。このに、を常にに変えてやろうじゃないか。俺、ササキリョウジの二つ目の生き方、異世界で転生リスタートしてやる。

 だが、直近の問題は、俺がマッパのまま成長したことにあるわけで、俺にシャーロットの神祇魔法が炸裂するのはある意味、日常かもしれない。


ステータス:名前 ササキリョウジ

       性別 ♂

       年齢 20歳

       種族 亜人ハーフエルフ

       職業 錬金術師アルケミスト

       レベル 2 ランクE

       経験値 73MAX200

       称号 なし

       固有体質 【不死者ゾンビ

       スキル 【鑑定】 【錬成】 【重量変化】 【質量変化】

       ユニークスキル 【森羅万象】 【英雄転生リンカネーション ヒー                              ロー】 

       魔法 なし

       HP 1500MAX1500 MP 800MAX1000

       装備 なし(服もない)     

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