第3話 第四次エルバ774戦役.2 "心の傷"
第815女子遊撃強襲機械兵小隊に所属する兵士は女性でなおかつ生体改造を受けた者たちであった。彼女らは生身の身体を”材料”にされ戦闘機械にされていた。彼女らが所属する種族は地球時間で数世紀前に地球から拉致されてきた人類を戦闘用に「品種改良」されていた。だから機械盟約が必要な時に必要な人員が機械化兵士に強制的に改造されるのは避けられない運命だった。
マリンはそんな種族が暮らす辺境惑星で生まれ育った。そこの生活はある程度の農産物を上納すれば、最小限必要な物資が支給されるので不自由はなかった。だから13歳のある日、機械盟約の徴発官に徴兵されてからの日々は地獄でしかなかった。
それまでの田園地帯での暮らしとは一変し、毎日が管理されたプログラム教育。そして徐々に戦闘マシーンへと作り変えられていった身体・・・今では本物の戦闘マシーンになっていた。
エルバ774に到着した時、マリンの身体はありとあらゆる部分が機械と融合させられたり置き換えられられているので、元の生体で改造されていない部分といえば生殖器ぐらいなものだった。
マリンの生殖器が残っているのは、特に優秀な兵士と認められているので、子孫を残させるためだった。引退後は兵士の母になれという訳だ、すべては機械盟約の支配を継続するための兵器生産を優先していた。
この時、マリンの身体は不調だった。先の戦闘で不覚を取って直撃弾をうけたためだ。そうなったのも一瞬心の迷いがあったからだ。
その時、マリンは機械盟約に反旗を翻した惑星ドルファの首都エンヴォーグでゲリラ化した市民の掃討作戦を遂行していた。市民が手にしている兵器はせいぜい警察隊が持っていた程度で、強襲機械兵の武装の前では最初から勝ち目がなかったはずだった。しかし、マリンたちの部隊は対機械兵を撃破するのに充分な武装をしたゲリラに包囲され、無視が出来ないほどの損害を受けてしまった。
配下の兵士を次々と喪失しながらも、ゲリラの司令部があった地区に進撃した時の事だった。迂闊にもマリンは地対地ミサイルを受けてしまった。ミサイルはマリンのリボンカッターで真っ二つにしたが、信管が作動し吹き飛ばされてしまった。うずくまっていた時、マリンを銃撃するゲリラに銃撃されてしまった。そのゲリラの装備は機械化兵士が持つものと比べ軽武装で無防備と同じだった。しかも満足なプロテクターや装甲服も着用していなかった。
しかし、歯向かってきた以上。容赦する必要はなかった。マリンは銃弾を浴びせた。生身の肉体は瞬間的に形を失い、後は血の海に浮かぶ肉片しか残らなかった。ゲリラの存在を消し去ったわけだ。
歯向かって来た”敵”を殲滅するのは機械化兵士として当然の行為であったが。次の瞬間目の前にさっき消し去ったのと同じようなゲリラが出現した。そっちは女だった。敵を倒せば同じようにまた現れ、それもまた殲滅する。そうしなければ生き残る事なんて出来ないのは戦場の掟である。当然相手も知っているはずだった。だから同じように倒そうとしたとき、なぜかマリンの心に突き刺さる言葉を女が投げつけてきた。
「よ、よくもあの人を奪いやがって! あの人の無念を晴らしてやる、そこの金属の化け物女!」
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