その花は嫉妬深く

「ねぇ、知っていて?」


「あのシャクヤク、散ったのよ」


ガーベラが言った。


「悲しいわ、とても悲しい」


シクラメンは呟く。


「あんなに美しかったのに、嘘みたい」


ユリが言う。


「シャクヤクは、どんな時でも微笑みを絶やさなかった」


スイセンは思い出を辿るように瞼を閉じた。


「どうしてシャクヤクだったのかしら」


そして一滴ひとしずく流したのはマリーゴールド。


「何時だって綺麗だった」


「何時だって美しかった」


花達はそれぞれ話し始めた。


バラは言った。


「シャクヤクを散らしたのは」


「誰なのかしらね」

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