第29話 私/たすけてほしいとき

自分だけが耐えたらよかった

我慢したらよかったんだ

それならあんなことしなかったのに

あんなに迷惑かけなかったのに

自分ひとり我慢していればいい、

それが最良の解決策だと思っていた。


そう思う理由もわからないまま

自分のなかで響く悲鳴に

我慢できなくなったら

振り切って逃げ出した。

平気だと嘘をついて

背中を向けてきた。

私はどこまでも卑怯者だ。


もう卑怯者はやめようと決めてから

悲鳴をすこしずつ上げるようにした。

ほんのすこしでいい。

ちょっとずつでいい。


苦しいよ どうしたらいいの


そう言えばいいんだと気がついた。

皆に言えばよかったんだ。

すくなくとも

そう伝えておくだけで

周囲に迷惑は少なくなる。


きっとこれからも

おなじように

苦しくなるときがあるだろう。

逃げないで耐えないで

伝えて乗り越えていけばいい。

あとは、そのとき頭に浮かんだ顔にすべて話す。

それでとりあえず逃げないでいられそう。

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