第28話 対戦ゲーム
私はボードゲームや対戦するトランプゲームが大っ嫌いだ。
頭脳系になるほど嫌。
あまりの嫌いっぷりに自分でも驚くくらい。
理由は下手だからってのもあるけど
そもそも楽しさがわからない。
全然楽しくない。
負けても、だいたいは
「もう一度! 今度は勝つ!」と挑んだり
前向きに「勝つためのコツ」を考えたりするものだと思う。
そういう想いがまったく浮かばない。
ホラ負けた。やっぱりね。
もうしないよ。つまらないもん。
…これで終わりが私のいつものパターン。
なんでだろう。
よく思い出してみた。
そういうゲームで
一度も勝った覚えがないと気づいた。
負けたまま放置してるせいもあるんでしょうが
小さい頃からゲームの楽しさを教えてもらったことがないのだ。
対戦相手は姉や従兄弟たちが基本。たまに親も。
皆、私より年上だった。
オセロでも毎回、圧倒的に負けて
相手は大喜び。ゲラゲラ笑う。自分は涙目。
何度やってもそうなので、
じき誘われても断るようになった。
笑いたいために誘ってることは見え見えだったし。
父に教えてもらった将棋も
もちろん負けるわけだけど
父もちいさい子相手は飽きるのだろう、
すぐやめてしまう。
結局、将棋でも自分なりに考えても勝ったことはない。
ま、考えたって無駄だし? どうせ負けるから。
ゲームに関する記憶を掘り返せば返すほど笑いたくなった。
よくもまあ、ここまで嫌いになったもんだと
変に感心してしまった。
ボードゲームにしてもポーカーや大貧民にしても
やり方を教えるほうは
多少なり手加減したりするほうがわたしはいいと思う。
「遊び」なのだから
駆け引きの楽しさを伝えるほうが先ではないかと。
弱すぎ,つまんない,へたくそと言って終わるより
良い線いってた,ここが惜しかったよと言うだけでも
初心者のそのゲームに対する印象は変わる。
そんなやさしい言葉は誰も言わなかったし
言わなくて当然だったのかもしれない。
きっと誰もが通ってきたのだろうが、
私はすっかりボードゲーム類に嫌悪感さえ走る人間となった。
あーあ。嫌な記憶にため息。
たしかに私は駆け引き知らずで下手くそだ。
でも親なり姉なら、ちょっとは褒めてくれてもいいのに。
そんな甘いことを考えたとき、
ひとつの事実に気づいてしまった。
わたしは両親からも姉からも
ひとつとして褒められたことがなかった。
世間体でイイコにしてたし
テストもできるだけ満点を取ってきた。
だから周囲や先生がほめても『いいえ、うちの子は不出来です』と言い
結納の席でさえ『うちの娘は酷い娘で申し訳ない』と繰り返した。
姉が妹をほめること自体が難しいかもしれないけれど
嘲笑ばかりで、賞賛は一度もない。
そうか。
家族の誰からも褒められていないまま育ったら
私のようになるのか。
どこかなにか腑に落ちた気がして
そういうことか…とまた遠くを見た。
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