第24話 私/信じたことがなかった
読んでいた本の、わずかなの一文から衝撃を受けた。
それはとてもささいな一文で
昔から聞いていた言葉で
今までなんにも感じなかったのに
今の自分の頭に、がつんと響いた。
スポーツマンの話だった。
「うまくできる自分」を
イメージトレーニングするという。
自分を信じていく、と話すようすは
テレビのドキュメンタリーでもよくある場面で
オリンピックの特番とかでも昔からよく見た。
へーほーと気にもとめなかった。
だけど、今回は自分に響いた。
ちょっとした衝撃に力が抜けそうになったほどだ。
うまくできる自分なんて、考えたこともなかったんだ。
考えたことなかったと気づくと同時に
はじめて気づいたこともあったんだ。
私は「できない自分」ばかり信じていた。
ずっと「私はなにもできない」と思っていた。
そう。私はなにもできない。
歳のわりにかなり無知で
どんくさいし
空気が読めない変わり者だ。
だからこそ
認められるよう
人よりもがんばらないと、と
常にどこか気を張っている。
じゃあ、「私はできるんだ」と思ってみたら
どうなるんだろう?
ちょっとイメージトレーニング。
きっとできる。やれる。
私はできるんだ。
だからがんばってみよう。
不思議とどこか勇気がわいてきた。
気を張らずとも
がんばろう、と思う自分がいた。
あいかわらず
年甲斐も無く無知だし
ダメなところだらけだ。
私はなにもできない。
でも
だからこそ学んでいけばいい。
知らないものを知らないと言えるし
教えを請うこと、その喜びがあることも知っている。
見栄を張るむなしさを知っている。
できないことを笑い飛ばすやり方も知っている。
そうやって進めば
いずれかならずできるんだ。
私の願いを叶え、最後にはやり遂げる。
私はできる。
お前の言うことは嘘だ詭弁だ夢物語だ
お前はどこまでもダメで無知で情けなくて恥知らず
恥ずかしい人だね 愚か者だね 笑うより呆れるよ
そう親に言われてきたし
何より自分自身から言われたし
言われるたびに凹んでいたけど、
私を信じてみたら、
もうなんとも思わない自分がいた。
はあそうですか
好きに言ってかまわないよとまで思えた。
誰も信じなくてもいい。
ほかならぬ自分が自分を信じていけば十分だ。
むかしから何度も目にした言葉なのに
何度も歌った唄のなかにもあったのに
やっとわかった気がした。
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