第23話 私/切望
私は切望した。
求められること。
手を差し伸べられること。
苦しさを同情されること。
やさしく包んでくれること。
でもね
誰もしてくれなかったよ。
カミサマもしてくれなかったよ。
本当だよ。
私を心から求めてくれて
私に手を伸ばしてくる誰か
私の苦しさを確実にわかってくれて
私をほんのり労りやさしく包む誰かなんて
誰もいなかったよ。
どこにもいなかったよ。
「そうじゃない」って何度も思ったよ。
でもね
気づいたんだよ。
私が本当に求めているモノは
私にしかわからないんだ。
脳みそがふたつある時点で
誰かに切望すること自体が無理な話だって。
私自身が切望する声は
私自身が知っていて
私自身に言えばいいだけのことなんだって。
「どうしてわかってくれないの」と
誰かに求めながら
誰かに幻滅するのが普通の流れなんだ。
幻滅はお互い様だし
幻滅なくして人と人なんてあり得ない。
幻滅した自分へ
一番やさしくなぐさめてくれて
一番勇気づけてくれる言葉も
どこかに落ちてるわけがない。
そんな都合の良い言葉は
自分自身だけが知ってるんだ。
誰かを切望したり誰かに幻滅したり
自分勝手で甘えていたはずかしい私を
一番やさしくなぐさめてくれて
一番勇気づけてくれるのは
やっぱり私が一番上手なんだ。
そしてこれは
誰でも皆、いつか通った道なんだ。
私ひとりだけじゃないんだ。
あの文豪もあのミュージシャンも
誰も彼も友達も、いつか通った道なんだ。
これに気づいた時、
それが一番の勇気になったんだ。
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