第2話 騒がしい姉妹
あぁ、なんでこんな事になった…
学校への道、普通の生徒達が友達とおしゃべりしながら歩いたりする道を
まるで結婚した後の夫婦のように、俺の腕を離さない姉がいる。
家を出る前の事
「お兄ちゃん!お弁当は持った?持ってないなら、その…あげるわよ…私の-」
「春人♪私の五つ星弁当だ!可愛い弟の為に作ったぞ!何?疲れてるかって?いやいやそんな事ないよ。だって春人の『愛』があるから-」
「誰もブラコンの姉の心配なんぞしていない!」
(ある意味)暴走していた姉に適切なツッコミを入れてやった。
それと何故(なぜ)か有希が不貞腐(ふてくさ)れていた。
「兄ちゃん…バカ」
有希は口を膨らませて言った。
取り敢えず、姉の弁当を受け取り、登校の準備に取り掛かる。
「えーと、筆箱、観賞用のラノベ、資料用のラノベ、携帯、後は…」
あれ?試作原稿をまとめるクリップが…
「どう?私の髪留めは!」
有希が自慢げに髪を揺らした。
先程の不機嫌さはどうしたのだろうか…
後ね、それは髪留めでは無くクリップって言うんだよ?
有希が自慢げに付けていた物が、俺の探していた物だった。返してもらおうか…
「妹よ、カマチョもいい加減にしよろよ。今、お兄ちゃんはな、貴様のクリップを取る為になら妹を襲う覚悟が出来ているのだぞ」
すると妹は平らな胸を貼り、高らかに笑う。
「ふふふふ!いいでしょう!アンタに返す気なんてこれっぽっちもないんだからねッ!」
ふっ…妹よ、キャラがぶれているゾ。
そんなキャラ立てが甘い妹など、敵では無いわァ!
クリップを取る為、実の妹に容赦なく襲いかかる俺であるが、瞬殺で終わった。
ちなみに兄が強いという定番はないよ。
何か頭をチョップしたら落ち着く女性など居ないのだから…
まぁ負けました。はい、認めます。さすが『小熊中学校の美少女』!可愛いだけでなく運動神経抜群!背負い投げを実の兄に使うとは…
容赦ないぜ…
「無様な姿ね、可愛いそうだから返してあげるわ」
何だかんだで返してくれた。ここが有希の正直でいい所だと思う。
準備を済ました俺達は玄関に行く。
「んじゃ行ってきます」
母に挨拶して行くが、大人になった息子を見るような顔をしていた。
違うんだ。誤解なんだ母よ…
家の前で2つの道に別れる事になる。
有希は中学校の為、道が別なのだ。
「お姉ちゃんズルイ…」
「ん?何がかなぁ?まさか♪有希ってば、お兄ちゃんの事がー」
「んな事無いでしょ!誰がこんな『芸術』にしか取得(とりえ)が無い男と!」
有希は顔を真っ赤にして登校して行った。
「ふふ♪これだからお子ちゃまは、素直じゃないわ。ね?春人♪」
姉はちゃっかり俺の身体に抱きついている。
これ、周りから見たらリア充だよ!
「離れろぉ!ブラコン姉との登校など絶対に拒否だからな?!」
「酷い!私、そんなに魅力無い?」
「魅力は充分にあるよ!しかしそんな美少女が俺と一緒に登校するとですね、男子達のブーイングが降り注ぐんですよ!」
まぁ姉の魅力は、ドM男子達の心を動かす巨乳!顔立ち!気配りのできるカリスマ!
「数えられないくらい、魅力はあると思うよ…、それが裏目に出て粛清されるのだけれどもね…(俺)」
「嬉しい!私もちゃんとした魅力があるのね!」
「俺の後半の言葉聞いてた?!」
「さぁレッツゴー!」
姉は関節を決めながら、腕を掴(つか)む。
痛さのあまり、泣きそうになるが耐える。
そしてこの状態のまま登校したのだ。
そして今に至る。
まぁ周りは大騒ぎですよね!だって『小熊高校の最強美少女』がこんな『芸術』にしか特化してない男とくっ付いていたらなぁ…
ちょくちょく俺の頭に空き缶などが投げられながらも、教師まで歩くのであった。
(姉は『ゆうなファンクラブ』に守られていた)
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