第68話 閑話 八組男子生徒side

 八組前の廊下で雑談する男子生徒たちに、声をかける男子生徒が一人。


「カリストって八組だよね? ピンクの髪の生徒、可愛いよね。仲いいなら紹介してほしいんだけど。もしかして、彼氏とかいる?」

「彼氏は要らない。俺は彼女が欲しい」

「は?」

「シャインのことなら悪いことは言わない。止めたほうがいい」

「そうそう、シャインを狙うなんて無謀すぎるよ」


 一人変な返しをしたはずなのに、それは全員華麗にスルーして、シャインは止めろと言う八組男子たち。なぜが分からないという表情の男子生徒は彼が声をかけたカリストの又従弟でクラスは六組。


「名前はシャインちゃんというんだ。無謀って何が?」

「知らないのか? ピンクのお頭と言われていることや、召喚獣は花竜だったり、噂だと中級魔法の試験でも威力がすごかったって話なのに、浮遊は下手だったり料理は壊滅的だったりするんだぜ? 怖ーよな」

「料理? 料理なんて料理人がすればいいから問題な――」

「お菓子が大好きで趣味なんだよ。それをたまに試食させられるって言ってたぞ。硫黄臭漂うプリンとかおまえ、食べられるか?」

「うぐっ」

「ま、そこはリタっていう美少女がフォローしているから学園では大丈夫だけどな」


 シャインが作るものは、全てリタの手によりおいしく作り直されていると思っている八組男子たち。


「そうそう、それにさぁ領主の息子たちからたまに誘われてるって話だぞ」

「シャインちゃんが? やっぱりもてるんだな」


 シャインが領主の息子たちと一緒にいる姿は見たことがないのだろう。どうやらまだ他のクラスでは知られてないらしい。


「そうそう。顔は可愛いからな。王族も見に来たことがあるって噂だし。最初、僕らもそうだったじゃないか。美少女二人組がいるって噂だっただろ?」

「そうだったな。すぐそれがあの変てこな行動で見る目が変わったけどな」

「変てこって?」

「シャインにはルカって言う頼もしい幼馴染がいるんだよ。そのルカが『仁王立ちして腰に手をあてて笑う女の子はやめておけ』って言うんだけど、本当にシャインってどうかした時にやってるんだぜ? ルカに頭をはたかれてなおしているけど、あれは貴族の子女としてはダメだろ」


 ルカには絶対の信頼を置いてるような口ぶりの八組男子たち。

 そのルカがいう事だからと、観察していたらしい。


「そ、それは……」

「そうそう。剣術なんか俺らなんかよりよっぽど強いし、恰好いいし、男のプライドすらズタズタにされるしね」


 悩みこむ六組の生徒。さらなる言葉にさらに悩むことになる。


「八組の女子はみんな可愛いって人気なのに、わざわざシャインに行く必要ないぞ。シャインはまぁ友達としてなら最高だからな」

「そうそう。ケガしてもポーションで治してくれるし、ゴーレムとの戦いでもたまに助けてもらえるし、男友達としてはいいやつだよね」

「男友達になってるよ? シャインちゃんって女の子だけど……」

「あ、いけね。まぁ、でもよーく考えたほうがいいって話」


 そこへ止めのように、八組の男子がわらわらと集まってきて、シャインの貴族らしからぬ、女の子らしからぬ話を聞かされる六組男子であった。


 曰く、一つ上級生のマルガリータという強烈なゴスロリ女王さまの取り巻きらしいという噂があること。

 曰く、騎士コースで男子生徒がシャインに負けるほどの凄腕だということ。

 曰く、美少女だけにモテルからライバルが領主の息子など高位貴族になるであろうこと。

 曰く、お菓子作りが好きなのに、作るものが破壊的でそれを食べさせられること。

 曰く、たまに木に話しかけたり、変わっている行動が多いこと。

 曰く、凄腕のくせに怖がり過ぎること。

 曰く、魔法も威力が大きいのに浮遊が下手だったりとコントロールに問題があるようだから、隣にいると危険が大きいこと。

 曰く、薬草の匂いをプンプンさせているだけでなく、年寄りのように根菜類や和菓子というものが大好きだったりと趣味から婆くさいこと。

 などなど……。 


 最後は、クラス対抗のときの女子へのコスプレメイクと女装メイクが好評すぎて、実は整形メイクを自分でもしているから、美少女なのじゃないかという疑惑まで上がった。

 こうして、他のクラスへもシャインの男っぷりやダメっぷりは尾ひれはひれを付けて広まっていくのだった。 

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