第28話 閑話

 魔女っ子シャインが今日は魔法のお薬作りでお鍋をぐーるぐるします。

 魔法のお薬=ポーションなので、いつもの実験ですが。


 お鍋も魔女のお婆さんが使うような猫足でもついてそうなものではなくて、普通の小鍋です。

 薬の色もドロドロの紫紺ではないです。薄い色がほとんど。

 服装だって、魔女のマントではありません。マントはありますが、エプロン姿です。

 それでも、これも魔法のお薬には違いないです。


 皆に笑顔を運んでくれるようになる、そんなポーションになるといいなと思っています。


 今作っているのは、惚れ薬♡。……嘘です、ごめんなさい。

 お肌がきれいになるためのお薬です。

 前世で言うと、お肌がきれいになるための漢方に魔力を込めたもの。って感じでしょうか。


 材料です。


 ・牡蠣・魔物の特製レバー・あじ・魔鳥の軟骨・魔物の足部分・アセロラ・青菜の野菜・豆類・最後に根っこ類。


 食事でとってもいいのです。色々な栄養素がふんだんに入っているだけなのですから。それでも、一度に色々な栄養を取るのは難しいことも多いので、ポーションを作って売っています。

 味も匂いもポーションにすれば、あ~ら不思議。あの漢方薬臭さも、食べ物臭もしません。


 なぜお肌かというと、マルガリータのお母さま、つまり領主の奥様が肌荒れで悩んでいらっしゃるとか聞いたから。いつもお世話になっているので――主にお菓子ですが、作ってみたら、ポーションが出来てしまい、贈ってみました。とても喜ばれ、ご愛用していただけることに。そこから貴族の間で流行ったらしいです。

 おまけに、領主のお母さまのお陰で、これがいいお値段で売れてます。定期的に売れるし、領主さまの家にお届けすればいいので、手間は材料を集めて配達するだけ。

 ちょうどあった材料で作ったらできたのですが、たぶん少し似たような材料に変えても作れそうです。しないけど。


「とてもいい漢方を使ったポーションなのよ」


 こんな紹介の仕方をされているようですが、普通にマルチ栄養素が入っているだけです。ミネラルって百八種類もあるんです。実はその百八のミネラルが詰まっているだけなんですけどね。


 だから、実はお肌だけでなく健康にも良かったりします。

 そして、お肌も綺麗になり、体調も良くなり顔色も表情も上がれば、自然と可愛くみえてきますから、惚れられるようになる、かもしれませんね――希望的観測です。


 お肌の悩みってちょっとしたことなのかもしれません。

 でも、女性にとっては自然と顔が下を向いてしまい、姿勢すら気づかないうちに悪くなっていたりするものなのですよね。

 化粧でカバーしようとして、さらに悪化したりして。

 それがちょっとでも良くなるといいなと思っています。


 祖母が言うんです。


「ちょっとしたことなんだよ。人はちょっとしたことで傷ついたりもする。でもちょっとした相手の笑顔や親切で気持ちが上がることもある。できないこともちょっとだけ頑張ろうとするとできたりするもんだよ」


 だから、ちょっとだけだけ、ちょっとの人だけでも、もう少しでも綺麗になることを願いながら材料を入れます。


 材料のうち、いくつかはリタやパーティ仲間から買っています。少し高いお値段で。

 目的はリタたちが学園に行くときに必要な資金に充てるため。



 こうして、魔女っ子シャインは、ぼっちになるのを防ぐため、今日もお鍋をぐーるぐるしています。


――結局はちょっとだけ自分のため(にも)、頑張っているのです



 閑話おわり。

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