第13話結論

女は肯定を望んでいるんだ。

 今日、友人はそう語っていた。

 彼は昨日マミと飲みに行ったのだ。そこで俺と別れる理由を聞き出したらしい。

 俺は彼女の会話をことあるごとに否定していたらしい。まずそれが第1の理由だった。

 彼女は話や意見を否定されることで自分自身が否定されると思ったのだ。

 次に、自分が軽い女だと見られていたらしい。

 俺は性欲旺盛だから、ヤリモクで付き合っていると思われた。

 風俗行ってる男なんだから、そう思われても仕方がない。否定しようにも、第1の理由があるため弁解不能である。

 あとは趣味が合わないこと。

 そしてもっと面白い人間だと思っていたこと、だ。

 特に、その内容に関して・・・・・・俺が傷つくことはなかった。前からそれは彼女自身の口から聞いていたことばかりだ。

 治したつもりだった。でもそれは所詮つもりでしかなかったようだった。

 そうだな。

 これは俺の小説であるがゆえに、小説の中だけでなら弁解は許されるだろう。

 ・・・・・・彼女の話を否定することはあった。俺はバカ正直すぎたのだ。

 「あー、たしかになー」

 俺はその言葉を親しくない者や、初対面の相手、目上の人に使う。頭では否定的でも、とりあえず肯定をしておく。

 でも俺はそんな会話が嫌だった。

 嘘でも絶対に肯定しかしない男を知っている。俺はその男のその部分のみ好きではなかった。

 俺は肯定を望むためにお前と話をしているわけじゃないんだよ。お前の意見が聞きたいから聞いてんだろ!

 もちろんそんなことは言わない。

 たしかに否定されれば傷つく。

 やはり男友達で、意見に対してあからさまに否定する者は多い。

 だが俺は会話とはそういうものだと思っていた。

 まず、そのあたりの考え方が違っていた。

 俺は親しい間柄でそんな気を使うことは不要だと思っていた。

 彼女はそんなことなかった。

 ずっと気を使っていてくれた。

 もしくは、俺のことは親しくなかったのだろうか。

 「だってあなたも他人でしょ?」

彼女の言葉を思い出す。

 彼女が次第に離れていくのを俺は感じていた。だから体を求めてしまった。

 しない。それはつまり俺のことが嫌いだから。そう思っていた。

 だからさらに求めた。それが別れに拍車をかけたのだ、きっと。

 趣味が合わないことはわかっていた。全く合わない友達などいくらでもいるからだ。

 けれど俺は、彼女のそばにいるだけでよかった。

 彼女が好きなゲームをしてる横で俺はそれを見ながらダベるだけでよかった。

 でも彼女は嫌だったんだろう。

 「私、早く無になりたい」

 この世から消えたいと彼女は時々言っていた。俺はそういう時いつもそんな彼女を否定していた。

 そんなことない。もっともっと楽しいことあるよ。知らないだけ、知ろうとしてないだけ。そう言っていた。

 ほんと笑ってしまう。

 今では退屈でやることないって言ってるのは俺なのに。

 俺は死後の世界に興味がある。かといって早死にしたいわけではない。

 いつか絶対に死ねるんだから、それまで長生きしたいと思っている。この世界がどうなっていくのかこの目で確かめたい。

 でも俺だって初めからこうは思ってなかった。

 みんなもあるだろ。

 無になりたい時が。

 自分が死んだあとの世界について思ったことは?誰が悲しむだろう。誰が意外な顔をするだろうって考えたことない?

 無になりたいってそりゃ思ったことあるよ。

 でも認めたくなかった。絶対に否定したかった。

 だって彼女のその考え方は、中学のころの俺そっくりだったからだ。

 否定されたくない。どうして趣味があわないの。僕の夢は消えて楽になることやねん。

 そんなこと言ってたあの頃の自分を肯定してしまうみたいだった。

 でもだからこそ、マミもきっと今の俺みたいに考えれるようになるって、そう思っていた。

 でもそんなわけないよな。

 アイツは俺の分身じゃない。

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